映画ファンにはおなじみ『フットルース』内で使用された一曲 「Holding Out for a Hero」が、大作映画で近年多用されています。 なぜ今?楽曲について振り返りながら、その理由を考えてみましょう!(文・相馬学/デジタル編集・スクリーン編集部)
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こちらの楽曲!

もともとはボニー・タイラーが『フットルース』のために歌唱

“あれ? この曲、最近よく耳にするな……” 映画ファンの方がそう思う曲があるとしたら、それは「Holding Out for a Hero」(以下、「ヒーロー」)ではないだろうか。ここ一年のハリウッド作品だけでも、カバーバージョンを含めて『ブレット・トレイン』(2022)『シャザム~神々の怒り~』(2023)『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)で鳴り響いていた。40代以上ならば、懐かしい響きととる方もいるのではないだろうか。

画像: Bonnie Tyler - Holding Out For A Hero (Official HD Video) www.youtube.com

Bonnie Tyler - Holding Out For A Hero (Official HD Video)

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「ヒーロー」はボニー・タイラーによる1984年のヒット曲。タイラーは英国ウェールズ出身の女性シンガーで、迫力のあるハスキーボイスがトレードマーク。前年には「愛のかげり」を全米チャートのナンバーワンに送り込んでいた。

1984年当時のボニー・タイラー

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そんな彼女が、映画『フットルース』に提供したのが、この曲。ご存知のとおり、『フットルース』のサントラ盤は世界中で大ヒットを記録し、全米シングルチャートには6曲をトップ40内に送り込んだ。

「ヒーロー」は、その中でももっとも低い最高位34位だったが、日本では逆にこの曲がもっとも有名に。というのも、葛城ユキや麻倉未稀が日本語でカバーバージョンを発表して、これまたヒットを飛ばしたのだから。とりわけ後者のバージョンはTVドラマ「スクール☆ウォーズ」の主題歌にもなり、お茶の間にもしっかり浸透した。

多数の映画・ドラマで登場近年はカバー版での起用も多数

ヒーローの出現の切望を、激しいビートとダイナミックなメロディに乗せて歌った「ヒーロー」は、アメリカでは“大げさ”と評されることもあったが、一方では“究極のロック・アンセム”との評価を確立している。それを証明するかのように、このナンバーは『フットルース』の後も、多くの映画やTVドラマで使用されてきた。

たとえば『ショート・サーキット2 がんばれ!ジョニー5』(1988)や、『ジョン・キャンディの迷探偵ハリーにまかせろ?!』(1989)、『バンディッツ』(2001)は、いずれもコミカルな作品だが、タイラーの熱唱がそこにエモーショナルな色を添えている。

また、21世紀に入るとカバーバージョンによる起用が増え、『シュレック2』(2004)ではジェニファー・ソーンダーズが、『フットルース』のリメイク『フットルース 夢に向かって』(2011)ではエラ・メイ・ボーウェンが、それぞれに情感あふれるボーカルを聞かせた。

いずれもキャラクターが奮起する場面で流れているのがミソ。裏を返せば、それだけこの曲の内包する熱気が凄まじい……ということなのかもしれない。ちなみに、イギリス映画『テトリス』(2023)では、日本のアーティスト、ReNによる日本語カバーが使われている。

今、再び多用される理由は曲のメッセージにあるかも?

それにしても、今ここにきて「ヒーロー」が再び、映画やドラマの中で頻繁に使われるようになったのは、いったいなぜ?

親世代となった中高年が子どもと一緒に映画を見たとき、そのノスタルジーをくすぐるという効果は確かにある。しかし、それだけではないだろう。

「ヒーロー」は英雄のような男性を求める女性目線のラブソングだが、同時に救世主を求めるすべての人々の心情にも重なるのは、「すべての善良な人々はどこへ行ってしまったのだろう?/神々はどこへ?」という冒頭の歌詞からも明らかだ。

長きにわたるパンデミック、世界を二分しかねない戦争、急激なインフレーション、解決策が見つからない格差と高齢化の社会……世の中は今、先行きの見えない、さまざまな不安に覆われている。一個人の力では、どうすることもできない問題が、複雑に絡み合う。

あいにく、この現実の世界にはアベンジャーズもいなければスーパーマンもいない。政治家が有能で信用できるかと問われると、それも怪しい。「ヒーロー」は、そんな厳しい現代を生きる人々の声を代弁しているのではないだろうか。

この作品の「Holding Out for a Hero」に注目!

