『さらば あぶない刑事』から8年ぶりの「あぶ刑事(デカ)」となる『帰ってきた あぶない刑事』が5月24日(金)より全国公開される。舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオルらおなじみの面々に加えて、土屋太鳳ら新メンバーを迎えた最新作のメガホンを取ったのは新鋭・原廣利監督だ。令和の世に帰ってきた「あぶ刑事」。“らしさ”満載でありながら、新たなチャレンジも詰まった本作について話を聞いた。(取材・文/SCREEN編集部)

「あぶない刑事」としては新しい“家族愛”という要素

――先に試写で拝見させていただきましたが、8年ぶりの「あぶない刑事」としての期待を裏切らない作品で劇場での再鑑賞を心に決めました。今回そもそも、どういった経緯で原監督にお声がかかったのでしょうか。

東映さんの配信ドラマを撮影しているときに同作のプロデューサーの岡部圭一朗さんと「父(原隆仁)が映画監督で『あぶない刑事』のドラマも撮ったことがあるんです」という話をしたんです。その後、2022年ごろに「『あぶない刑事』のプロデューサーも交えて食事でもしませんか?」という話になりまして、行かせていただいたらその場でオファーされました。「何言ってるんだ、この人」と思いましたね(笑)。急なお話で辞退しようかとも思ったんですが、せっかくなので飛び込んでやらせていただくのも面白いのかなと。最初は少しビビっていたのですが、こんなこと一生に一度もないなと思って「やります」とお返事しました。

画像: 原廣利監督

原廣利監督

また、後々聞いたんですけども、(仲村)トオルさんと作品を作ったのも大きかったのかなと。「八月は夜のバッティングセンターで。」というドラマでご一緒しまして、衣装合わせの際に「原隆仁の息子なんです」とお話したら「原監督の息子さんが監督やってるんだ!」と驚いてくださって。トオルさんが東映さんにも「原監督の息子が監督をやっている」というお話をしてくださっていたようです。その縁も大きかったのかなと思います。いろんなものが巡り巡ってきたのかなと。

――ご縁がつながっていったのですね。今回の新作製作にあたり何かコンセプトのようなものは事前に提示されたのでしょうか。

脚本家チームとプロットを練り直したり書き直したりして内容はガラっと変えているんですけども、最初に見せてもらった検討稿のようなものの時点でタカとユージの娘かもしれない女性が出てくるのが良いなと思いました。娘を助けていくという話にはドラマがあるなと。「あぶ刑事」として“家族愛”は新しいと思いましたし、彩夏という家族を“助ける”アクションっていうのも今までに無かったんじゃないかなと思ったんです。

――確かに、家族を守るために動くというのは新しいと感じました

人を守るアクションは当然これまでにもありましたが、ここまで親身になれる題材はあまりなかったと思います。

画像: 「あぶない刑事」としては新しい“家族愛”という要素

――“家族愛”という新要素がありつつ、タカ役の舘ひろしさんが作曲したお馴染みのテーマ・ソングから幕が上がり、どこを切っても「あぶ刑事」なのが本作だと思いました。監督として絶対に外せないと思った「あぶ刑事」のポイントはどんな所でしょうか。

やっぱり、舘さんのハーレーだったり、柴田さんの「RUNNING SHOT」といったお約束やアクションは欠かせないです。オープニングは、脚本の段階から、舘さんの作ったメイン・テーマを劇場の爆音で流すとずっと決めていて。ドーンとあの曲が流れて、ファンの方に一気にアドレナリンを上げてもらって、そのまま作品を観ていただく、という風にしたいと思っていました。

ただ、ファンの人にはもちろん喜んでいただきつつ、「あぶ刑事」を知らない世代が観ても楽しめることは念頭にありました。あの曲って結構バラエティ番組とかでも使われていて。僕らの世代や僕らより若い世代もどこかしらで絶対触れていると思うんです。

