『バティモン5 望まれざるもの』(5月24日(金)公開)
パリ郊外(=バンリュー※1)に存在する、都市再開発を目前に控えた移民居住棟エリア=通称「バティモン 5」。治安の悪いエリアの一掃を目論む「行政」とそれに反発する「住人」による、“排除”vs “怒り”の衝突。本作では、恐れと不満の積み重ねが徐々に両者間の溝を深くし、憎しみのボルテージが加速していく様が息もつかせぬ緊迫感で描かれる。
バンリュー地区にある「権力」「革新」「暴力」の3つの視点を交錯させることでそのコミュニティの実態、ひいては華やかなパリの知られざる“暗部”を炙り出していく。この街で不都合なものとは一体何なのか<望まれざる存在>とは何を指すのか――。
2024 年夏季五輪を控えて盛り上がりを見せるパリ。世界的な注目を集める大都市が人知れず抱え続ける問題を、サスペンスフルかつエモーショナルにクローズアップした衝撃作である。
監督は、監督は、前作『レ・ミゼラブル』でその名を一躍世界に轟かせた、新鋭ラジ・リ。役者として、また、1994 年にアーティスト集団クルトラジュメのメンバーとしてキャリアをスタートした彼は、1997年、初の短編映画『Montfermeil Les Bosquets(原題)』を監督、2004 年にはドキュメンタリー『28 Millimeters(原題)』の脚本を、クリシー、モンフェルメイユ、パリの街の壁に巨大な写真を貼ったことで有名になった写真家 JR(ジェイアール)と共同で手がけるなど、今、注目を集める新進気鋭のアートティストの1 人でもある。
前作『レ・ミゼラブル』では、自身が生まれ育ったパリ郊外の犯罪多発地区モンフェルメイユを舞台に、そのエリアを取り締まる犯罪防止班(BAC)と少年たちの対立を、手に汗握る圧倒的な臨場感で描き出し、観るものの心を鷲掴みに!結果、作品は、第72回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、第 45 回セザール賞 4 冠最多受賞(観客賞、最優秀作品賞、有望男優賞、編集賞)、第92回アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネート、第77回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネートなど各国の映画賞を総なめにし、世界に衝撃を与えることになった。
それから4年。ラジ・リ監督のもとに『レ・ミゼラブル』製作スタッフが再集結し、再びバンリューが抱える問題を持ち前の臨場感に新しい視点を交えて生み出したのが本作である。前作と地繋がりのテーマを採用しつつも、そのドラマはより人間臭さを帯びながらさらに社会性をまとい、観るものを圧倒する力強さで進化した作品となっている。
※1:フランス語で郊外を意味するbanlieue(バンリュー)は「排除された者たちの地帯」との語源をもつ。19 世紀より労働者の街として発展し、戦後は住宅難を解消する目的で大量の団地が建設された。団地人気が低下する 1960 年代末より旧植民地出身の移民労働者とその家族が転入し、貧困や差別などの問題が集積する場となった。
『マイスモールランド』(2022 年)
クルド人の家族とともに、生まれた地を離れ、幼い頃から日本で育った 17 歳の在日クルド人の少女、サーリャ。少し前までは同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていたが、ある日、難民申請が不認定となり、家族の日常が一変。自身の在留資格を失い、普通の高校生としての日常が奪われてしまう。サーリャは家族を取り巻く理不尽な社会と向き合いながらも、自分の居場所を探し、成長していく。
クルド人全体を描くのではなく、あえて 1 人の少女に焦点を当てたこの物語は、よりパーソナルな問題として深く刺さっていく。 手掛けたのは、是枝裕和監督が率いる「分福」の新人監督・川和田恵真。世界三大映画祭の一つであるベルリン国際映画祭において、日本初の栄誉となる、アムネスティ国際映画賞《特別表彰》に輝いた。
『ウィ、シェフ!』(2023 年)
一流レストランのスーシェフと働いていたカティ。才能はあるが、料理に対する徹底的な美意識とこだわり、そして頑固な性格ゆえにシェフとは衝突ばかりだった。そんな中、とうとうシェフと大喧嘩してしまい、店を飛び出してしまう。
職に困ったカティはあるレストランの求人を見つけ、住み込みで働くこととなるが、そこは<食べられたらいい><お腹がいっぱいになったらいい>という、食に対して全くこだわりのない移民の少年たちが暮らす自立支援施設だった。
当初、自分のこだわりややり方を押し付け、少年や施設のスタッフと衝突ばかりだったカティが、料理を通して人を思いやることを学び、さまざまなさまざまな事情によって危険を犯して移民としてフランスに暮らす少年たちの想いを知り、共に成長していく。
『最強のふたり』(2012 年)
事故で全身麻酔となり、車椅子生活を送る富豪のフィリップと、意図せず介護役に採用されてしまったスラム出身の黒人青年ドリス。音楽の趣味は正反対、エレガントな会話と下ネタの応酬、ブランド物の洋服とスウェットー生活の全てが正反対な 2 人は衝突ばかりだったが、フィリップを特別扱いはせず、1 人の人間として対応するドリスに対し、フィリップの心は開いていく。
どんなに育った環境が違っても、お互いを思いやり、受け入れる気持ちを持つことで<最強のふたり>になれる。フランスでの大ヒットはもちろん、2011 年の東京国際映画祭でも最高賞および主演の 2 人も主演男優賞を受賞した感動作。
『バティモン5 望まれざる者』
5月24日(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開
監督・脚本:ラジ・リ『レ・ミゼラブル』
出演:アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ、アリストート・ルインドゥラ、スティーヴ・ティアンチュー、オレリア・プティ、ジャンヌ・バリバール
2023年/フランス・ベルギー/シネマスコープ/105分/カラー/仏語・英語・亜語/5.1ch
原題:BÂTIMENT 5/字幕翻訳:宮坂愛/映倫区分G
配給:STAR CHANNEL MOVIES
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
© SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023