最新インタビューを通して編集部が特に注目するキーパーソンに光をあてる“今月の顔”。今回は『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』で再び稀代の名探偵を演じ、演出も務める英国の才人、ケネス・ブラナー。今度のポアロはシリーズ前2作とは趣きが違うようです。
カバー画像:Photo by Amanda Edwards/Getty Images
画像: Photo by Amanda Edwards/Getty Images
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ケネス・ブラナー
1960年12月10日、北アイルランドのベルファスト生まれ。王立演劇学校を首席で卒業し、若くしてロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで演出も務め、その後自らルネサンス・シアター・カンパニーを設立。英国演劇界で頭角を表わす。

1989年の『ヘンリー五世』でアカデミー賞監督賞と主演男優賞にダブル・ノミネートされ、一躍世界的な名声を獲得。監督作としては『フランケンシュタイン』(1994)『ハムレット』(1996)『マイティ・ソー』(2011)『シンデレラ』(2015)などを担当。

出演作としては『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)『マリリン 7日間の恋』(2011)『TENET テネット』(2020)などがある。

ポアロ役は『オリエント急行殺人事件』(2017)『ナイル殺人事件』(2022)に次いで『ベネチアの亡霊』で3度目(いずれも兼監督)。『ベルファスト』(2021)でアカデミー賞脚本賞を受賞。

“今回はポアロがいつもの自信や冷静さを失って、観客に胸騒ぎを覚えさせる物語との橋渡し的な役にしたかったんです”

アガサ・クリスティー原作のミステリー小説に登場する名探偵エルキュール・ポアロを『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』に続き、再び演じながら監督もこなす『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』がまもなく公開されるケネス・ブラナー。

だが今回はこれまでと違って「ハロウィーン・パーティ」という映画化されるのは初となる原作を用いての、新たなポアロを観客に届けてくれる。

「脚本家のマイケル・グリーンと話していて、これまでポアロは美しい風景をバックにした列車や客船の移動する旅の中で推理力を発揮しましたが、今度は彼や登場人物たちを一つの場所に閉じ込めてみてはと思ったんです。

元々原作はイギリスのカントリーハウスが舞台ですが、これをベネチアという印象的な場所に移して、ハロウィーンといういわくありげな日に物語を展開させるのが面白いのではとマイケルは考えたようです。

ベネチアはエキゾチックなゴシック様式といった特徴をいかすことができるのではとも考えたのですが、まさに期待通りの都市です。

ポアロは自分は引退したものと思っていて、ベネチアはごったがえしていると思ったら、一気に人の姿が消えてしまったり、そんな中で完全に一人になれることにポアロは惹かれているのですが、彼はその街でこれまでの常識が通用しないスーパーナチュラル・スリラー的な世界に突入していくのです」

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物語は1947年の設定で、現役を退いたと考えているポアロが訪れたベネチアで、いわくありげな孤児院で行われる降霊会に出席することになり、天候が荒れてきて邸に閉じ込められた参加者が命を落としていくというもの。

ポアロは最初は騙されている参加者たちのために霊媒師のペテンを暴いてやろうと考えていたが、背筋の凍るような出来事に巻き込まれていく──。

そんなストーリーの登場人物を演じるキャストは今回も豪華。その中にはオスカーを受賞したミシェル・ヨーもいる。

「謎の霊媒師を演じるミシェル・ヨーは、威厳があって物語を深く考えることができる能力を感じさせてくれました。

亡くなった人と交信できることを観客に信じ込ませる説得力を持たせるために、彼女の知性や深み、静寂さといったものが不可欠でした。彼女自身はエネルギッシュでユーモアもある人ですけど。

この作品が撮影されたのはミシェルがアカデミー賞を受賞する前でしたが、彼女と仕事できて本当に我々一同も最高に幸福でした。スタッフの誰からも慕われていたんです。」

「そして物語にスーパーナチュラル的な要素が入ってきたことですが、我々が本作で成し遂げたことのひとつは、このシリーズに新たなトーンを作り上げることができたことだと思います。

これはポアロがいつもの自信や冷静さを失っていることから来るのですが、彼がアンバランスな状態にあることで、観客に言いようのない胸騒ぎを覚えさせる橋渡し的な役にしたかったのです。

彼は自分が引退したものと思っているのですが、実はなかなかそうはいきません。心が揺れ葛藤するポアロをよりダークな世界に誘うのです。

彼は自分自身の亡霊と向き合うことにもなるんですよ。彼自身がこれまで関与した事件と直面せざるを得ないということで、悲しみがこの作品の核でもあります。身も凍るスリラーの中で誰もが認めたくない真実と向き合うことを余儀なくされます」

前2作ではロケ撮影やセットにこだわりがあるところも見どころだったが、今回はどうだろう。

「実際にベネチアで撮影したものと、英国でセットを組んだものを組み合わせています。ベネチアの建築物はこの映画の登場人物たちのように水辺に面して仮面をつけているようなもの。美しいものであるように見せるために、その裏では湿気に対する対策にとんでもない維持費がかかるのです。

神秘的なベネチア建築の雰囲気を見せるためにそうした場所を探して撮影し、あるいはそれを本国で再現しました。そのふたつには真の均衡があります。

その一方、観客にはかつて訪れたベネチアの風景といったものだけでなく、壮大で恐ろしい朽ち果てた館に連れていかれたような感覚も味わってほしかったんです。

ミステリアスなボートハウス、仮面、マント、ゴンドラ、壁の処理や水による影響などすべてにおいて強烈なテイストに合わせて作って行くのを我々は楽しみました。まさに『神は細部に宿る』といったよう感じでね」

さらに日本のファンに向けてのメッセージも送ってくれた。

「日本のファンの皆さんは、世界中で最も知的で忠実で情熱的な方々です。なのでいつも私は感謝するとともに、日本に行って皆さんと交流するのが大好きなんです。

お会いして交流することは皆さんにとっても意義深いことでしょうし、我々にとっても皆さんの支援が信じられないほど大切なものです。どうぞこれからも映画館に足を運んで我々を支援してください」

2023年9月15日(金)公開『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』

画像: 2023年9月15日(金)公開『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』

『ベルファスト』のケネス・ブラナー監督が自ら主演も兼ねて贈る名探偵ポアロ・シリーズの第3弾。

今回はアガサ・クリスティー原作の「ハロウィーン・パーティ」を基に、舞台をイギリスから戦後の伊ベネチアに移し、ポアロが常識を超えた不可思議な事件と対峙する。

第二次世界大戦を終えたベネチアでハロウィーンを迎えたポアロは、ある大邸宅で行われる降霊会に参加する。するとそこで来賓の一人が殺害され、ポアロは否応なく影と秘密をはらんだ邪悪な世界に引きずり込まれる……。

『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』
監督: ケネス・ブラナー
出演: ケネス・ブラナー、ミシェル・ヨー、 ティナ・フェイ、ジェイミー・ドーナン
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン

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