シュルレアリスムとは何か?─ その深遠なる世界を紐解く、10作品一挙公開!
1924年10月、アンドレ・ブルトンがシュルレアリスム宣言を発表し、20世紀最大の芸術運動、シュルレアリスムが始まった。それから100年。今の時代にも受け継がれているシュルレアリスムとは何か?その深遠なる世界を、シュルレアリスム映画の名作と主要人物にフォーカスしたドキュメンタリー作品で紐解く。
上映ラインナップは、シュルレアリスムや前衛芸術のオールスターが競い合った『金で買える夢』、ルイス・ブニュエルのメキシコ時代の最高傑作と称される『皆殺しの天使』、名匠ルネ・クレール×フランシス・ピアビア×エリック・サティによるダダイズムの短編映画『幕間』、史上初のシュルレアリスム映画『貝殻と僧侶』、シュルレアリスムを主導したアンドレ・ブルトンのドキュメンタリー『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』『野性の目』『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』、シュルレアリスム絵画の理論的支柱であり、変幻自在の芸術家マックス・エルンストのドキュメンタリー『マックス・エルンスト 放浪と衝動』、従来の美術の枠を超えて現代にも大きな影響を与えている画家ルネ・マグリットのドキュメンタリー『謎の巨匠 ルネ・マグリット』、チェコの近代絵画を牽引したトワイヤンのドキュメンタリー『トワイヤン 真実の根源』。(日本初公開作3本、日本劇場初公開作3本)
この度、解禁になるのはシュルレアリスム100周年を飾るのにふさわしい選りすぐりの全10作品7プログラムを収めた予告編映像。
1924年、フランスの詩人、アンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表し、現代文化に幅広い影響をおよぼした20世紀最大の芸術運動、シュルレアリスムがはじまった。第一次世界大戦への抵抗や虚無感から西洋近代の科学、芸術、社会などあらゆる既成の価値観を否定、破壊した芸術運動「ダダ」を発端とし、それを凌駕せんと生まれたシュルレアリスムは、無意識の世界の探求と表出によって人間精神の解放を目指した。
戦間期に生まれたシュルレアリスム運動は拡大していき、1930年代には黄金期を迎えるが、第二次世界大戦の勃発によりシュルレアリストの多くは亡命を余儀なくされる。しかし、それによって、シュルレアリスムの種は世界に撒かれ、各地で独自の発展を見せ、戦後の芸術、文化にも強い影響を及ぼすことになる。日本もその例外ではなかった。そして、100年後。文学、美術、思想など広範な領域にわたったその運動の精神は、今の時代にも生きている。
100周年を機に、改めてその精神の自由と解放を目指すシュルレアリスムが、世界的に注目を集めている。
≪開催概要≫
名称:シュルレアリスム100年映画祭
期間・劇場:2024年10月5日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催
≪上映プログラム≫
プログラムA 『金で買える夢』
プログラムB 『皆殺しの天使』
プログラムC ダダからシュルレアリスムへ 『幕間』『貝殻と僧侶』
プログラムD アンドレ・ブルトン ドキュメンタリー集
『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』『野性の目』『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』
プログラムE 『マックス・エルンスト 放浪と衝動』
プログラムF 『謎の巨匠 ルネ・マグリット』
プログラムG 『トワイヤン 真実の根源』
主催・配給:トレノバ 宣伝:大福
≪上映作品概要≫
■プログラムA 『金で買える夢』
1947/アメリカ/80分/英語/カラー/原題:Dreams That Money Can Buy
監督・脚本・編集:ハンス・リヒター 原案:マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダー、ハンス・リヒター
出演:ジャック・ビットナー、ドロシー・グリフィス、マックス・エルンスト、ジョン・ラトゥーシュ
ジョーは家賃の支払いに悩む平凡な男。ある日、人の頭の中を見ることができる能力を持っていることに気づいた彼は、ビジネスを立ち上げ、欲求不満や不安を抱える人々にオーダーメイドの夢を売りはじめるが…。本編に登場する7つの夢は、マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダー、ハンス・リヒターがそれぞれ原案を創作。シュルレアリスムや前衛芸術のオールスターが競い合うだけでなく、夢のパートの音楽にはジョン・ケージやポール・ボウルズも参加。若き日のスタンリー・キューブリックのエキストラ出演も。
■プログラムB 『皆殺しの天使』
1962/メキシコ/95分/スペイン語/B&W/原題:El angel exterminador
監督・脚本:ルイス・ブニュエル 撮影:カブリエル・フィゲロア
出演:シルビア・ピナル、エンリケ・ランバル、ジャクリーヌ・アンデレ、ルシー・カリャルド、
エンリケ・G・アルバレス
ある夜、ブルジョアの邸宅で晩餐会が催される。会がはじまると、使用人たちは次々と姿を消し、執事一人が残される。晩餐を終えた招待客は、客間に腰を落ち着かせるが、夜が明けても全員が帰る方法を忘れたかのように何故か外に出ることができなくなってしまい、ついには食料も底をつき…。人間の基本的な欲求が満たされなくなるにつれ、彼らの社会性は急速に崩壊していく。解読不能な夢のようなイメージを次々と登場させブラックユーモアたっぷりに描いた本作は、ブニュエルのメキシコ時代の最高傑作と称される。第15回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞。
■プログラムC ダダからシュルレアリスムへ
『幕間』
