『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
分断が内戦に発展するという“起こりそうな”未来を示す衝撃作
今回に限らず、ここ数回の大統領選は明らかにアメリカの社会が“分断”された現実を反映している。この映画はそんな分断が内戦に発展するという、フィクションなのに“起こりそうな”未来を示した衝撃作。50州から成るアメリカの連邦政府から19もの州が離脱。同盟軍がホワイトハウスへ侵攻し、政府軍と激しい戦いを繰り広げるプロセスが、大統領を取材しようとするジャーナリストたちの目線で展開していく。主人公たちが行く先々で出会う人々の行動には、目を疑うような過激なものがあり、いかにも映画的だが、分断を煽る大統領が選ばれたら、これが現実になるかも……というリアルな恐怖感が充満。全米で大ヒットしたのも、アメリカ国民の危機感の表れかも!?
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
10月4日(金)公開/配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY.All Rights Reserved.
『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』
壮大な選挙戦でのシビアな“裏”のドラマ
大統領選では民主党、共和党の候補者指名争いにも大きな注目が集まる。今年の民主党でのバイデン→ハリスという、ギリギリのタイミングでの変更も劇的だった。そんな予備選でターニングポイントとなる日がある。大統領選の年は、2〜3月に各州の予備選や党員集会が集中する“火曜日”があり、そこでの結果が指名争いを大きく左右するのだ。このスーパー・チューズデーなどを背景に、民主党有力候補の選挙スタッフの奮闘や駆け引きを描いた本作。壮大な選挙戦でのシビアな“裏”のドラマで、主演ライアン・ゴズリングが複雑な演技をみせ、監督として演出も冴えるジョージ・クルーニーが有力候補の知事役にハマる。公開当時、一部からジョージ=大統領への待望論も聞こえたほど。
『スーパー・チューズデー 正義を売った日』
Blu-ray:4,180円(税込)/DVD:3,630円(税込)
発売・販売元:松竹
©2011 Ides Film Holdings,LLC
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』
副大統領から大統領になったジョンソンの半生
大統領選では毎回、副大統領候補も話題になる。今年は民主党がウォルズ、共和党はヴァンスを副大統領候補に指名。より多くの層から票を集めるうえで、大統領候補との“バランス”が意識される。重要なのは、大統領が任期中に死亡、辞任した場合、副大統領がそのまま昇格。つまり国のトップを任されること。過去には9回も昇格ケースがあった。1963年のケネディ大統領暗殺事件直後(なんと98分後!)、大統領に就任したジョンソンの半生や素顔に迫ったのがこの作品。大統領予備選でケネディに敗れた屈辱、人気の高かった彼の後を継ぐプレッシャー、ケネディの意志と自身の信条とのせめぎ合い……。ドラマチックな政治家人生で、ウディ・ハレルソンの渾身演技も見もの。
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』
Blu-ray:5,170円(税込)
発売・販売元:ツイン
© 2016 BROAD DAYLIGHT LLC ALL RIGHTS RESERVED.
