2024年に生誕130年を迎えるフランス映画の巨匠ジャン・ルノワール監督の『コルドリエ博士の遺言』『捕えられた伍長』の2作品の4Kレストア版を「ルノワール“新しい波”」(配給:㈱アイ・ヴィー・シー)と銘打ち、2024年11月1日(金)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて1週間限定上映が決定した。

ポスタービジュアル・予告編・場面写真も解禁

『大いなる幻影』『ピクニック』『フレンチ・カンカン』……今なお世界中で愛される数々の名作たち。印象派の高名な画家オーギュストを父に持ち、その偉大な芸術家の遺伝子を受け継ぎながら、映画芸術の可能性を高め続けてきた20世紀を代表する巨匠ジャン・ルノワール。
自由と生命を高らかに謳い、そして同時に人間や世界の裏の側面を容赦なく暴き出し、官能的なまでに艶やかな映像美と圧倒的なエネルギーに満ち溢れた唯一無二の映像世界を作り上げてきた不世出の映画作家。
フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、ロベルト・ロッセリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ロバート・アルトマン、ダニエル・シュミット、ウェス・アンダーソン、濱口竜介——彼を敬愛する映画作家たちを挙げればきりがない。
今回の特集上映では、ルノワールの後期に焦点を当て、これまで日本ではあまり機会のなかった貴重な2作品『コルドリエ博士の遺言』『捕えられた伍長』を上映。時はフランス・ヌーヴェルヴァーグが映画の形を変容させていった50年代末から60年代初頭、ルノワールはいかにして映画と向き合い、物語を模索したか。生誕130年の節目の年にルノワールの珠玉の“映画芸術”を堪能したい。

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作品情報

それは神の領域に触れる禁断の実験。『ジキル博士とハイド氏』をルノワール流に大胆に翻案。
「テレビ」「映画」「舞台」を交錯させた実験精神溢れる異端の作品!
『コルドリエ博士の遺言 4Kレストア』 
出演:ジャン=ルイ・バロー テディ・ビリス ミシェル・ヴィトルド ミシュリーヌ・ギャリ
1959年 | モノクロ | 96分 | スタンダード | DCP

画像: © 1959 STUDIOCANAL – INA. All Rights Reserved.

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当時、新たなメディアとして登場したテレビ向けの企画として製作された本作は、従来の映画とは違った演劇や舞台のスタイルを取り入れている。複数のカメラで同時に撮影する「マルチプルカメラ」の手法が採用され、ルノワールは俳優をカメラから解放しようと試みる。これにより俳優たちはカメラに向けて演技をするのではなく、自分のリズムとペースで演技をすることが可能となった。撮影前には入念なリハーサルが繰り返され、舞台演劇のように綿密な打ち合わせが行われた。ルノワールは50年代中盤から舞台演出も手がけており、「芝居でやった仕事から生まれた実験映画である」と本作について語っている。主演はマルセル・カルネの『天井桟敷の人々』(45)のジャン=ルイ・バロー。本作ではジキルとハイドをモチーフにした「コルドリエ博士」と「オパール」を見事に演じきり新境地を開拓。彼の優雅な身のこなしとダイナミックな演技は観るものを魅了する。ジャン=リュック・ゴダールとエリック・ロメールは本作をオールタイムベストの1本に挙げているほか、レオス・カラックスは2012年の『ホーリー・モーターズ』で本作のキャラクターにオマージュを捧げた「怪人メルド」を登場させている。

ただひたすら、自由を求めて。名作『大いなる幻影』の変奏ともいうべき傑作喜劇。
生の歓びを高らかに謳い上げるルノワール最後の人生讃歌!
『捕えられた伍長 4Kレストア』
1962年ベルリン国際映画祭 金熊賞ノミネート/1963年英国アカデミー賞 総合作品賞ノミネート
出演:ジャン=ピエール・カッセル クロード・ブラッスール クロード・リッシュ ジャン・カルメ
1962年 | モノクロ | 107分 | ビスタ | DCP

画像: © 1962 STUDIOCANAL. Tous droits réservés.

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何度失敗しても果敢に捕虜収容所からの脱走を試みる伍長の姿を通して、生きる歓びと素晴らしさを描いたルノワールの遺作。自身の代表作『大いなる幻影』(37)の変奏とも言える作品だが、シリアスでペシミスティックな『大いなる幻影』に対し、本作はより軽快なタッチと魅力的なキャラクター描写により軽快な喜劇に仕上がっている。ルノワールは「敗れた者の精神についての映画を作りたかった。『大いなる幻影』はその反対に勝者の映画だった。先の大戦は私たちに一つのことを教えてくれた。そこには敗者しかないということである」と語る。『フレンチ・カンカン』(55)の成功でフランス映画界へ復帰したルノワールだったが、その後の作品は不振が続き、晩年アメリカで暮らし母国へ帰ることは叶わなかった。何度失敗してもパリに帰りたいと願う本作の主人公の姿は、まさに自身の心情と重ね合わされていたのかもしれない。出演は『ブルジョワジーの密かな愉しみ』(72)のジャン=ピエール・カッセルと『はなればなれに』(64)のクロード・ブラッスール。エリック・ロメールは本作をオールタイムベストに挙げるほか、「カイエ・デュ・ シネマ」誌にてその年のベスト10に選出された。

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