『危険なプロット』『Summer of 85』などのフランソワ・オゾン監督が、敬愛するライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の名作を現代風にリメイクしたメロドラマがBlu-ray&DVDとなって本日12月6日(水)よりリリース!本作のみどころをご紹介します。(本文:平沢薫/編集:SCREEN編集部)

観るべき理由①
敬愛するファスビンダーの名作を、オゾンが新たな視点も取り入れリメイク! 

著名な映画監督が、若く美しい男性俳優に恋をして、翻弄されていく-----そんな物語を描く本作は、『まぼろし』『8人の女たち』などで知られるフランス人監督フランソワ・オゾンが、彼が敬愛するニュー・ジャーマン・シネマの伝説的監督、故ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの名作『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(1972)を、新たな視点からリメイクした注目作だ。

画像: 観るべき理由① 敬愛するファスビンダーの名作を、オゾンが新たな視点も取り入れリメイク!

オリジナル作は、女性ファッション・デザイナーが若い女性モデルに抱く恋を描いた作品だが、オゾン監督はこれを、ファスビンダー監督自身の物語として捉えて、男性監督と若い男優の物語として描き直す。そこには、1984年に死去したファスビンダー監督がバイセクシャルであり、オゾン監督自身がゲイを公言していることも関係しているかもしれない。本作は、やはりゲイを公言する『ピンク・フラミンゴ』『ポリエステル』などのアメリカの異才監督ジョン・ウォーターズが、毎年発表している個人的映画ベスト10の2022年版で「圧倒的はベスト1」に選んだのも話題を集めた。

Blu-rayの映像特典でCHECK!
オゾン監督のファスビンダー愛

2000年にもファスビンダー監督の戯曲「焼け石に水」を映画化したオゾン監督が、ファスビンダー作品との出会いや、その魅力など、彼のファスビンダー愛を熱弁。今回のキャスティングの意図についても語る。

また、主演のドゥニ・メノーシェ始め、イザベル・アジャーニ、ハンナ・シグラらの主要キャスト5人が、なぜこの映画に出演したのか、自分が演じた人物をどう分析しているのかなどを率直に語っている。

観るべき理由②
性別とは関係なく誰もが知っている、満たされない恋の苦痛

有名監督ピーターは、知人女優の紹介で知り合った青年アミールに恋をして、彼を自分の映画の主演に抜擢し、一緒に暮らすようになる。だがアミールは自由奔放で、ピーターは彼の浮気を疑って苦悩するようになってしまう……。性別とは関係なく誰もが知っている、満たされない恋の苦痛が、古風なポップソングや大仰な演技によって、悲痛なのに、ある時は滑稽に見えたりもする。

画像: 観るべき理由② 性別とは関係なく誰もが知っている、満たされない恋の苦痛

基本的にシーンや出来事、セリフはほぼオリジナル作のままで、部屋にある絵画やオブジェも、オリジナル作をアレンジしたものだが、そこに、主人公と母親のやり取りなど、オリジナル作にないシーンも加えられているので、比較して見るのも興味深い。また、オリジナル作では無表情な主人公の助手が本作では感情を表情に表すなどの新たな演出や、主人公のセリフなどにオゾン監督流のユーモア感覚がプラスされ、オゾン監督の初期作品のような毒気を感じさせる作風になっている。オゾン版の尺は、ファスビンダー版より30分以上短く、映画のテンポもオゾン監督流だ。

また、主人公を映画監督にしたことと、その設定によって生まれたオリジナル作にはない主人公の最後の行動によって、オゾン監督による映画論として見ることもできる。

観るべき理由③
ドゥニ・メノーシェ、イザベル・アジャーニ、ハンナ・シグラ!豪華すぎる共演

ベテランから新人まで多彩なキャスト陣も見もの。主人公の映画監督ピーター役は、オゾン監督と『危険なプロット』(12)、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(18)でも組んでいるドゥニ・メノーシェ。彼の顔立ちは、オリジナル作の監督であるファスビンダーに少々似ているのではないだろうか。

メノーシェはクェンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(09)で注目を集め、ハリウッド映画でも活躍中。近年では、ウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)、アリ・アスター監督の新作『ボーはおそれている』(23)など話題作への出演が続く。また、2022年の東京国際映画祭で主要3部門を獲得した『理想郷』(22)では、スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞を受賞。さらにクライヴ・オーウェン演じる「マルタの鷹」で知られる私立探偵サム・スペードが、60歳になって南フランスで暮らしているという設定のドラマシリーズ「ムッシュ・スペード(原題)」にも出演、2024年1月の全米放送が予定されている。

画像: (左から)ドゥニ・メノーシェ、イザベル・アジャーニ

(左から)ドゥニ・メノーシェ、イザベル・アジャーニ

主人公の母親役は、オリジナル作で主人公が恋するモデルを演じた、ドイツの名女優ハンナ・シグラ。オリジナル作の母親にはなかった、主人公への優しさを静かな演技で表現する。ファスビンダー監督作の常連で、『マリア・ブラウンの結婚』(79)、『リリー・マルレーン』(81)など彼の監督作23作に出演。オゾン監督とは『すべてうまくいきますように』(21)にも組んでいる。

画像: (左から)イザベル・アジャーニ、ハンナ・シグラ、アマンテ・オディアール

(左から)イザベル・アジャーニ、ハンナ・シグラ、アマンテ・オディアール

主人公の元恋人の女優シドニーを演じるのは『アデルの恋の物語』(75)、『ポゼッション』(81)、『カミーユ・クローデル』(88)のフランスの名女優イザベル・アジャーニ。本作では、華やかな女優ぶりと、主人公との複雑な関係性を見事に演じてみせる。

本作中では歌声も披露し、『ファスベンダーのケレル』(82)でジャンヌ・モローが英語で歌った歌「人は愛するものを殺す」を、ドイツ語で歌っている。

主人公が恋するアミール役のハリル・ガルビアは、本作が映画初出演で、初々しい魅力を発揮。本作以降もTV『レアの7つの人生」(22)、TV『スカム・フランス』(22)など出演作が続く注目株だ。

画像: ハリル・ガルビア

ハリル・ガルビア

こうした新旧の個性豊かな俳優たちのアンサンブル演技が、ファスビンダー監督とオゾン監督、それぞれの持ち味と相まって、独特な世界を構築してくれる。

Blu-rayの映像特典でCHECK!
ハンナ・シグラ出演シーンの舞台裏

本作の見どころのひとつ、オリジナル作にも出演したハンナ・シグラの出演シーンの貴重なメイキングを収録。撮影セットに入る前、通路を歩くところから彼女の姿を捉え、彼女の監督への質問や、監督の彼女への指示などを細かいところまで収録。彼女が監督に、彼とは異なる意見を言う場面もある。メイキング場面のすぐ後に、本編映像が映し出されるので、そのシーンが最終的にどんな映像になったのかがよく分かる。

『苦い涙』Blu-ray・DVD本日リリース!

Blu-ray:5500円(税込)

音声:1.フランス語 DTS-HD Master Audio 5.1ch(オリジナル)
字幕:日本語字幕

【映像特典】 合計:約25分 
・日本語版予告編:1分/20秒 2パターン
・海外版予告編:51秒
・メイキングオブハンナ:11分58秒 
・監督、キャストインタビュー:10分34秒 

DVD:4400円(税込)

音声:1. フランス語 ドルビーデジタル 5.1ch(オリジナル)
字幕:日本語字幕

【映像特典】
・日本版予告編 1分 / 20秒 

発売元:セテラ・インターナショナル
販売元:ハピネット・メディアマーケティング

©2022 FOZ - France 2 CINEMA - PLAYTIME PRODUCTION

Sponsored

This article is a sponsored article by
''.