お互いに2度のオスカー受賞という名優マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンが『愛と哀しみのエリザベス（原題:THE ROMANTIC ENGLISH WOMAN）』（75）以来50年ぶり2度目の共演にして、2度目の夫婦役を演じ話題になり、本国イギリスで興行収入10億円超えの大ヒットを記録した『The Great Escaper（原題）』。グレンダは映画公開前の2023年6月15日に輝かしい女優人生に幕を閉じ、そして、マイケルも本作で華麗なる俳優人生に幕を下ろすことになった心温まる名作が、邦題『２度目のはなればなれ』として公開される。
本作は89歳の退役軍人が6月ノルマンディ上陸作戦70年記念式典に参加するため、老人ホームを抜け出した実話を基にした作品。『ハンナとその姉妹』（87）『サイダーハウス・ルール』（00）で２度のオスカー受賞したマイケル・ケインが主演を務め、本作で引退することを表明している。約70年にわたり180本近い映画に出演してきた彼の、華麗なる俳優人生に幕を下ろす“引退作”だ。そして共演には、『恋する女たち』（69）『ウィークエンド・ラブ』（74）で２度のオスカー受賞したグレンダ・ジャクソン。全英公開を控えた去年2023年6月15日、87歳でこの世を去り、輝かしい女優人生に幕を閉じた。名優2人の最後の共演となる本作は、観る者にとって忘れられない感動を刻む心温まる名作となるだろう。
南ロンドンで生まれたマイケル・ケインは、1956年、『韓国の丘』の脇役として23歳にしてスクリーンデビュー。その後下積み生活を重ね、1966年に公開されたコメディドラマ『アルフィー』で主演男優賞候補となり、スターダムへ駆け上がると、数々の出演作を経て20年越しで『ハンナとその姉妹』（1986）でアカデミー賞助演男優賞を受賞。『サイダーハウス・ルール』（1999）でも助演男優賞を受賞するなど、マイケルはオスカーに計６回ノミネートされる常連俳優となった。2000年には演劇界の功績などを讃えられエリザベス女王からナイトの勲章を授与された。
マイケルのすごさは、その受賞歴もさることながら、出演作がとにかく多いこと。出演、声優作品はじつに180本近い。スケジュールと出演料の都合さえ合えば作品を選ばないという役者魂の持ち主だ。日本でも多くの作品が公開されたが、クリストファー・ノーラン作品の常連俳優としてマイケルを知ることになった映画ファンも多いだろう。シリアスな役からコメディでの好色でとぼけた役までその演技の幅は広く、老若男女に知られる俳優として君臨している。
一方のグレンダ・ジャクソンは、イギリスから離れることなく、ほとんどの作品を母国で制作しながらも、1969年『恋する女たち』と1973年『ウィークエンド・ラブ』でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、国際的な評価を得た。外国人が外国映画で主演賞を二回受賞したのはグレンダ・ジャクソン一人だけという、真の英国の星（スター）である。
グレンダ・ジャクソンのすごさを語る上でもう一つ欠かせない事実は、政界にも進出していたこと。アカデミー賞女優になったにも関わらず、マーガレット・サッチャーへの強い反発から女優業を引退し56歳の時に政界入りを果たした。
政治家としてのキャリアをスタートさせたグレンダは、トニー・ブレア首相の下で運輸政務次官に就任。10年から15年まで、選挙区の境界変更によりハムステッド・アンド・キルバーン選出の労働党議員を務めた。その後80歳の誕生日を目前にして女優業を再開！ピューリッツァー賞受賞作、ミュージカル『幸せの背くらべ』に出演し、なんと2018年御年82歳でブロードウェーのトニー賞を受賞するなど、幾つになっても才能にあふれパワフルに活躍し、人々に感動を与えてきた。
マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンという、英国のみならず、映画史に残る名優たちが最後に選んだ映画『2度目のはなればなれ』。本作の監督オリバー・パーカーは「グレンダは芝居っぽさがありながらもとてもリアルに感じ、マイケルは映画スターの風格を漂わせながらも、地に足がついた安定感がある。彼は少ないセリフで多くを伝えることのできる映画界の名優中の名優です。」と語っている。笑いと涙、そして心温まる出会いに満ちており、観る者に深い感動を与える、心に残る一本となったキャリアの集大成、『２度目のはなればなれ』は映画ファンならずとも必見の作品だ。
『２度目のはなればなれ』
10月11日（金）全国ロードショー
©2023 Pathe Movies. ALL RIGHTS RESERVED.
配給：東和ピクチャーズ
