約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023)にも出演しているシャーリーズ・セロンについて。(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

自分のリミットに挑戦することが女優としての私の生き方よ

画像1: 筆者とシャーリーズ

筆者とシャーリーズ

最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023)では、サイバー・テロリスト「サイファー」の役を激演しているシャーリーズ・セロンは、何事にも真剣に100%以上の努力を打ち込む姿勢で知られている。

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この映画の中でミシェル・ロドリゲスとのファイトシーンを全力を出して迫力満点でやり仰せた時、実は監督が不在だったそう。後から現れた監督は二人の凄まじさに恐怖感さえ覚えたと告白していた。

ミシェルはシャーリーズのことを「モンスター」と呼び始め、シャーリーズはオスカー主演賞を受賞した同題の映画(2003)と比べられて苦笑したとか。

「自分のリミットに挑戦するのが女優としての私の生き方なのよ。だから出来る限りスタントは使わず、チームと組んで自分で可能な動作を調べてからスタートするの。やっていて痛快な気分を味わえる。女優冥利に尽きるわね!」

そのうち、そこ、どいて、トム・クルーズ! という状況になりそうかも。

「まだ女優初期の頃『2days トゥー・デイズ』(1996)で監督に白いネグリジェを着て下さいと言われて、何度も何度も色々なデザインのを着せ替えられ、凄く嫌な経験だった。性的な目的としか思えないシーンで自分が小さくなった気がしてしまったもの」

画像2: 筆者とシャーリーズ

筆者とシャーリーズ

南アフリカのヨハネスブルグ近郊の農園に生まれ、15歳の時に目の前で暴力を振るった父を母が銃殺、母は正当防衛で無罪となり、ここから母と娘の結びつきが強まり、怪我でバレリーナを断念したシャーリーズはモデルとなって世界中で活躍。

ロサンジェルスにやって来て女優に転向、強い訛りの英語を苦労して修正中のまだ駆け出しの頃、銀行で小切手を現金にしてくれないとロビーでひと騒ぎ、偶然これを目撃したスカウトの紹介で端役を得るように。

『ショーガール』(1995)のオーディションで最後まで残ったもののエリザベス・バークレイに役を獲られてしまったが、例の『2days』で際立った存在を見せて以後スター街道まっしぐら。奔放なセックス場面が注目された『ショーガール』に出ていたらかなり違ったルートをたどっただろうと想像すると苦笑してしまう。

年上のキアヌ・リーヴスが弟分に見えるほど新人時代からクールでかっこよかった

画像: 1996年頃のシャーリーズ Photo by GettyImages

1996年頃のシャーリーズ

Photo by GettyImages

さて彼女に初めて会ったのは1年後の『ディアボロス/悪魔の扉』(1997)の時。共演のキアヌ・リーヴスのいつもながらの頼りない言葉に彼女はマスコミ受けするコメントを加え、さらには大御所のアル・パチーノとも互角に対応して、恐れを知らぬグラマラスな新人としての印象を強めたのである。シャーリーズより11歳年上のキアヌは、どこから見ても弟分で、それを受け止めて姐御風を吹かす彼女が何ともクールでカッコ良かったのを思い出す。

ちょうどクリスマスが迫っている時期だったので、いつもどう過ごすかと聞いてみると、

「南アフリカのクリスマスはものすごく暑い時期、太陽がギンギンで、贈り物の交換などしないのよ。せいぜい石鹸ぐらい。暑さでぼーっとしているのが私達のクリスマスだけれどそれはそれで良いものよ。懐かしい故郷の一コマだわね」

と懐かしそうだった。

シャーリーズの恋愛論については、

「現在の私の男勝りという評判が男性たちに脅威を感じさせるみたい。恐れをなすとも言われたし。20代の頃は自分自身をかなりソフトに、より小さめに演出して男性の理想というのか期待に沿うように努力して、彼らに合わせるようにしたものだった」

「歳を重ねるとともにそれは自分に誠実ではないと感じるようになり、これからの人生では自分自身を全面的に表そうと決心したのよ。相手に合わせることに価値を感じなくなったのね。その上、今の私は結婚などというものにあまり興味が無くなってしまった」

「もちろん全くドアを閉ざしているわけではないのよ。特にソウルが噛み合う人が現れたらなと思うこともしばしば。でもね、40歳を過ぎて相手に合わせたり、譲歩するなんてとんでもない。素晴らしい独身生活を謳歌しているのですもの」

と毅然として答えてくれた。

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