本作は、前作『東京自転車節』でコロナ禍の東京を自転車配達員の視点で描いた青柳拓監督最新作。母の職場であり、幼い頃から通っていた障害福祉サービス事業所「みらいファーム」を舞台に、相模原障害者施設殺傷事件の植松聖死刑囚の「障害者は生きている価値がない」という言葉へのアンサーとして制作された。
今回、解禁された予告編では、「みらいファーム」で働く⼈たちの姿が⼿織り機のリズムに合わせて映し出される。綿を育て、⽷を紡ぎ、布を織る。絵を描き、花を育て、時にお昼寝しながら仕事をともにする中で、育まれていく友情や恋⼼。⽣きること、そのものを全肯定するような予告編のナレーションは⻘柳監督⾃⾝が務めている。
また、公開に先⽴ち試写会などで本作を鑑賞した映画評論家の町⼭智浩や相撲/⾳楽ライターの和⽥靜⾹、俳優の川瀬陽太、根⽮涼⾹、映像作家の⼩森はるかから本作への推薦コメントが届いた。
『フジヤマコットントン』推薦コメント
◆町⼭智浩(映画評論家)
ここで働く⼈々を⾒ると、当たり前のことが不思議に思えてきます。
⼈はなぜ美しい花を愛するの? なぜ逝った⼈を慈しむの? なぜ⼈を喜ばせたいの?
「希望の花、咲かせてもいい?」という⾔葉で胸がいっぱいになりました。
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◆和⽥靜⾹(相撲/⾳楽ライター)
コットントン、コットントン、「みらいファーム」で機を織るリズムが⽣きるに⼤切なことを気づか
せてくれる。あれもこれももっともっとって欲深く望み過ぎて⾛り回る⾃分を、⽴ち⽌まらせる。
線を描いてマッキーのペンで模様に⾊を埋めていく、花を育てる、畑に座り込んでひとりで佇む。
どれも誰も⼤切なかけがえのない時間であり⽣であり、そして仕事である。⽣産性とか効率性とか
私たちを追い回す経済⾄上主義の考え⽅が侵⾷できない仕事の尊さを、ここに⾒るのだ。
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◆川瀬陽太(俳優)
俳優を 30 年近くやっていてもカメラ前で「良くみせたくて」緊張する。
カメラは時に⼈を従属させてしまう存在になりうるのを、⾝をもって知っている。
それを⻘柳くんはみらいファームの皆へと向けた。
果たして、完成した作品ではむしろ⻘柳くんがファインダーの向こうのめぐさんやゆかさん、けん
いちさん、皆のむきだしの強い⽣に圧倒されているのが伝わるのだ。
彼らに届く様な映画が作れるかな。まだまだ修⾏だな。
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◆⼩森はるか(映像作家)
⼀⼈⼀⼈の歩き⽅、⼿の動かし⽅、話し⽅がある。
⼀⼈の歩幅が⾒えるまで、⼀緒に歩き、待ち、話を聞こうとするカメラがある。
この映画は、⾝体と⼼のペースが⼈とは違うことを、誰よりも理解しているのは
その⼈⾃⾝だということを、そっと写している。
だからこそ、他者のペースを尊重し合える⼈たちでもあるのだと教えてくれる。
みらいファームの⽇々が、⾵景が、なぜこんなにも胸に沁みるのか。
この豊かさが問うてくることに向き合いたい。
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◆根⽮涼⾹(俳優)
⾃転⾞節での怒り悲しみを、祈りや願いの⽷にして、じっくりコツコツ⾊とりどりに、編まれた 95
分の布。複雑になりすぎた社会に疲弊する私たちをぐるりと包み、みらいファームの温もりを分け
てくれる。悩みながら、喜びながら、その⽇その⽇を歩いてく。花と、ものと、貴⽅と、ヤマと。胸
の絡まりが解けてゆく。⼈は、本来受け⼊れ合い、⽀え合えるのだと、この映画と共に叫びたい。
『フジヤマコットントン』
2024年2⽉10⽇(⼟)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
配給:ノンデライコ
©nondelaico/mizuguchiya film