(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
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もしも熊が人間が落とした大量のコカインを摂取したら
『コカイン・ベア』(23)
最近の日本でもこれまで見ることのなかった地域で熊が出没し被害者が出ているが、この作品も熊との遭遇で襲われる人々の恐怖を描くと同時に、この熊が人間が落とした大量のコカインを接種していたら?という実際にあった事件を基に作られている。実際の事件では熊が死んでいるが、映画では攻撃的になりキャンパーや警察、一般人まで次々襲いかかる。森林パニック篇でもあるが、人間の愚かさを風刺してコミカルな描写も散見される。
悪魔と恐れられたライオンが医師親子を襲う!
『ビースト』(22)
休暇でアフリカのサバンナにやって来たネイト医師(イドリス・エルバ)と2人の娘。そこで待っていたのは、密猟者のせいで人間を憎むようになった凶暴なライオンだった…。現地民から「ディアボロ(悪魔)」と恐れられるこの大型ライオンは、まるで『ジョーズ』のサメのように人に忍び寄り、体を引き裂いて殺すマシーンと化している。ネイトは娘たちを守るためにこの悪魔と対峙することになるが、ライオンの怒りを鎮めることはできるか?
雪原に不時着した男たちに狼の群れが迫る
『THE GREY 凍える太陽』(12)
アラスカの雪原に石油採掘現場で働く男たちが乗った輸送機が墜落。数名の生存者たちは生き残るために南へ向かうが、途中その地を縄張りとする凶暴なオオカミの群れが彼らを狙う。しかも野性のオオカミたちは人間と知恵比べをするかのように狡猾。大自然の猛威もあって人間は一人また一人と消えていく…。リーアム・ニーソンがサバイバル能力のあるリーダーを演じるが、そんな彼をしてもオオカミの怖さの方が勝るような演出が巧い。
平穏な村の静寂を引き裂いたのは人食い猪
『人喰猪、公民館襲撃す!』(09)
韓国の平穏な村の山奥でズタズタに引き裂かれた死体が発見される。それは人間が犯したものではなく、人食い猪のチャウによるものだった。犠牲者は続き、のどかな村の様子は一変してしまう。一頭の猪が捕獲されるが、チャウはまだ生きており、公民館に集まった人々を血祭りにあげる…! 韓国の農家では時に猪が人を攻撃するという。猪はCG、アニマトロニクス、着ぐるみスタントと三つの違った技術を組み合わせて撮影されている。
ハリケーンの夜、家の中に虎が侵入してきた…
『バーニング・ブライト』(10)
家の中に突然獰猛な虎が現れたら? というシチュエーション映画。母を亡くし、自閉症の弟トムの面倒を一人で見ている姉のケリー。ところが義父が自宅の庭をサファリパークにするという名目で本物の虎を連れてきたことから、あるハリケーンの夜、密室化した家の中に虎が侵入してしまう。姉弟の運命は? 低予算映画ながら実際にシベリアン・タイガーを3頭使って撮影されたというだけあって、リアリティーのある緊迫感が迫る。
ドーベルマンを使った銀行強盗は成功するか
『ドーベルマン・ギャング』(72)
人間に忠実で賢い犬のドーベルマンを使って、銀行強盗を企む人間たちの物語。人間は完璧でないのでドーベルマンなら完全犯罪が行えるかもと考えた若者たちが、6頭の犬たちを集め、訓練を経て奇想天外な強盗を実行するが…。人間に仕込まれたドーベルマンは銀行員や客を威嚇して大金を奪うが、映画自体は犬たちを悪者に描いておらず、訓練シーンや結末などでユーモアや皮肉も込められているところが受け、続編も製作されている。
湖に隠れていたのは大きすぎるワニだった
『U.M.A. レイク・プラシッド』(99)
U.M.A.とは、イエティなど未確認生物のことだが、本作に登場する生物は巨大なワニ。米メイン州の湖で、ダイバーが何かに食いちぎられる事件が発生。ニューヨークから調査にやってきた女性研究者(ブリジット・フォンダ)たちが謎めいた生物の捕獲作戦を開始すると、彼らの前に出現したのは大きすぎるワニだった。特殊効果はスタン・ウィンストンの担当で、オチに意外性もあり、観客の受けが良かったためシリーズ化された。
想像を絶する巨大アナコンダが襲い来る!
『アナコンダ』(97)
南米アマゾンに伝説のインディオを求めやってきた映画撮影隊が、途中で遭難者サローンと遭遇。彼を救った一行だが、実はサローンはアナコンダの密猟者だった。そこにオオアナコンダが出現するや本性を表わすサローンに撮影隊は支配される。一行は超大型アナコンダとサローンの二つの恐怖に晒されることに…。アナコンダは人間だけでなくジャガーなども捕獲。シリーズ化されるほど大ヒットしたが、ヘビが嫌いな人には無理かも?
野牛狩りの名人が巨大バッファローに挑む
『ホワイト・バッファロー』(77)
西部一の野牛狩りの名人といわれるワイルド・ビル・ヒコック(チャールズ・ブロンソン)は、唯一捕獲できなかった巨大なホワイト・バッファローの悪夢に悩まされる日々が続いていた。意を決した彼は友人のゼーン、一族をこの巨大野牛に殺されたクレージー・ホースと共にモンスター級バッファローを倒すことにする。「白鯨」のバッファロー版のような設定で、西部史に登場する実在のキャラも出てくることが興味深い異色ウエスタン。
妻子を殺されたオスのシャチが復讐を誓う
『オルカ』(77)
オルカとはシャチの学術名Orcinus orcaから来ている。ここではシャチが人間同様に知性と感情を持つ生き物として描かれている。人間によって子供を妊娠中のメスを殺されたオスのオルカが番いのメスを殺した船長に復讐を敢行する。単純な動物パニック映画ではなく、仇を追い詰めるため計画を練る知性の高い生物と標的となった人間の戦いが描かれる。出演はリチャード・ハリス、シャーロット・ランプリングらの名優という点も見どころ。
スピルバーグ監督によるサメ映画の金字塔
『ジョーズ』(75)
今も人気の高いジャンルの一つ、サメ映画のブームを生んだ最初の大ヒット作品にして、スティーヴン・スピルバーグ監督の名を世に知らしめた名作。夏の観光で栄える街アミティビルの入り江に巨大な人食い鮫が出現。犠牲者が相次ぎ、人間の味を覚えた鮫退治のために“オルカ号”の船長クィント、警察署長ブロディ、海洋学者フーパーが海に出る。前半はサスペンスで、後半はやるかやられるかのアクション。来年は製作から50周年となる。
動物一斉攻撃編
アニマル・パニック映画には、一種類の動物だけでなく複数種類の動物が一斉に登場するタイプの作品もある。例えば『アニマル大戦争』(77)ではオゾン層の変異によりシェラ山脈に生息する動物たちが一斉に凶暴化。登山ガイドとハイカー集団に襲いかかる。その動物たちは熊、ピューマ、鷲、蛇、犬などなど。『グリズリー』のスタッフが作り上げた異色編だ。またイタリア映画『猛獣大脱走』(83)では動物園内の動物たちが揃って脱走、人間を襲い始める。その原因は動物たちの飲料水にある薬物が混入していたせいだった。脱走するのは、象、虎、豹、シロクマ、ライオンなど。
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