英国アカデミー賞を受賞した『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(21)や『ウーマン・キング 無敵の女戦士たち』(22)など話題作への出演が続くラシャーナ・リンチ。本作ではボブ・マーリーを支え続けた妻のリタ・マーリーという重要な役どころを演じた。リタとも実際に会ったというリンチ。出演の決め手にはじまり、撮影の苦労など本作の裏話を語った。
“これはボブ・マーリーを定義するような映画になるし、
人々はこれがボブなんだと思うようになる。
だから苦労というより、その責任があった”
ーー本作への出演を決めた最大の理由を教えてください。
「この映画が製作されると聞いて、かなり早い段階で監督のレイナルド・マーカス・グリーンと話を進めていたの。彼と会って、この作品は何をとっても絶対に全てが正しくなければいけないと伝えたわ。
私はジャマイカ人で(彼女自身はイギリス生まれで両親がジャマイカ人)、ジャマイカ人は国に対して多くの責任がある。その一部を私も担いたいと思ったの。ただその前に、リタ・マーリーの人生と声がちゃんと映画の中で守られているという安心感が必要だった。それを確信した瞬間、『大丈夫、やるわ』と答えたの」
ーー撮影前の準備で、特に苦労されたことを教えてください。
「苦労したことは特になかったわ。それよりも、実在の人物を演じるという責任や自分の国を背負うという責任を捨て去ってしまわないかが不安だった。それがかなり早い段階で解決してからは問題なかったわ。というのも、語るべき私達の歴史が沢山あるから、隅々まで考え尽くさないといけないと思った時があったの。これはボブ・マーリーを定義するような映画になるし、人々はこれがボブなんだと思うようになる。だから苦労というより、その責任があったわ。
リタ・マーリーと実際に会ってお話をされたと聞きました。特に印象的だった言葉やエピソードとともに、ご本人を演じるにあたって、それはどのように役立ったのか教えてください。
まずリタに会えたことが本当に光栄で信じられない。精神力があってまるで女神のような人だった。彼女は常に周りを支えるすごい存在よ。当時からの彼女の落ち着きや優雅な姿は、撮影を通して私が表現しようと思っていたことなの。ボブにとってリタがどれほど重要な存在であったかを思い起こさせてくれたし、これこそが彼女の人生を成すものであり、この映画に必要なものだと製作チームにも伝えたわ。リタの本質や力強いエネルギー、そしてボブを語るときの無邪気さ。まるで青春時代の恋のような感覚を製作を通して彼女から感じられたわ。それにその感覚は過去だけではなく、今も存在していると思うの。だから撮影でキングズリー・ベン=アディルとの関係を想像するうえで役立ったわ。新しいシーンの撮影で彼を見るたびに、ドキドキするような甘い恋する感覚を演じたの」
ーー劇中に登場する楽曲の中で、お気に入りの曲をその理由とともに教えてください。
「1曲だけなら『EXODUS』ね。本編ではEXODUSの製作過程が描かれているの。ボブの人生の中でどこから着想を得て、どう歌詞を書き、1曲1曲全てを完璧に仕上げることができたのか、アルバム『EXODUS』で感じることが出来るの」
ーージャマイカでの撮影はどうでしたか?
「美しかった。以前にも映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、数週間ジャマイカで撮影したことがあるの。その地にまた戻って、ジャマイカのスタッフやサポートアーティストに会って、若きボブとリタの世界に浸れるのはとても素敵なことだった。2人の愛が生まれ、アーティストへとなった地よ。だから2人の世界へ戻るような感覚だった。ロンドンでの撮影だけで済ませることだってできた。でも、ボブへの思いを込めてジャマイカで撮影をすることは、とても特別だったと思う」
――本作を楽しみにしている日本のファンへ向けて見どころを教えてください。
「見どころは誰も知らないボブの姿よ。みんな彼のことを知っていると思っている。私もそう思っていた。でも、この撮影、キングズリーの表現、そしてボブの子供たちとの交流を通して、私は全く違うボブの姿を知った。彼の美しい名言やインタビュー、人生について語る姿を通して垣間見える、彼の精神的な部分が深く描かれているの。私たちが知っている、そして愛しているアーティストに、ボブはどのようになったのかが分かるわ。でもよくある伝記映画とは一味違うの。」
監督を務めたレイナルド・マーカス・グリーンはラシャーナ・リンチについて、「何事も一つ高いレベルへと引き上げてくれる存在」であり、「まさに世代を超えた才能の持ち主」であると評価している。ラシャーナ・リンチ演じるリタ・マーリーが持つエネルギー、そしてボブ・マーリーとの信頼と強い絆で結ばれた素晴らしい関係性にも注目していただきたい。
『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
1976年、カリブ海に浮かぶ小国ジャマイカは独立後の混乱から政情が安定せず、対立する二大政党により国民は分断されていた。僅か30歳にして国民的アーティストとなっていたボブ・マーリーは、彼の人気を利用しようとする国内の政治闘争に巻き込まれ、同年12月3日に暗殺未遂事件が起こる。僅か2日後、ボブは怪我をおして、その後伝説となった「スマイル・ジャマイカ・コンサート」のステージに立つが、身の危険からすぐにロンドンへ逃れる。ロンドンでは「20世紀最高の名盤(タイム誌)」と評されるアルバム『エクソダス』の制作に勤しみ、ヨーロッパ主要都市を周るライブツアーを敢行。かのザ・ローリング・ストーンズやザ・クラッシュと肩を並べ、世界的セレブリティの階段を駆け上がる。一方母国ジャマイカの政治情勢はさらに不安定化し、内戦の危機がすぐそこに迫っていた。深く傷ついたジャマイカを癒し内戦を止められるのはもはや政治家ではなく、アーティストであり国民的英雄であるこの男だけだった...
5月17日(金) 全国公開
配給:東和ピクチャーズ
© 2024 PARAMOUNT PICTURES