長回し1テイクで挑んだクライマックスシーン
本作のキーワードは「運命」の意味で使う韓国の言葉“縁—イニョン—”。見知らぬ人とすれ違った時、袖が偶然触れるのは、前世―PAST LIVES―で何かの“縁”があったから。久しぶりに顔を合わせたふたりは、NYの街を歩きながらこれまでの互いの人生について語り合い、過去自分たちが「選ばなかった道」に想いを馳せる。「もしもあの時、あなたとの未来を選んでいたら—」。この再会の結末に、幾千にも重なった切ない涙が溢れだす――。
メガホンを取るのは、本作で長編映画監督デビューを飾ったセリーヌ・ソン。監督自身が12歳の時、家族と共にソウルからトロントへ移住し、その後ニューヨークに移った体験を元に執筆したオリジナル脚本は、デビュー作ながら既に各国の映画賞で246ノミネート88受賞(3/19時点)。ゴールデン・グローブ賞では作品賞、監督賞、脚本賞、そして主演女優賞を含む5部門に、アカデミー賞では作品賞と脚本賞にノミネートされた。
この度、本作のクライマックスシーンの場面写真が解禁された。ニューヨークで再会の数日間を過ごすノラとヘソン。まだ暗い明け方に見つめ合う二人の間に流れる時間は途方もなく長く感じる。二人はお互いに視線をそらさずに向き合うが、口にする言葉は無い。幼馴染という関係を変えるのには十分な時間だったはず。
ノラを演じたグレタ・リーは「あのシーンだけでも1本の映画になるくらいだと思いました。」と撮影を振り返る。「あの瞬間、本当に数えきれないくらいの感情が渦巻いていて…。脚本では2分と書かれていたのですが、実際は45秒でした。監督のセリーヌは、この時間を耐えられないくらい長くて、同時にものすごく短いようにも描きたいと言っていたのですが、それは私も演じていて本能的に感じることが出来ました」。
また、なんとこのシーンは長回しの1テイクで撮り切ったのだという。「どのような撮影になるのか事前にしっかりと教えてもらっていませんでした。でもそれがセリーヌの素晴らしいところで、彼女には決断力があって何をどうしたいのか明確に分かっていたんです。」と語るグレタだが、実際に彼女とヘソン演じたユ・テオは、お互いに向き合うという演出と、カメラの位置だけは分かっていたものの、それ以外は何も知らされていなかった。
ユ・テオにとってもこのシーンの撮影は印象深かったようで、「まるで永遠かに思えました。」と語る。セリーヌ・ソン監督の演出については、「これだ!と監督が思える演技ではないといけないと考えていました。なので、自分の持っているものをこのシーンに全て出し切りました。言えないこと・見せないことにとても価値があると思ったからです。このシーンには、完全にセリーヌの監督としての才能が表れていると思います。」とその魅力に触れた。
『パスト ライブス /再会』
2024年4月5日(金)公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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