過激描写を封印した巨匠パク・チャヌク
『JSA』(2000)で韓国を代表するヒットメーカーとなり、『オールド・ボーイ』(2003)で国際的な評価を獲得、『イノセント・ガーデン』(2013)ではハリウッド進出を果たした鬼才パク・チャヌク。
そんな彼が、『お嬢さん』(2016)以来6年ぶりの新作を放った。注目の『別れる決心』では、パク監督のトレードマークでもあったバイオレンスやエロスを封印。落ち着いた語りで大人の男女の身を焦がすほどの思いにフォーカスする、切ないラブ・サスペンスとして高評価を得た。
男=ヘジュン(パク・ヘイル)は史上最年少で警部に昇進したマジメで厳格な警察官。女=ソレ(タン・ウェイ)は夫殺しの容疑を向けられた女性。
刑事と容疑者として出会った彼らは捜査以外で会うことはなかったが、ヘジュンは抑えるのが難しい恋愛感情を抱くようになり、ソレはそんな彼の気持ちに気づいていた。彼らの関係は、離れては終わり、近づいては燃え上がる。偶然に翻弄され、年月に揺さぶられる彼らの思いの行き着く先は?
彼らを結ぶのは愛なのか?息苦しい恋愛の風景
物語は妻帯者であるヘジュンの視点で展開し、事件の解決に奔走しつつも、容疑者であるソレの存在に心を揺さぶられる葛藤に肉迫。ふれあう手や交錯する視線、相手の吐息などの描写に、とまどいがにじむ。
一方のソレはミステリアスな存在で、殺人犯かどうかわからないままヘジュンを翻弄。すなわち、彼の運命を変えるファム・ファタールでもある。彼らを結び付けるのは愛なのか? 意外な事実が判明していくラブストーリーから目が離せない。
そんな危ういミステリーを、パク監督は美しい映像で活写。屋内のスタイリッシュな様子はもちろん、前半の舞台である山や、後半の舞台である海辺の風景、登場人物の衣装の色あいなど、計算し尽くされたビジュアルで見る者の目を引き付ける。
『黒く濁る村』(2010)のパク・ヘイル、『ラスト、コーション』(2007)のタン・ウェイという実力派俳優の火花散る競演も見逃せない。
惹かれてはいけない相手に惹かれてしまったり、相手の恋愛観の違いを理解することに悩んだり、けじめをつけたはずの昔の恋に再びとらわれたり……。恋愛にはいつも苦しい局面があり、それはミステリーのまま終わってしまうこともあれば、終わってから相手を理解することもある。
そんな息苦しい恋愛の風景を切り取りつつ、美しいドラマに昇華した本作。カンヌ国際映画祭監督賞に輝いたパク・チャヌクの卓越した手腕に注目しつつ、じっくりと向き合ってみてほしい。
あらすじ
1:被疑者と刑事として 出会った、女と男
岩山の頂から男が転落死する事件が発生。この男の妻ソレは、夫が死んだという事実を知らされても驚く様子もないばかりか、笑みさえ浮かべているように見えた。
刑事ヘジュンは彼女に夫殺しの疑惑の目を向けるが、一方ではソレに心を動かされていた。ソレは、そんな彼の心中を察し、思わせぶりな態度を見せるようになる。
2:事件は解決? それは “恋の迷路”の始まりだった
捜査の結果、ソレの夫の死は事故死として片づけられ、ヘジュンは彼女との交流を深めていく。ところが、予期せぬ証言によりソレのアリバイは崩れ、ヘジュンは彼女が犯人であることを知ってしまう。
苦悩の末、彼はソレの罪を見逃すことを選択。そして職務をまっとうできなかった罪悪感により、彼女の前から去っていく。
3:そして、第二の事件が再びふたりを引き合わせる
海辺の町に転勤したヘジュンは妻とともに静かに暮らしていた。そんな彼の前に、裕福な株式アナリストと再婚していたソレが現われる。動揺するヘジュン。
それからすぐに、ソレの再婚相手も自宅のプールで不審な死を遂げた。再び刑事と容疑者として対峙するヘジュンとソレ。その先に待ち受ける、意外な真実とは!?
映像特典でチェック!
1:監督の“好き”が出発点! 過去作とは目標が違う
韓国歌謡「霧」、そしてスウェーデンの警察小説「マルティン・ベック」という、監督が好きだった2つの物が物語の出発点。
過去作と異なる作風になったことについては「以前の作品の目標が刺激的な経験だったのに対し、本作は観客が自ら歩み寄り、魅力を感じてくれることを目標にした」とメイキング映像内でコメントしている。
2:こだわり抜かれた“海”そのポイントとは?
ソレとヘジュンのドラマを締めくくるクライマックスの舞台となる“海”。砂浜の広さや幅、波の大きさ、夕日の見え方に加えて、「山のイメージがあるか」がロケーション探しのポイントになったと本作の撮影監督キム・ジヨンはメイキング映像内で明かしている。最終的には一つの海だけでなく、複数の場所を織り交ぜたという。
3:監督の熱いメッセージも! カンヌの舞台裏
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門では監督賞を受賞した本作。授賞式で名前を呼ばれる瞬間のほか、レッドカーペットや記者会見などの様子を収めた「カンヌの舞台裏」も映像特典に。
クロージングセレモニーではパク監督が「私たち映画人も映画館を守り、映画を永遠に守り抜くと信じています」と発言する姿も。
2023年10月4日(水)発売 『別れる決心』
諏訪部順一×沢城みゆき! 2度目は日本語吹替版で!
日本語吹替版では、ヘジュン役を『ヴェノム』(2018)などの吹替にも参加している諏訪部順一、ソレ役を『アクアマン』(2018)などの沢城みゆきが担当しているほか、武内駿輔、行成とあが参加。実力派声優陣による吹替版も必見だ。
[映像特典]パク・チャヌク監督 コメンタリー映像、パク・チャヌク監督 日本公開時コメント、カンヌの舞台裏、予告集 、メイキングトレーラー、キャラクタートレーラー、日本版予告、本国TVスポット
発売元:ハピネットファントム・スタジオ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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