1924/フランス/22分/B&W/原題:Entr’acte
監督・脚本:ルネ・クレール 脚本:フランシス・ピカビア
音楽:エリック・サティ
出演:ジャン・ボルラン、インゲ・フリス、フランシス・ピカビア、マン・レイ、エリック・サティ、マルセル・デュシャン
『貝殻と僧侶』
1928/フランス/39分/B&W/原題:La Coquille et le Clergyman
監督:ジェルメーヌ・デュラック 脚本:アントナン・アルトー
撮影:ジョルジュ・ペリナール
出演:アレックス・アリン、ルシアン・バタイユ、ジェニア・アタナシウ
『幕間』は、フランシス・ピカビアのバレエ『本日休演』の幕間に上映するために作られた、名匠ルネ・クレールによるダダイズムの短編映画。音楽は20世紀の音楽に多大な影響を与えたエリック・サティが担当。ピカビア、サティに加えて、マン・レイやデュシャンも出演。『貝殻と僧侶』は、歴史上初めてのシュルレアリスム映画。性的な欲望に取りつかれていく僧侶の妄想を幻想的に描いた作品。シュルレアリスムの詩人であり俳優としても知られるアントナン・アルトーの脚本をジェルメーヌ・デュラックが演出。ダダからシュルレアリスムに至る過渡期の2本を1プログラムで。
■プログラムD アンドレ・ブルトン ドキュメンタリー集 ※日本劇場初公開
『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』『野性の目』『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』
2003/フランス/63分 (『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』27分、『野性の目』25分、『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』11分)/フランス語/カラー/原題:André Breton malgré tout/L'œil à l'état sauvage/Hôtel Drouot, March 31st 2003
監督:ファブリス・マゼ
シュルレアリスムを主導した詩人・作家であるアンドレ・ブルトンの活動の軌跡を追ったドキュメンタリー『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』、彼が生涯をかけて集めたコレクションで満たされた伝説のアトリエの映像と彼の肉声によって、追い求めていたものに迫る『野性の目』、パリのオークションハウス「オテル・ドルーオ」にて、2003年に開催されたブルトンのコレクション展の開幕直前に展示室を撮影し、コレクション散逸前の全貌を記録した『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』。ブルトンの思考、思想を深掘りする3つのドキュメンタリーを集めたプログラム。
■プログラムE 『マックス・エルンスト 放浪と衝動』※日本初公開
1991/ドイツ/100分/英語、ドイツ語/カラー/原題:Max Ernst: Mein Vagabundieren – Meine Unruhe
監督:ピーター・シャモーニ
出演:マックス・エルンスト 声の出演:ピーター・マリンカー、シェリー・トンプソン、リンダ・ジョイ
シュルレアリスム絵画の理論的支柱であり、フロッタージュやデカルコマニーといったオートマティスムの技法を駆使して多様な作品を創造した、変幻自在の画家・彫刻家マックス・エルンスト。ドイツ出身の彼は第一次大戦への出征、レオノーラ・キャリトン、ペギー・グッゲンハイムらとの恋愛や別れ、第二次大戦時の迫害と亡命、ブルトンとの確執など波乱の人生を送った。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞監督ピーター・シャモーニが、エルンストのインタビューや創作活動の貴重な映像、彼と30年連れ添ったドロテア・タニングや周囲の人々の証言などによって、その革命的な精神や創造的な思考に迫る。
■プログラムF 『謎の巨匠 ルネ・マグリット』※日本初公開
2023/フランス/139分/フランス語/カラー/原題:René Magritte, le maître du Mystère
監督:ファブリス・マゼ
出演:ルネ・マグリット、ジャック・ロワザン、リリアン・サバティーニ、グザヴィエ・カノンヌ
シュルレアリスムを代表する画家の一人、ルネ・マグリット。「言葉とイメージ」の関係を探求し、絵画に哲学的要素を取り入れた彼の表現は、従来の美術の範疇にとどまらず、ポップアートやコンセプチュアルアート、広告デザイン、思想家などにも大きな影響を与えた。本作は、ベルギーでの幼少期から、デ・キリコの絵との出会い、パリのシュルレアリストたちとの交流、ブリュッセルでの国際的成功、第二次大戦期の苦境と戦後の新たな活動まで、マグリットの映像と作品もふんだんに使ってその足跡を追い、作風を移行させながら独自の世界を築いた彼の知られざる複雑な個性に迫る。
■プログラムG 『トワイヤン 真実の根源』※日本初公開
2015/フランス・チェコ/93分/フランス語/カラー/原題:Toyen, the origin of truth
監督:ジュリアン・フェランドゥ、ドミニク・フェランドゥ
出演:アニー・ル・ブラン、アンナ・プラヴドワ、フランソワーズ・カイユ、ジョルジュ・ゴルドフェン
チェコの近代絵画、シュルレアリスムを牽引したトワイヤン。本名はマリー・チェルミーノヴァ。トワイヤンという通称は、仏語で「市民」という意味の単語"citoyen"に由来する。人一倍の好奇心と探究心を持つ彼女は、大戦や共産党政権の台頭など激動の時代の中、芸術活動に取り組み、独自の表現方法を切り拓いた。サーカスや遊園地など娯楽のスケッチから始まる画家の道、画家・詩人のインジフ・シュティルスキーとの協業、「人工主義」の標榜、エロティシズムへの傾倒、シュルレアリスムへの接近、ブルトンやエリュアールらとの親交など、彼女の人生と表現について、丹念に掘り下げていく。