2画面で映し出される決して交わることのない夫と妻、人生最後の日々。
新作のたびにその実験的な試みと過激描写で世界中を挑発し続けてきた鬼才ギャスパー・ノエ監督が、「暴力」「セックス」を封印、「病」と「死」をテーマに自身の経験を経て新たな世界を作り上げた最新作『VORTEX ヴォルテックス』が12月8日(金)より劇場公開となる。
本作は、人はどう死んでいくのか?誰もが目をそむけたくなる現実を、真正面から冷徹なまでにまざまざと描いたギャスパー・ノエ監督の新境地にして最高傑作。
主演は、80歳にして初主演を果たしたホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントと、『ママと娼婦』の娼婦役で鮮烈な映画デビューを飾り伝説的な女優となったフランソワーズ・ルブラン。
演技とは思えないふたりの奇跡の名演に目を奪われずにはいられない。スプリットスクリーンの画面分割によって、老夫婦の日常が2つの視点から同時進行で映し出されていく。心通わぬ家族、不測の出来事、やがて訪れる死。我々は、暴力なき恐怖の渦に吸い込まれ、“死ぬまで”を追体験する。
ギャスパー・ノエ監督、2画面分割の秘話と心境を語る!
本作の最大の特徴ともいえるのが、2画面同時に映し出される“スプリットスクリーン“の演出。『CLIMAX クライマックス』(2018)『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2019)と過去にもスプリットスクリーンの手法を部分的にとりいれてきたギャスパー・ノエ監督。今回は、ほぼ全編スプリットスクリーンで、老夫婦人生最期の日々を描いた。
解禁されたのが、物語の前半、ある日の朝、心ここにあらずといった様子でふらふらと雑貨屋へ入る妻(フランソワーズ・ルブラン)と、寝起きのパジャマ姿のまま熱心にタイプライターを打つ映画評論家の夫(ダリオ・アルジェント)。
彼は、妻のことが気になり、携帯で電話をかけるが、妻は全く電話に気づくことはない。そして、夫は仕方なく、電話をきり、妻を探しに行こうとする様子が2画面同時進行で映し出される。
スプリットスクリーンについて監督は、 「最初、数シーンだけをスプリットスクリーンで撮影する予定で、映画の全期間に渡って敢行するつもりは元々なかったんだ。
けれども編集室で、登場人物の 1 人がフレームから離れ、もう 一方が1人だけになったとき、彼または彼女が何をしているのかを、同時に、かつ、ずっと見ていたかったことに気づいたんだ。
スプリットスクリーンによって、同時並行で進行しているのに、決して交わることのない2つのトンネルをたどっているように感じられるんだ。“人生の道”と言ってもいいかもしれない。取り返しのつかないほど分離された 2 人なんだ。
この演出は、優れた空間ロジックが必要で、私は常に頭の中でルービックキューブを解いているような感覚に陥り、夜はよく眠れなかったよ。」と、スプリットスクリーンに至った経緯とその狙いについて語った。
さらに、自身の心境について、「『カノン』(1998)と短編『SIDA(原題)』(2006)を除けば、私は本当にティーンエイジャーのためのティーンエイジャーについての映画しか作ってこなかったように感じる。 この年になって、私はようやく少しだけ大人になりつつあるのかもしれない。未知の世界に入り込んでいる。」と新たな境地に入ったことを告白。
間もなく還暦を迎えようとする鬼才・ギャスパー・ノエ監督が贈る、どんなホラー映画よりも怖すぎる「地獄」。2023年12月8日(金)より公開、映画『VORTEX ヴォルテックス』に是非期待して欲しい!
『VORTEX ヴォルテックス』
監督・脚本︓ギャスパー・ノエ
キャスト︓ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
配給︓シンカ
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