例えば、「あぶ刑事」オマージュで誰かがサングラスをかけると絶対流れるみたいな。知っている曲が流れると、それだけで安心して盛り上がれると思うんです。

――確かにそうですね。誰でもあの曲を聴けば「『あぶ刑事』始まるぞ!」という気分になると思います。

僕も『トップガン マーヴェリック』であのアンセムがかかった瞬間にアドレナリンが上がって。音楽にはその力があるので、頭のメイン・テーマは外せないポイントでした。

今、自分たちが作るからこその画を

――監督ご自身は再放送などで「あぶ刑事」に触れられてきた世代とのことですが、シリーズの魅力をどんなところに感じていましたか。

やっぱりライトなところがいいですよね。舘さんも仰ってたんですが、湿っぽくない、悲壮感がない。エンタメとして素晴らしいなと思います。(柴田)恭兵さんも仰ってましたね。良い意味でライトで「気にしない!」というか。

画像1: 今、自分たちが作るからこその画を

あと「あぶ刑事」っぽさと言えば、スタイリッシュさ、アクションコメディ。それらも絶対損なっちゃいけないですし、それとサングラスですかね。元祖だと思います。多分どんなドラマでもサングラスをかけるシーンを見ると「『あぶ刑事』だ!」ってなりませんか?(笑)

――確かに頭をよぎります(笑)。仰っていた「あぶ刑事」らしさが存分に詰まっていながらも、ルックの面ではシャープで「今っぽさ」のようなものを感じました。撮影はどんな方向性で進めたのでしょうか。

カメラマンの佐藤匡は僕の大学の同級生で、自主映画を一緒に撮ったり、ドラマでも組んでいて。彼は今の技術に精通していて体現しているカメラマンなんですけども、今回は「昔を追いすぎるのも良くないから、今僕らが作るからこその画はしっかり作りたいね」と話をしました。シャープな感じも僕らが今までやってきた事を考えると、そうなるかなと。

シリーズ通して初のシネスコサイズで撮影するのも自分達なりの面白さを追求するという意味でも挑戦でした。

とはいえ、第一優先はお芝居です。「こう撮りたいんだ」というものも当然ありますが、あまり狙いすぎない。どうアプローチするかは2人ですごく考えましたし、佐藤とは撮影前から撮影中もずっとコミュニケーションを取っていたので、そこはすごくやりやすかった部分です。

――機材周りはいかがでしょうか。

機材でいうと、カメラカーにジンバルを付けて、舘さんのハーレーに並走したり。スピード感を乗せて撮るためにとカメラカーも思いっきり走らせてバイクについていきました。

画像2: 今、自分たちが作るからこその画を

舘さんからは、「『あぶない刑事リターンズ』のこの部分を観てほしい」とお話がありました。伊原(剛志)さん演じる敵を撃ち抜いて横転させるシーンで、それが舘さん史上一番お気に入りのシーンとのことで。

実際にそのシーンを観直してみると、舘さんとハーレーを望遠で狙って、迫ってくる様が良いなと。かなり攻めているなと(笑)。どういうカットが良いかは常に話し合いながら臨機応変に進めましたね。

さよならともバイバイとも言わないのが「あぶ刑事」らしさ

――ドラマシリーズ開始から38年、ヨコハマの街も人も変化しました。ですが、そこでも相変わらずカッコいいタカとユージ。変わらない、けども良いものがある、というのが本作のテーマのひとつだと感じました。監督から見たタカとユージの魅力とはどんなところでしょうか。

テーマはそのとおりです。タカとユージの魅力は、差が激しいというか。カッコいい時はカッコいいし、ダサい時はダサい(笑)。ダサいを言い換えると“キュート”で、そこに人間味が溢れている。(血の通った)人を見ている、という感じがしますよね。こういう人に会ってみたいなと思うじゃないですか。

――こんな先輩がいてくれたらなとは思います(笑)。今回の作品では、プライベートの部分が見えたり、過去が掘り下げられたりと、タカとユージの内面に大きく踏み込んでいるのも新しいですね。

今回、内面に入っていくということを僕はやりたいなと思っていて。岡(芳郎)さんの脚本の骨組みの段階から、人情とかプライベートに踏み込む瞬間はあって、その部分を強めていった感じですね。

――思い返してみると、映画の前半では、そうした家族の話やプライベートな一面が描かれつつ、アクションシーンは少な目ですが、しっかり「あぶ刑事」でした。

後半にアクションシーンを集中させるのは意識したところですね。ただ、前半がだるくなってしまうのももちろん嫌なので、物語の求心力を保つというところも気を使いました。(土屋)太鳳さんや吉瀬(美智子)さん、(岸谷)五朗さんだったり、早乙女(太一)さん、西野(七瀬)さん、深水(元基)さんたちのお芝居が、周りのキャラクターたちをそこに存在させてくれたので物語性が増したと思います。

――確かに皆さんが演じられた新キャラクターも個性がそれぞれ立っていて印象にすごく残りました。印象的なところでいうと、ドラマ版の音楽がたくさん流れますね。

「古いと思われるんじゃないか」という意見もあったのですがドラマ版でも使用されていた曲を入れたいと強く思っていました。今の若い人たちが聴いてもすごく心地よい曲になるんじゃないかと。チャレンジではあったのですが、やってみたいなと思っていました。

『またまたあぶない刑事』の「On The Run」は一番良いところで使いたくて。この曲がかかったらアドレナリンが上がるじゃないですか。ファンの方はもちろん、新規の方にも音楽から今までの「あぶ刑事」に触れていただくきっかけにもなったら良いなとも思っていました。分け隔てなく楽しんでいただけるのが一番良いなと。

画像: さよならともバイバイとも言わないのが「あぶ刑事」らしさ

――音楽から過去作を観返すという流れもあったら素敵ですね。今回はエンディングでドラマ2作目「もっとあぶない刑事」などで使用された「翼を拡げて~open your heart~」が使用されています。「冷たい太陽」にはあえてしなかったのでしょうか。

一番の十八番といえば「冷たい太陽」だとは思いますが、今回の作品はハードボイルドな要素が強いので最後は湿っぽく終わりたくなかったんです。僕は再放送世代なのですが、「冷たい太陽」を聴くと、あ、終わっちゃったと少しく悲しくなるんです(笑)。「翼を拡げて」のほうがノリ良く終われるなと実感がありました。勢いよく、気持ちよくそのまま映画館を出てほしいなと!これが最後かどうかはわからないですが、さよならともバイバイとも言わないのが「あぶ刑事」らしさなんじゃないかなと。

――最後に一つだけ質問させてください。ユージが洗濯している描写があるのですが、監督の中でタカとユージの家事分担はどのようにお考えですか?

家事の分担!(笑) 基本、ユージがやってるんじゃないですかね。掃除、洗濯、たぶん料理もユージ。オフィスのフロアなんかはユージのテリトリーというイメージがあります。たまにユージに怒られて「わかったよ、やるよ」ってタカが仕方なくやるような感じで(笑)。タカは外に出てうろうろしちゃいますから。自分の部屋だけは綺麗にしてそうな感じがします(笑)。

PROFILE
原廣利 HIROTO HARA

2011年よりBABEL LABELの映像作家として活動を開始。現在は映画・ドラマを中心に活動。広告映像のディレクションも行う。撮影監督を務めることもある。「あぶない刑事」テレビシリーズ第31話「不覚」で監督した原隆仁監督を父に持つ。手掛けた作品に、「100万円の女たち」(17)、「日本ボロ宿紀行」(19)、「RISKY」(21)、「八月は夜のバッティングセンターで。」(21)、「真夜中にハロー!」(22)、「ウツボラ」(23)などのドラマ作品のほか、映画『朽ちないサクラ』が6月21日(金)に公開。

『帰ってきた あぶない刑事』
5月24日(金)全国公開

監督:原廣利
脚本:大川俊道、岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ

配給:東映

<キャスト>
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会

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