『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』
今回の副大統領候補ヴァンスの回顧録を映画化
今回の大統領選で最も注目度が集まったのが、この映画かもしれない。共和党トランプ側の副大統領候補に指名された、オハイオ州選出の上院議員、J・D・ヴァンス。彼が若き日を回顧した「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」はベストセラーとなり、大絶賛された。タイトルが示すように、アメリカ中西部の人々の苦境を、自身の家族を中心に赤裸々に描写。2020年のこの映画では、ヴァンスの母親役エイミー・アダムス、祖母役グレン・クローズの演技が高い評価を受ける。恵まれていたとはいえない環境から副大統領候補に登りつめたヴァンス。本作を観れば、その“出世”は感慨深いし、何よりトランプを支持する人たちの気持ちも伝わってくるはず。
Netflix映画『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』
独占配信中
『バイス』
悪名高き“副大統領”チェイニーの実話
副大統領は英語ではバイス(Vice)プレジデント。そのバイスをタイトルにした本作は、アメリカ史上でも最も狡猾で、邪悪(Viceには「悪」という意味もある)な側面もあると言われたディック・チェイニーにフォーカス。9.11同時多発テロによってイラク戦争に踏み切ったブッシュ政権の衝撃の内幕が炙り出されるが、ブッシュによってチェイニーが副大統領候補になることを要請される経緯など、大統領選のパートも生々しい。大統領として頼りない部分もあるブッシュを横目に、副大統領チェイニーの暗躍がブラックコメディのようなノリも入れながら展開。アカデミー賞では作品賞、チェイニー役のクリスチャン・ベールの主演男優賞など8部門ノミネート。
『バイス』
Blu-ray&DVD 発売中
発売元:VAP
©2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
『フロントランナー』
大統領最有力候補者が女性スキャンダルで失脚
選挙で勝利するうえでは、わずかな落ち度が致命的になる。スキャンダルの暴露などは、もってのほか。これが大統領選ともなれば、メディアが躍起になって報道するからだ。1988年の大統領選で、上院議員のゲイリー・ハートは46歳という史上最年少で民主党の大統領候補になると目されていた。ジョン・F・ケネディの再来というほどの人気で、選挙戦をフロントランナーで走っていた彼が、新聞に不倫をスクープされ、一気に支持率が低下。出馬撤退に追い込まれるまでを、本人の苦悩はもちろん、スタッフや家族の実状まで劇的に描いた実録もの。国のトップを選ぶうえで、政策やリーダーシップか、あるいは人柄か、という究極の問題も考えさせる。
『フロントランナー』
Blu-ray+DVD:5,217円(税込)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
© 2018 Front Runner, LLC. All Rights Reserved.
『スイング・ステート』
トランプに敗れた選挙参謀がリベンジに挑む
大統領選を題材にした映画は、どうしてもシリアスな作風が多くなる。そんな傾向に反して、コメディ色を前面に打ち出したのが本作。2016年、民主党のヒラリー・クリントンとの激戦の末に、共和党のドナルド・トランプが大統領選を勝利。クリントン側の選挙参謀ゲイリーは責任を感じ、スイング・ステート(民主・共和の支持が拮抗する州)の町に乗り込み、町長選挙に立候補者を立てる。しかしそこに共和党のライバルが現れ……という、大混乱必至のストーリー。主演のスティーヴ・カレルを中心に、とぼけたギャグも含めて痛快なノリで楽しめる。都市部と地方の人々の価値観の違いなど、今回の大統領選の命運を分けるポイントを発見できる可能性も!
『スイング・ステート』
DVD:3,980円(税込)
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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COLUMN セレブたちの動向が大統領選のカギを握る!? 大統領選2024とハリウッドスター
基本的に民主党支持者が多いハリウッドの世界。今回の大統領選でも、共和党候補のトランプに対し、スターたちから何かと批判の声が上がる。中でも過激なのは、ロバート・デ・ニーロ。5月、NY州の裁判所がトランプに有罪判決を下した際には、裁判所前で「トランプがホワイトハウスに戻れば、自由はなくなる」と猛抗議。トランプも「デ・ニーロは愚か者」と非難合戦に発展した。その後の7月、多くのスターがバイデン支持で一枚岩となる状況に波風を立てたのがジョージ・クルーニー。民主党の大口献金者である彼は、年齢や健康状態への不安から、バイデンに選挙戦を降りるように注文をつけた。ロブ・ライナー監督らがその声に賛同。クルーニーの言動が、カマラ・ハリス新候補者を誕生させる引き金になった。ハリスの出馬によって、アリアナ・グランデ、ケイティ・ペリーら若者に影響力のあるセレブも支持を訴えるように。ビヨンセはハリスの集会で自身の曲の使用を許可した。ハリウッドスターたちの圧倒的支持を受けながら敗れたヒラリー・クリントンの例もあるので、大統領選直前まで他の大物がどんなアピールをするのかに注目が集まる。