『フットルース』 (1984)

画像: 『フットルース』 (1984)

この映画なくして、この歌なし!

転校生である主人公レンがチキンレースに挑み、それをヒロイン、アリエルが見つめている場面でフィーチャーされる。田舎町で生きてきたアリエルにとって、レンは退屈から救い出してくれるヒーローなのかもしれない。

『フットルース』
監督:ハーバート・ロス
出演:ケヴィン・ベーコン、ロリ・シンガー、ジョン・リスゴー

U-NEXTにて配信中
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『シュレック2』(2004)

画像: 『シュレック2』(2004)

曲に乗せてシュレックが反撃!

お城での舞踏会で、ステージ上の妖精のゴッドマザーが熱唱。なかば囚われの身の愛するフィオナ姫を救い出そうと、主人公シュレックが城を攻撃。この目の離せないアクションシークエンスをエネルギッシュに彩る!

『シュレック2』
監督:アンドリュー・アダムソン、ケリー・アズベリー、コンラッド・ヴァーノン
声の出演:マイク・マイヤーズ、エディ・マーフィ、キャメロン・ディアス

U-NEXTにて配信中
TM & © 2011 DREAMWORKS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』(2019)

画像: 『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』(2019)

まさしく「ヒーロー」となる主人公たち!

ゲイの水球チーム、シャイニー・シュリンプス。クライマックスでは、数々の困難を乗り越えてきた彼らが、この曲に併せてダンスパフォーマンスを披露する。この瞬間、確かにヒーローとなった彼らの姿がまぶしい。

『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』
監督:セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
出演:ニコラ・ゴブ、アルバン・ルノアール、ミカエル・アビブル

画像1: 最近よく聴くあの曲! 「Holding Out for a Hero」はなぜ愛される?

デジタル配信中/ブルーレイ & DVD発売・レンタル中
発売・販売元:ポニーキャニオン
© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS

『ブレット・トレイン』(2022)

画像: 『ブレット・トレイン』(2022)

日本の観客歓喜! クライマックスをブチアゲ!

日本が舞台ということもあり、フィーチャーされるのは麻倉未稀によるカバーバージョン。これもクライマックス、超特急内で主人公レディバグが敵と攻防を広げるシーンをダイナミックに盛り上げる。日本の観客には大いにウケた。

『ブレット・トレイン』
監督:デヴィッド・リーチ
出演:ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン

画像2: 最近よく聴くあの曲! 「Holding Out for a Hero」はなぜ愛される?

ブルーレイ&DVDセット発売中/価格:5,280円(税込)
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2022 Columbia Pictures Industries, Inc. and TSG Entertainment II LLC. AllRights Reserved.

『ザ・スーパーマリオ ブラザーズ・ムービー』(2023)

歌詞とルイージの心がリンク!?

画像: 『ザ・スーパーマリオ ブラザーズ・ムービー』(2023)

魔界に囚われてしまった弟ルイージを救うため、我らがヒーロー、マリオが猛特訓を積み重ねる! そんなド根性場面を演出するのが、このナンバー。誰よりも救世主を求めているであろう、ルイージの心を代弁!?

『ザ・スーパーマリオ ブラザーズ・ムービー』
監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ

大ヒット上映中 配給:東宝東和
© 2023 Nintendo and Universal Studios

「Holding Out for a Hero」使用された代表的な作品一覧

『フットルース』(1984)
『ショート・サーキット2 がんばれ!ジョニー5』(1988)
『ジョン・キャンディの 迷探偵ハリーにまかせろ?!』(1989)
『バンディッツ』(2001)
『シュレック2』(2004)
『フットルース 夢に向かって』(2011)
「glee/グリー」シーズン4(2012)第1話
『名探偵ピカチュウ』(2019*予告編のみ)
『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』(2019)
「ロキ」シーズン1(2021)第2話
「ユーフォリア/ EUPHORIA」シーズン2(2022) 第7話
『ブレット・トレイン』(2022)
『シャザム!~神々の怒り~』(2023)
『テトリス』(2023)
『ザ・スーパーマリオ ブラザーズ・ムービー』(2023)

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