近年の傑作アクション映画の裏には“87”あり!87イレブン・アクション・デザイン&87ノース・プロダクションズについて解説!(文・神武団四郎/デジタル編集・スクリーン編集部)
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はじまりのきっかけは「マトリックス」シリーズ

画像: パリで『ジョン・ウィック:コンセクエンス』撮影中のチャド・スタエルスキとキアヌ・リーヴス Photo by Murray Close/Getty Images

パリで『ジョン・ウィック:コンセクエンス』撮影中のチャド・スタエルスキとキアヌ・リーヴス
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『デッドプール2』や『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』など大ヒット作を連発しているデヴィッド・リーチ。アクション映画を牽引する彼が設立した設立した制作会社が87ノース・プロダクショズだ。2019年設立とその歴史は浅いが、伊坂幸太郎原作の『ブレット・トレイン』や全米で大ヒットしている最新作『フォールガイ』など個性派作を輩出し、存在感を放っている。

そんな87ノースの原点が、リーチがスタントマン時代にチャド・スタエルスキと立ち上げたスタント会社87イレブン・アクション・デザインである。「ジョン・ウィック」シリーズのスタエルスキの87イレブンと、リーチの87ノース。スタントマン出身監督のふたつの“87”は現在アクション映画の台風の目というべき存在なのだ。

スタエルスキとリーチが87イレブンを設立したのは1997年のこと。きっかけは「マトリックス」シリーズへの参加だった。シリーズの武術指導を務めたユエン・ウーピンと仕事をしたふたりは、俳優のトレーニングからコレオグラフまで的確にこなすウーピンと香港から来たアクションチームに触発され、チームで活動すれば常に技術を磨き人材育成も可能、大がかりなプロジェクトにも柔軟に対応できると考えた。リーチは87イレブンを「香港アクションのハリウッド版」と呼んでいた。ちなみに数字が並んだその名称は、ロサンゼルスに構えた彼らのオフィスのルーム番号8711からの命名だ。

スタエルスキ&リーチの信条は“ストーリーを盛り上げるアクション”

87イレブンにとって転機になったのが『300 〈スリーハンドレッド〉』だった。この作品でスタント、ファイトコレオグラファーを務めたスタエルスキは、プリプロ段階から参加し、リーチと共に俳優たちのトレーニングを担当。体作りからアクションの構成・演出まで、ワンストップで手掛ける87イレブンのスタイルを確立させた。その後彼らは『ボーン・アルティメイタム』や『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』、『ニンジャ・アサシン』、『エクスペンダブルズ』、『ハンガーゲーム』など多くの作品でスタント・コーディネーターや第2班監督を担当。無二の存在として映画界で存在を高めていった。スタエルスキとリーチの信条は、ストーリーを盛り上げるアクションを作ること。そのために積極的に映画に関わり、撮影監督と密に連携しながら作品にふさわしいアクションをデザインしていった。そんな彼らの思いが結実したのが『ジョン・ウィック』だった。キアヌ・リーヴスと彼のスタントダブルをしてきたスタエルスキの信頼関係で実現したこの作品は、多彩なアクションでストーリーをつないでいく彼らのキャリアの集大成。1作品に監督は1人という全米監督協会の規則でスタエルスキ監督作とされたが、本作によってふたりはスタントパーソンの枠を超え、映画作家としても認知されることになったのだ。

その後スタエルスキはスタント・コーディネーターや第2班監督として活躍しながら「ジョン・ウィック」シリーズを監督。「るろうに剣心」シリーズの谷垣健治を『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』に推薦するなどスタント界の活性化にも積極的だ。いっぽう早い時期より監督を志向していたリーチは、軸足を監督業にシフト。シャーリーズ・セロンの依頼で『アトミック・ブロンド』で一本立ちデビューをした後は、瞬く間に人気監督に上り詰めた。19年には妻で映画プロデューサーのケリー・マコーミックと87ノースを設立。監督業のほか『Mr.ノーバディ』や『バイオレント・ナイト』など個性派アクション映画のプロデュースも手掛けている。

現在は本格的なトレーニング施設を併設している87ノースと、スタントとは別に制作部門87イレブン・エンタテインメントを立ち上げ作品制作に本腰を入れている87イレブン。スタエルスキとリーチは競うようにアクション映画を盛り上げている。彼らのもとから巣立ったスタントパーソンも活躍中と、87の快進撃はさらに勢いづいている。

CHECK 1  あらゆる分野の精鋭が集結

87イレブンのメンバーは古武術をはじめいくつもの挌闘をマスター。作品に合わせて独自の挌闘術も開発している。さらにワイヤー、操縦・運転、火炎などスタント各分野のエキスパートも揃い、あらゆる要求に対応可能だ。

CHECK 2  最新の視覚効果も駆使

スタントと視覚効果を組み合わせた『マトリックス』を経験した彼らは、ワイヤー消しから顔の入れ替えまであらゆる映像テクノロジーを駆使したアクションをデザイン。安全性を高める意味でも視覚効果と積極的に連携している。

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