カバー画像:Photo by Jason Mendez/Getty Images
役が決まってから起きている時はずっとカメラを持っていたわ キルステン・ダンスト
──アレックス・ガーランド監督に役をもらった時の状況などを教えてください。
ケイリー・スピーニー(以下ケイリー)「私は以前、監督と『DEVS/デヴス』というドラマで一緒に仕事をさせてもらったのだけど、その時の役は私自身とあまりにかけ離れている役だったの。今回選んでもらえたということは、監督は私のことを信じて危ない橋を渡ってくれたんだと思う。一度組んだ時に生まれたお互いの信頼関係を基にして、うまく協力しあえたわ。監督は脚本家でもあるので、この脚本を読んだ時は感動したわ。実際に撮影した時は、今までにない経験ができて、映画の内容と違ってとても楽しかった。本当に恵まれていたと思います」
キルステン・ダンスト(以下キルステン)「初めに脚本を読んだ時、心をわしづかみにされるようだった。以前からアレックス(監督)の脚本のファンだったの。だからこの企画の話をもらった時は、『リーの役がもらえますように』って祈ったわ。返事が来るまでかなり待たされたのよ!(笑)」
ワグネル・モウラ(以下ワグネル)「僕は『DEVS/デヴス』のキャスティングの時に一度アレックスと会ったことがあるけど、その時は役をもらえなかったんだ。今度は彼とZOOMで話をして、率直に役を依頼してくれた。三日くらい待たされ心配したけど、『君しか考えられない』と言ってもらえて『やった!』という気分だった(笑)。脚本も最高で、僕の好みのタイムリーな政治的映画だった」
ジャーナリストに対して尊敬の念が湧いて来たわ ケイリー・スピーニー
──皆さんジャーナリストという役柄ですが、役作りにはどんなことをしましたか。
ケイリー「フォトジャーナリストの役だけど、ジャーナリズム全般を学んで、リサーチの日々はとても充実していた。著名なジャーナリストたちに尊敬の念が湧いてきたわ。ドン・マッカラン、リー・ミラー、リンジー・アダーリオ、メリー・コルヴィンのドキュメンタリーをみんなで見たのも良かった。彼らの抱える問題や人間関係、会話も勉強になった」
キルステン「そうね、リーの役が決まってすぐにアレックスから彼女用のカメラを借りて、写真を撮り始めたわ。起きている間は常にカメラと一緒だった。カメラがないと不安になるくらい(笑)。リーになるためのリサーチも自分でやったけれど、ケイリーとワグネルと一緒にドキュメンタリーを見て、『メリー・コルヴィンの瞳』という作品にインスパイアされたわ。ロシア映画の『炎628』という作品も印象的だった」
ワグネル「僕は戦場での感覚がどういうものか知りたくて、何人かのジャーナリストから話を聞いた。2人と見た映画では撮影の直前に見た『炎628』があまりに衝撃的で、キルステンが一度上映を停止したんだ」
キルステン「とても残酷な子供に関するシーンがあったの。息子を生んでまもなくだったから心が痛んだわ」
ワグネル「一緒に見られて良かった。それとリハーサルでなくみんなで本読みをして、お互いに質問しあったり、意見交換したのも良かったな」
分断について話し合いをするきっかけになる映画だ ワグネル・モウラ
──この映画にも強烈なシーンが多いですが、3人でどう準備をしましたか。
ケイリー「なにか準備できるような撮影現場ではなかったのだけど、時間軸通りに撮影できたのは助かったわ。連日時間通りに撮影が進んだおかげで次のシーンへの心構えができたわ。撮影が進むとともに物語に浸れて成長することができたと思う」
──ワグネルはドラマ「ナルコス」でも人間性や暴力と向き合っていたんですよね。
ワグネル「麻薬王のパブロ・エスコバルを起点に分断されたコロンビアの歴史、それと南米全体の歴史を描いていた。パブロを演じて言語のせいでブラジルが孤立していると感じた。他の国の俳優たちと麻薬ビジネスの話をしたんだけど、麻薬の生産国である南アメリカが打撃を受けている。争いが起きて子供たちが長生きできない。僕はブラジル人で南アメリカの人間でもあるから、本作のような政治的映画に惹かれるんだ。自分でも絶対権力と戦った過去の人々を描く作品を撮影した。物事を学んで良い人間になりたいね。『シビル・ウォー』も分断について話をするきっかけになる映画だ。違う考えの人たちにも届き、タイムリーで強烈な内容だからね」
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
2024年10月4日(金)公開
アメリカ=イギリス/2024/1時間49分/配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ケイリー・スピーニー、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン