第96回(2024)アカデミー賞スケジュール※現地時間
1月23日(火) ノミネート発表
3月10日(日) 授賞式
※授賞式は日本時間3月11日(月)
自殺を図った不運な女性が奇跡的に蘇生して
“生まれたての人間”として新たな冒険に旅立つ
『女王陛下のお気に入り』(2018)のヨルゴス・ランティモス監督と主演のエマ・ストーンが再びコンビを組んだ話題作で、昨年の第80回ベネチア国際映画祭では金獅子賞を受賞。
第81回ゴールデングローブ賞では作品賞など6部門7ノミネートを獲得し、第96回アカデミー賞でも11部門にノミネートされた。
今回ランティモスが描くのは、天才的外科医の手で、自ら命を絶ったものの新たな命を得た女性ベラが、外界に飛び出し大胆な冒険を経て大きく成長していく姿。目もくらむ映像美で誰も見たことのないような世界を提示する。
ベラを演じたエマは真の自由を求め、ひたすらに邁進していく主人公の冒険をダイナミックに演じ、共同製作にも参加。ロサンゼルス映画批評家協会賞主演女優賞などを受賞している。
エマを囲んで天才外科医に扮するウィレム・デフォー、ベラを外界に連れ出すダンカンに扮するマーク・ラファロのほか、『ドント・ウォーリー』(2018)のラミー・ユセフ、『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(2020)のマーガレット・クアリーや、『マリア・ブラウンの結婚』(1979)などのドイツの名女優ハンナ・シグラら多彩な顔ぶれが共演。
原作はスコットランドの作家アラスター・グレイの同名小説。
あらすじ
不幸な運命の元、自ら命を絶った若い女性ベラ(エマ)は、ロンドンの大学で教鞭をとる天才的外科医ゴッドウィン(デフォー)の手によって奇跡的に蘇生した。ただし彼女の脳は生まれたての状態になっていた。
ゴッドウィンは教え子のマックス(ユセフ)と共に実験室でもある自宅に連れ帰ったベラを日々観察する。新生児のように純真無垢にして自由奔放なベラにマックスは惹かれていくが、それを察したゴッドウィンは彼にベラとの結婚を勧める。
その裏でゴッドウィンはベラを研究対象として手元に置きたかったのだ。しかしベラとマックスの結婚契約書の作成を依頼された弁護士のダンカン(ラファロ)がベラを気に入り、放蕩者の彼は彼女に一緒に旅に出ようと誘う。
ゴッドウィンは反対するが、「世界を自分の目で見たい」というベラの強い熱意に負けてしまう。
ダンカンと共にリスボンにやってきたベラは何事も新鮮な初めての体験に歓喜しつつ、急速に外の世界を吸収していく。
そんなベラに最初は遊びのつもりだったダンカンも真剣な気持ちになっていき、ベラを船旅に誘って彼女を独占したつもりになるが、そこでもベラは他の乗客たちと交流し、高い知性に目覚めていく。こうしてベラの冒険はどこまでも続いていくかのように見えたが……。
登場人物
ベラ(エマ・ストーン)
自ら命を絶ったが、ゴッドウィンの手によって蘇生し、新たな人生に踏み出していく女性。自由奔放ながら興味を持ったことには何事にも積極的に体験してみようとする。
ダンカン(マーク・ラファロ)
放蕩者の弁護士。ベラの奔放さに興味を持ち、結婚相手のマックスがいる彼女を外の世界に連れ出す。最初は保護者然としているが、変貌していく彼女に真剣に惹かれていく。
ゴッドウィン(ウィレム・デフォー)(右)
大学で教鞭をとる天才学者だが、変わり者のため学生たちからは敬遠されがち。ベラの親代わりでもあり、娘のようでもあり実験対象でもある彼女を手元に置こうとする。
マックス(ラミー・ユセフ)(左)
ゴッドウィンの教え子で、師の天才ぶりに敬意を持ち、ベラの実験に携わるようになる。次第にベラに好意を持ち、ゴッドウィンの勧めで彼女と結婚することになるが……。
オスカー注目ポイント
“賞男”ヨルゴス・ランティモス監督の道のり
1973年ギリシアのアテネで誕生。CMディレクターを経て2001年映画監督に。
2009年の監督・脚本作『籠の中の乙女』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞し、米アカデミー賞では外国語映画賞(当時)候補になったことで一躍注目を集め、2011年からロンドンに移住。
2015年の『ロブスター』がカンヌで審査員賞を受賞し、アカデミー賞脚本賞候補になるなど、名声を確かなものに。
2017年の『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』がカンヌで今度は脚本賞を受賞。2018年の『女王陛下のお気に入り』ではベネチア国際映画祭審査員大賞受賞、アカデミー賞では作品賞、脚本賞候補になるなど作品ごとに大きな賞を受賞する名匠となった。
新作『哀れなるものたち』はついにベネチアで金獅子賞を受賞。オスカーでも作品賞など11の部門に大量ノミネートされた。
今度のオスカーでは大量ノミネート確実?
『哀れなるものたち』はアカデミー賞の前哨戦ゴールデングローブ賞で作品、監督、主演女優賞など6部門7候補になる快進撃を見せたが、いよいよアカデミー賞でも大量ノミネートが発表された。
最多ノミネートは逃したものの、作品賞、ランティモスが監督賞、エマが主演女優賞、ラファロ&デフォーが助演男優賞に候補入り。さらにトニー・マクナマラの脚色賞、ジェームズ・プライスらの美術賞のほか、撮影賞、衣装デザイン賞、編集賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、作曲賞に候補入りを果たした。
ウィレム・デフォー& マーク・ラファロが語る
『哀れなるものたち』での挑戦
『哀れなるものたち』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたマーク・ラファロと、ウィレム・デフォー。
ここでデフォーは主人公ベラ(エマ・ストーン)に新たな命を授け、彼女の父親代わりとなる天才外科医ゴッドウィン・バクスター、ラファロはそんなベラに魅力を感じ、彼女を冒険の旅に連れ出すダンカン・ウェダバーンを演じている。2人ともヨルゴス・ランティモス監督作は初めての出演だ。
デフォー ヨルゴスは私にとって最高の監督です。それは世界を作り上げ、設定を与えてくれ、そこに入り込ませてくれる人だからです。
デフォー 人によりますが、俳優に関心のない監督、撮影より演技指導を優先する監督と偏りがちになるんですが、彼はすべての要素を持っていて完璧なんです。撮影現場は楽しい雰囲気で、俳優の選択も秀逸です。
ラファロ 彼は私たち俳優に自由を与えてくれ、脚本のことやキャラについては余り話をしませんでした。リハーサル期間は脚本のことより演劇トレーニングを重点的に行いました。
ラファロ ここまで私に任せてくれる監督は初めてですが、しっかり気を配ってくれました。映画製作に関するすべての要素が好きだという感じがしました。
またどちらも異色と言える役柄なので、役作りも大変だったのでは?
デフォー 私が演じるゴッドウィンは特殊メイクを施して演じたので、役に入りやすかったです。設定や衣装同様、体に付けた装具でも動きや感情に変化を出せます。見た目が違えば感じ方も変わり、別人になることができます。
ラファロ 役作りは楽しかったです。このような役は初めてだったので、最初は少し怖かったんです。なぜ私がこの役に選ばれたのかと思い、実は辛い時期もありましたが、監督は私を最後まで信じてくれていたので自信がわきました。
ラファロ 衣装もセットも、そしてエマともリハーサルで関係性を発展させることが大事だと思いました。
この作品で信頼関係ができたようで、デフォーはエマと共に、ランティモスの次回作『Kind of Kindness』にも出演している。
『哀れなるものたち』
2024年1月26日(金)公開
2023/イギリス/2時間22分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、 ジェロッド・カーマイケル、ハンナ・シグラ
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