地元の裏社会から逃れ、タイの美しいビーチへとたどり着いたフランス人の格闘家サムは、現地で出会った妻ミア、娘のダラと仲睦まじく暮らしていた。ホテルのポーターとして働く一方で、危険なムエタイのファイターとして賭け試合に出場するのも、すべて家族のため、いつか自分の店を持ちたいというミアの夢を叶えるためだった。しかし「FARANG(よそ者、外国人)」で、脛に疵を持つサムにとってそれさえ簡単な話ではなかった。焦ったサムは、同じフランス人の男ナロンからある仕事を引き受ける。成功すれば全てがうまくいく…。しかし、サムを待ち受けていたのは、想像もしなかった過酷で残虐な運命だった。
監督はリュック・ベッソン率いるヨーロッパコープが見出し、『ヒットマン』のエクストリームなヴァイオレンス描写でその名を世界に知らしめたヨーロッパ・ジャンル映画界の異才ザヴィエ・ジャン。その後もホラーを中心に映画ファンの注目を浴びてきた彼が、再び容赦なきヴァイオレンスをかつてないテンションでハードゴアに描ききる。愛する者を奪われ、捨て身の覚悟でひたすら敵を殺しまくる主人公サムを演じるのはキックボクシングの大会で優勝経験もあるフランスの新星ナシム・リエス。極限まで鍛え上げられた肉体が繰り出す圧巻のアクションと、ザヴィエ・ジャンが見せる極限の残虐描写のアンサンブルは圧巻の一言。更に『オンリー・ゴッド』で映画ファンのハートを虜にしたヴィタヤ・パンスリンガム、カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞の重鎮オリヴィエ・グルメらベテラン勢が、凄絶な愛と復讐の交響曲に荘厳な彩りをもたらしている。
『FARANG/ファラン』では撮影の3ヶ月前からプリビジュアライゼーションが行なわれた。プリビジュアライゼーション(通称プリビズ)とは、映像制作において、本格的な撮影の前にどういう映像をつくるか視覚化しておこうという作業で、言わば精度の高い絵コンテを映像で事前に用意し、予め役者や撮影スタッフに共有していくというもの。
本作の撮影では、事前にスマートフォンを使用してスタントマンに実物大のセットで演じてもらい、シークエンスがどのように見えるかをアングルやフォーカスを決めて撮影、その映像を撮影前に俳優に共有し準備してもらい、実際の撮影時には正確に再現してもらったという。どのショットやカットの組み合わせがシークエンスに最適かを事前に決定しているため、俳優は現場ではミリ単位で動きを再現する必要があり、例えば連続したテイクのように見えた箇所が、実際には70カットもあることもあったという。主演ナシム・リエスは「ミリ単位で動きを完璧にする必要があるので、非常に正確でなければなりません。特にシーンのつなぎ目もあり、とても難しくて激しかったです。」と明かし、監督のザヴィエ・ジャンも「スタントマンの精度や効率、安全性にとっても有効的です。その結果、実際に撮影をした時に、私たちが思い描いて計画したものを100%どころか1000%得られた」と本作の出来に自信を覗かせる。このようにして、『FARANG/ファラン』の斬新でリアルなアクションシーンは作られていき、観る人を感心させるだけでなく、感情を刺激するものとなった。その驚愕のアクションシーンは劇場で確かめてみよう。
『FARANG/ファラン』
5月31日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:クロックワークス
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