〈当事者の心〉で追うか、〈よそ者の目〉で追うか…
“抜け出せない万華鏡のような心理戦”に誘う衝撃作
本作は、全米にかつてない程の衝撃を与えた、90年代に実際に起きた13歳少年と36歳女性のスキャンダル（“メイ・ディセンバー事件”）の真相を、様々な角度から見つめる心理ドラマ。唯一無二のセンセーショナルな脚本が一躍脚光を浴び、海外の有力媒体で2023年ベスト映画として選出、第34回インディペンデント・スピリット賞ほか多数の賞レースで脚本賞を受賞、さらに本年度アカデミー賞®で脚本賞にもノミネートされる快挙を果たした。
『エデンより彼方に』『キャロル』など甘美な世界観と複雑に交錯する人間模様を映し出し多くの映画ファンを虜にしてきたトッド・ヘインズが、ナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーアという豪華オスカー女優を迎え、過去と現在、真実と憶測が混ざり合う心理戦を描き出す。グレイシーとジョー、ふたりの関係は犯罪だったのか、純愛だったのか、はたまた他に真実があったのか…。
トッド・ヘインズ監督「彼（メルトン）しかいないと感じたよ」
かつて全米に衝撃を与えた、36歳の女性と13歳の少年との不倫スキャンダル。女性は当然逮捕されたが、獄中でふたりの間の子を出産し、出所後には晴れて結婚に至る。その一連の出来事は、長期に渡ってメディアで取り上げられ、彼らの一挙手一投足が連日報道された。それから23年後――。事件は映画化されることになり、平穏に暮らしていた夫婦のもとに女優が訪ねてきたことで、これまで照らされることのなかった闇の部分が徐々に明るみになっていく……。
本作で、ジュリアン・ムーア演じるグレイシーの夫で、元“13歳の少年”ジョーを演じたのが、新星チャールズ・メルトンだ。ドラマ「リバーデイル」シリーズで人気を集め、映画『サン・イズ・オールソー・ア・スター 引き寄せられる２人』（19）で初主演を飾り、ハリウッドのティーン向けロマンス映画をリードした初のアジア系アメリカ人俳優となる快挙を果たした。
本作では、ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーアという豪華オスカー女優と並ぶメインキャストに大抜擢。ふたりに引けを取らない圧倒的な存在感を見せつけ、全米批評家協会賞やニューヨーク映画批評家協会賞などで最優秀助演男優賞を受賞。さらに、本年度ゴールデングローブ賞では、ロバート・ダウニーJr.、ロバート・デ・ニーロら錚々たる顔ぶれのなか助演男優賞にノミネートされ、賞レースを賑わせた。
8週に渡るオーディションの末、見事ジョー役を勝ち取ったメルトン。「彼がドアから入ってきた瞬間に思ったのよ。彼こそ私たちのジョーだって。でもそれを決めるのはトッドだから黙っていたけれど、彼に決まることを祈っていたわ」。世界三大映画祭でそれぞれ女優賞を獲得している、言わずとしてた大女優ジュリアン・ムーアにそう言わしめた。
ナタリー・ポートマンは、「彼は演技への準備が万全で、自信があって堂々としてるけど同時に謙虚でもあって。きっと大物俳優になるでしょう」と太鼓判！
トッド・ヘインズ監督もまた、「オーディションで台詞を読んでもらい、彼の控えめな演技に驚かされた。僕の理解を超えていて、ジョーという人間、彼の“空白だった部分”を埋めてくれる気がしたんだ。その後何度も思い返し、彼しかいないと感じたよ」とメルトンの抜擢を確信した経緯を明かしている。そして、こう続ける。「今の結婚生活に縛られ、抜け出せない人物をチャールズは見事に描写してくれた。自力で人生を歩む方法をジョーは知らなかったんだ」。
幼くして世間の好奇の目にさらされ続け、そのまま三児の父になったジョーは、自らの人生を顧みることなく成長をした。いわば、子ども時代を奪われた身だ。そのことについてメルトンは、「彼には次々にやらなければいけないことが出てきて、自分自身に向きあう時間がないままでした。彼は、自分以外のことを優先し、自分が恐れながら生きていることに気づいていません。その生き方しか知らないのですから。彼は常に妻に気を遣いながら生活しています。素晴らしい夫で素晴らしい父親です。ただ、怒りを抑え自分を犠牲にしてきたせいで、彼はどんどん自分を小さくしてきてしまったのです」と自身が演じた役柄を分析する。
劇中でジョーは「人々は、僕を被害者か何かのように見る。でも幸せでなかったらこんなに長く結婚生活は続かない」と吐露する一方で、彼の生い立ちを“物語”と表現したエリザベスに対し「これは僕の人生だ」と激昂する場面もみられ、複雑な心境に揺れ動いていることが伺える。そんな彼が、自分たち夫婦のもとに突如現れ、土足で踏み込むように根掘り葉掘り“リサーチ”をするエリザベスの存在でどう変化していくのか――。その結末はぜひ劇場で見届けてほしい。
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』
7月12日（金） TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給：ハピネットファントム・スタジオ
©2023. May December 2022 Investors LLC, ALL Rights Reserved.
