第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のショートリストにも選出!
史上初となる、隠しカメラや携帯電話により撮影された脱北の全行程を映し出した本作。映画の中心となるのは、祖国北朝鮮を離れたばかりのある家族だ。いくつもの国境や川、険しい山岳地帯を超えて危険な旅に乗り出す2人の幼い子どもと80代の老婆を含む5人のその家族、国に残して来た子どもとの再会を切望する母親、そして、自由を求める彼らを強い使命感をもって支援する人々。この家族のために実に50人以上のブローカーが協力し、脱北ののち中国、ベトナム、ラオス、タイの4カ国を経由し最終目的地である韓国を目指す、総移動距離1万2千キロメートルの決死の脱出作戦が展開される。
2023年サンダンス映画祭で圧倒的な支持を得てUSドキュメンタリー部門観客賞を受賞したほか、ウッドストック映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞など2冠、ハンプトン国際映画祭で最優秀作品賞など2冠をはじめ7つの賞を獲得。21の賞にノミネートを果たし、昨年12月21日に発表された第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のショートリスト(ノミネート前の候補作)に選出された。全米批評家サイトRotten Tomatoesのメーターは評論家100%、オーディエンス98%と圧倒的な高評価を記録。また、オンラインデータベースIMDbでもレイティング7.8とハイスコアをマーク(数字は全て2023年12月18日時点)、各映画メディアや評論家の間では2023年のベスト・ドキュメンタリーの呼び声もある。
脱北者が祖国を離れた夜を語る本編冒頭映像
この度公開されたのは、かつての脱北者が祖国北朝鮮から中国に逃れたある夜を振り返る証言とともに、北朝鮮と中国の国境線を捉えた映像を映し出す本編冒頭映像。
本作の冒頭に登場するのは、かつて祖国北朝鮮から脱北した活動家で「7つの名前を持つ少女」(大和書房)の著者でもあるイ・ヒョンソ。「私が理想郷(ユートピア)と信じて育った故郷は、中国から川を隔てた場所です」と説明。そして、20年以上前にその祖国と別れを告げた冬の夜のことを語り始める。北朝鮮と中国の国境を守る警備隊にいた友人に越境の手助けを頼んだこと、雪に覆われた冬の川の情景、見上げた空、両足を震わせながら何に対してかも分からず「力を貸してください」と頼んだこと。彼女の証言とともに、中国側の国境線から北朝鮮側を極秘に撮影した映像がモノクロで映し出され、不思議なまでの静寂さに包まれたシーンとなっている。
この映像のように国境の外から北朝鮮内部を撮影することは高いリスクを伴うが、こうした映像は、映画に登場する脱北支援組織に協力する人々が隠しカメラを用いて撮影したもの。さらに本作には、国境沿いのみならず北朝鮮に生きる人々の暮らしぶりを捉えた隠しカメラ映像まで多数登場する。こうしたものにはある日本人も関わっており、北朝鮮にカメラを密輸して極秘に撮影されてきたものを入手した上で使用した。監督を務めたマドレーヌ・ギャヴィンは、こうした内部映像について「この映像は、自国の現実を外の世界に公表しようと命を危険にさらす、信じられないほど勇敢な北朝鮮の人々によって撮影されたものなのです」と敬意を込めて説明する。
『ビヨンド・ユートピア 脱北』に寄せられたコメント一覧(敬称略・順不同)
この映画を通じて多くの人々に事実を知ってもらいたいと思い、出演を決めました。
映画を見た皆さんが北朝鮮に取り残された人々や分断された家族に心を重ねて頂き、国際社会に訴える手伝いをして頂けたら幸いです。
――リ・ソヨン(ニューコリア女性連合 代表/本作出演者)
脱北路1万2000キロへの密着撮影はもう絶後だろう。同時代を生きる隣人が嘗めている辛苦と恐怖、それを強いる不条理の正体に迫った115分。観て欲しい。
――石丸次郎 いしまるじろう (ジャーナリスト/アジアプレス)
ミサイルや核開発ではない、もう一つ北朝鮮の“真実”がここにはある。
12000キロもの「地下鉄道」を命懸けで突破しようとする人々のことを、私たちは忘れてはいけない。
――浜田敬子(ジャーナリスト)
人は誰にも生きる権利がある。
飢餓と抑圧からの決死の脱出をこれほどまでリアルに描いたドキュメンタリーは他に例がない!
――辺真一(コリア・レポート編集長)
観ながら時おり思う。これはフィクションではないのか。もちろん違う。ドキュメンタリーだ。でもなぜこの映像が撮れるのか。なぜこの瞬間が撮れたのか。観終えて思う。今の北朝鮮の多くの人たちの苦悩を。分断に責任ある国で生まれた自分にできることを。
――森達也(映画監督)
逃げるも残るも地獄なのが、脱北物語。ただ、5人家族が牧師の助けで国境を超えた時、それは、祈りの物語に変わった。
――坂上香(ドキュメンタリー映画監督)
脱北のプロセスという、普通は撮れるはずのないものが撮れていて、手に汗握った。
脱北者だけでなく、作り手の執念をも感じる。
――想田和弘(映画作家)
現代史に残る佳作だ。生命の危険を犯して「祖国」を捨てる「脱北者」たち。
その言葉を知っていても、私たちの多くは、生身の彼らの素顔と肉声を知らない。
――有田芳生(ジャーナリスト)
コロナを経て世界は変わった。当然、彼の国を取り巻く状況も変わった。従来の情報だけで「脱北」を知った気になっているほど衝撃が大きい。そして、本作がドキュメンタリーであることが余計に胸を締め付けてくる。
――丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
押し寄せる息をのむ映像に胸の震えが止まらない。
決死で理想郷を抜け出したさきに、理想郷は訪れない。宿命に戦慄する。
――五百旗頭幸男(ドキュメンタリー映画監督・記者)
4つの国境を決死で越える脱北者一家と撮影クルー、過酷な逃避行を随伴するブローカーと支援者の“アンダーグラウンド・レイルロード”。脱北の過程を初めて詳らかに捉えた、自由を目指す人々の戦慄のドキュメンタリーだ。まさに今までに観たことがない映画!
――中川敬(ミュージシャン/ソウル・フラワー・ユニオン)
「地獄」「狂気」…。筆舌に尽くし難い情景がスクリーンに滲む。命からがら脱北する老女の、その口から出る虐政崇拝…。本作が描き出す「楽園」の正体に戦慄する。
――阿武野勝彦(ドキュメンタリー・プロデューサー)
『地上の楽園』。1950年代、在日朝鮮の人たちは、この言葉に未来を夢みた。
今なお、そこからの脱出に、命を賭ける!
――秦 早穗子(映画評論家)
知らなかったほうが幸せだったかもしれない。
でも知ってしまったからには、行動したい。
――キニマンス塚本ニキ(翻訳者・ラジオパーソナリティー)
観ていて何より不安になるのは日本が将来、ここで描かれる北朝鮮のような国家になってしまわないか?ということだ。民主主義の意味が改めて問われる作品でもあると思います。
――ダースレイダー(ラッパー)
沈黙させられていた家族が「世界は広い」と知った時の顔、その逞しさが脳裏に刻まれた
――武田砂鉄(ライター)
“鳥籠の楽園”を当事者目線で追体験する地獄のオデッセイに震撼!
虚構では辿り着けない境地に踏み入る、傑出した記録映画。
――ISO(ライター)
人を「駒」として扱う国家の横暴は、まるで戦時中のようだった。今の日本も、国民は税を納める「駒」として扱っている面があるように感じる。国家が人を人として扱うこと、それができない世界の歪みを、脱北者の苦しみを通じて見せつけられた。あまりにも生々しい映像が、頭から離れない。――せやろがいおじさん(お笑い芸人/YouTuber)
こんな過酷なロードムービー、見たことありません。
白頭山(北朝鮮)から鴨緑江を渡河して中国へ。
その後、瀋陽→青島→ベトナム→ラオス→タイへと移動する信じられない脱北の旅。全身が痺れました。
――駒井尚文(映画.com編集長)
『ビヨンド・ユートピア 脱北』
2024年1月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
配給:トランスフォーマー
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