インディペンデント映画とハリウッドの大作を行き来するリチャード・リンクレイター監督。ラブストーリーからファミリー向けコメディ、人間ドラマや哲学的な作品まで様々なジャンルの作品を撮り、しかも実験的な撮影手法を用いることもあり、アイディアと探究心が溢れ出る監督である。そんな彼の代表作と最新作について紹介する。

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離<ディスタンス>』(1995)

第45回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞し、リンクレイターの名を一躍有名にした作品である。列車の中で出会ったアメリカ人ジェシー(イーサン・ホーク)とフランス人大学生のセリーヌ(ジュリー・デルピー)はブタペストからパリへ向かう長距離列車の中で偶然出逢う。意気投合するが、列車は目的地に到着し、ジェシーは、翌朝のフライトまでの間、14時間のウィーン旅行にセリーヌを誘う。宝物のような一夜を過ごし、心を寄せ合った二人はお互いのラストネームも知らせずに、半年後に駅のホームで再会する事を約束して別れるのだった。

画像: Photo by Castle Rock Entertainment/Getty Images

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ウィーンの街並みを彷徨いながら二人が交わす、他愛もない会話や、時に哲学的な会話の数々が光る奇跡のような一夜を描いたラブストーリー。2004年には、本作より9年後の彼らの姿を描いた続編『ビフォア・サンセット』、13年にはさらに9年後を描いた『ビフォア・ミッドナイト』も製作され、二人のその後を見守る作品となっている。

本作の脚本には主演のイーサン・ホークとジュリー・デルピーも携わったことにより、よりリアルな共感を誘うものになったという。ジュリーは「監督はリアリティを追求しようとして、主役の私たちを脚本家として起用したの。私たちならなんて言うかってことを即興で演じさせたりしてね。私が演じるセリーヌが「神は人々のあいだにいる」って語ったシーンも、そうやって生まれた」と明かしている。

『スクール・オブ・ロック』(2003)

画像: *写真はプレミアの時のもの Photo by Jeffrey Mayer/WireImage

*写真はプレミアの時のもの Photo by Jeffrey Mayer/WireImage

本作はジャック・ブラック主演の痛快コメディ。口コミでその面白さが広まった。自分が属していたバンドをクビになったデューイ(ジャック・ブラック)は、家賃を払うために小学校の代用教員として潜り込む。やる気のないデューイに子供たちも呆れ顔だったが、厳格な規律の多い環境で無気力に過ごす子供たちが実は音楽の才能があることを見抜き、子供たちとバンドを結成しコンテストの優勝を目指す。ジャック・ブラックはコミックバンドを率いるミュージシャンでもあるので、豊富なロックの知識がセリフはもちろんステージパフォーマンスにも盛り込まれ、ロックに関する小ネタが満載。さらに、子供たちはリチャードがアメリカ中から見つけてきた天才ミュージシャンキッズで、彼らの吹き替えなしのバンド演奏も見応えのある作品となっている。劇中に出てくる楽曲はジャックの友人で、本作に出演している俳優のマイク・ホワイトが歌詞を書き、ジャックがメロディをつけるという形で制作したという。

『6才のボクが、大人になるまで』(2014)

6歳の少年メイソンの成長とその家族の変遷を、主人公のメイソン(エラー・コルトレーン)や両親役のイーサン・ホーク、パトリシア・アークエットらを同じキャストで 2002 年の夏から2013年の10月まで12年間を通して断続的に撮影するという斬新な手法で撮影し、批評家・観客の双方から驚きと共に絶賛され、日本でも大ヒットを記録した作品である。第 64 回ベルリン国際映画祭で監督賞、ゴールデングローブ賞作品賞を受賞した。

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テキサス州に住む6歳の少年メイソンは、キャリアアップのために大学で学ぼうとする母親と共にヒューストンへ。父との再会、母親の再婚など様々な出来事を経験し、成長していく。やがて、母親は大学の教師となり、オースティン近郊に移り住むが、アート写真家という将来の夢を見つけたメイソンは、母親の元から巣立っていく。

この企画を聞いた時イーサン・ホークは「素晴らしいアイディアだと思った。それに、すでにリチャードとは3本作っていたから全く躊躇はなかったよ。時間について描くというのはとても魅力的なものだと感じだしね」と語っている。長い時間を共に過ごし、スタッフ、俳優の間には密な関係性が生まれたことで、本作には他の作品にはないリアリティが生まれた。

『ヒットマン』(2024)

本作は1990年代に偽の殺し屋として警察のおとり捜査に協力し、70人以上を逮捕に導いたと言うゲイリー・ジョンソンの実話にインスパイアされた、ちょっぴりセクシーでスリリングなクライム・コメディ。今ハリウッドでトップスターの階段を急ピッチで駆け上がっているグレン・パウエルが、ブラッド・ピッドも映画化を狙っていたというこの実話の存在を知り、本作で4度目のタッグとなるリチャード・リンクレイター監督へ電話をかけたことから企画がスタート。そこからリンクレイターとグレンの共同脚本開発が始まった。

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これまでコメディ、恋愛、青春ドラマなどさまざまなジャンルの作品を撮り続けてきたリチャード・リンクレイターの集大成ともいうべき魅力がふんだんに詰まった本作は、2023年ヴェネツィア国際映画祭でのプレミア上映をはじめ、サンダンス映画祭、トロント国際映画祭など数々の映画祭で上映され、米大手口コミサイトの「Rotten Tomatoes」でも、批評家のスコアが98%(5/28時点)と好評を博した。

普段は冴えない大学教授でありながら、おとり捜査で偽の殺し屋に扮し殺しの依頼をしてくる「依頼人」たちを次々と逮捕へ導いていくゲイリーをグレン・パウエルが演じた。グレンは、リンクレイターとの共著の脚本で早くも来年のオスカー候補と目されている他、7月3日に発表された第7回アストラ・ミッドシーズン映画賞において、4部門でノミネート、グレンが見事主演男優賞を受賞した。

『ヒットマン』
9月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて絶賛公開中!

画像: 【名匠リチャード・リンクレイター傑作選】メジャーとインディーを自由に駆け回り、ジャンルにも囚われない4作品

配給:KADOKAWA 
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