世界的ベストセラー小説の映画化!
本作は、家族3人で幸せに暮らしていたアントワーヌが、テロ発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラー『ぼくは君たちを憎まないことにした』の映画化である。最愛の人を予想もしないタイミングで失った時、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのか。
誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続く育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。
一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。
たった一人の言葉が世の中の声を変えていく。ヒーロー視しない演出が人間の弱さと強さを浮き彫りにパリ中心部にあるコンサートホールのバタクラン。アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。
少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。
バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。
パリ同時多発テロから8年。憎しみの連鎖を断ち切る1つの答えがここにある!
ロシアのウクライナ侵攻やTVではパレスチナ、イスラエルのニュースが連日放送され、世界中で起こっている止められない“憎しみの連鎖”を目の当たりにし、気持ちがどうしても沈んでしまう昨今。
本作も130人が犠牲となったパリ同時多発テロで、最愛の人を失った父と子を描く中で、主人公がテロリストに「憎しみを贈らない」と決意表明し、幸せに生きていくことを誓う。この決意に至るまではもちろん苦しみや悲しみにもがき苦しむ主人公たちの姿が描かれる。
それでもアントワーヌと息子のメルヴィルは、それらを抱えて幸せに生きていくことでテロに負けないと心に決める。まさに本作は、憎しみの連鎖が蔓延る世界に生きる我々が観るべき強いメッセージを伝えてくれる。
11月13日でパリ同時多発テロから8年が経つ。憎しみや怒りを乗り越えていかないと終わらない“憎しみの連鎖”を断ち切るヒントを今作は教えてくれる。
本作で映画評論家の町山智浩が「とんでもない天才が現れた」と大絶賛したのが、母親を失ったメルヴィルを演じたゾーエ・イオリオ。
劇中のメルヴィルは1歳の男の子だが、ゾーエは女の子で撮影当時は3歳。監督はフランス、ドイツ、ベルギー、スイスでオーディションを行い、ゾーエを見つけたそうで、「初めて見た瞬間から、この子だ! と誰もが確信したのを覚えている。」と初対面で特別な子だと分かったという。
「ゾーエは他の子たちとは違って、大人の俳優のようにシーンを理解して感情を表現したんだ。とても器用で賢くて、自分の考えを表現できる特別な3歳児だった」と振り返る。3歳児がそもそも演技をできることが驚きだが、ゾーエは母親の不在、失った哀しみ、父と過ごす幸せな時間など様々なシーンで類まれなる演技を披露し、観る者の心を揺さぶる。
解禁された場面カットも当時ゾーエが3歳ということを考えると、「とんでもない才能が現れた」という賛辞も決して大袈裟ではないことがわかるだろう
『ぼくは君たちを憎まないことにした』公開中
監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
配給:アルバトロス・フィルム
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS