美しくも物狂おしい悪夢的サイコ・スリラーが50年ぶりにリバイバル
『ファントム・オブ・パラダイス』『キャリー』『スカーフェイス』『アンタッチャブル』そして『ミッション:インポッシブル』など、ジャンルにとらわれない数々の傑作で知られるハリウッドを代表する鬼才監督、ブライアン・デ・パルマ。同世代のスティーヴン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシらのようにエンタテイメント大作を手がけながらも、その真骨頂はどこか変態的、偏執的ともいえるテーマを華麗な映像テクニックで表現、そこに垣間見える愛や猛烈な悲哀をはらんだ物語にあり、時に酷評されながらも世代を超えてカルト的なファンを増やし続けている監督である。
また、クエンティン・タランティーノやノア・バームバックはじめ、後世の監督たちにも大きな影響を与えている。そんなブライアン・デ・パルマ監督作品の中で、日本で一番最初に紹介された作品(
1974年日本公開)であり、独特の“デ・パルマ・タッチ”やアルフレッド・ヒッチコックへのオマージュが早くも確立された、彼の原点ともいえる記念碑的作品『悪魔のシスター』が初のデジタルリマスター版で50年ぶりに上映決定!本格的なリバイバル上映も、今回が初めてとなる。
ニューヨークのスタテン島の住宅街に建つマンションの一室で起こった殺人事件に絡む、ある女性の衝撃的な過去。映画はサスペンスフルな演出と映像技術で、結合双生児の姉妹の謎を追いかけながら、流血と疑惑と恐怖が渦巻く世界へと突き進んでいく。
主人公のダニエルを演じるのは、後に「スーパーマン」のヒロインを演じたマーゴット・ギター。結合双生児の姉妹の対比を見事に演じわけ、映画をいっそう神秘的に盛り上げている。ダニエルに倒錯的に執着する男エミール役には、『ファントム・オブ・パラダイス』のファントム役はじめ、『フューリー』『殺しのドレス』『ブラック・ダリア』などデ・パルマ作品の常連として活躍した怪優ウィリアム・フィンレイ。その眼差しと表情は、いちど見たら忘れられない強烈さ。
音楽はヒッチコック作品『めまい』『北北西に進路をとれ』ほか『市民ケーン』『タクシードライバー』などを手掛けた名作曲家バーナード・ハーマン。公開当時「ヒッチコックの『サイコ』以来の最高の恐怖映画」「第一級のミステリー・サスペンス」と称賛されたスリラー映画でありながら、精神的、社会的に抑圧下におかれた女性映画という側面も持つ。結末に近づくにつれのしかかる恐ろしさは異様そのもので、全編を覆う病的なまでの迫力は唯一無二。今回、場面写真も2枚解禁。1枚はあどけなくも不思議な妖しさをたたえたマーゴット・ギターが笑みを浮かべている写真、もう1枚は形相が一変、包丁を振りかざしている驚愕の姿をとらえたものだ。
2024年新春、“映像の魔術師”デ・パルマが描きだすめくるめく悪夢と、その戦慄の結末をご賞味あれ。
監督:ブライアン・デ・パルマ 脚本:ブライアン・デ・パルマ、ルイザ・ローズ 撮影:グレゴリー・サンダー 音楽:バーナード・ハーマン 製作:エドワード・R・プレスマン
出演:マーゴット・ギター、ジェニファー・ソルト、チャールズ・ダーニング、ウィリアム・フィンレイ、ライスル・ウィルソン
1973年 / アメリカ / カラー / 92分