イントロダクション
フランス国内で100万人超の観客動員を記録したアニマライズ・スリラーが遂に日本公開。舞台は近未来。動物化した人々=“新生物”と人間との間で激しい分断が生じる中、一人の少年の身体に異変が起き始める。特殊メイク、アニマトロニクス、CGなどを組み合わせて表現された“新生物”のインパクトあるビジュアルに加えて、人種差別などの社会問題を彷彿とさせる奥行のあるテーマ、さらには小津安二郎の『父ありき』にインスピレーションを受けたという父子のドラマまでみどころの多い作品となっている。
監督は、本作が長編2作目となるトマ・カイエ。本作では2023年のセザール賞では最多12部門でノミネートを果たし(うち撮影賞、音響賞、音楽賞、衣装デザイン賞、視覚効果賞を受賞)、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品として出品されるなど高い評価を得た。物語の核となる父子を、『真夜中のピアニスト』(05)などのロマン・デュリス、『Winter boy』(22)のポール・キルシェが演じているほか、共演に『アデル、ブルーは熱い色』(13)のアデル・エグザルコプロスら実力派俳優が名を連ねる。
あらすじ
人間が動物に変異していく奇病が世界中で蔓延している近未来。フランスでは、社会秩序の混乱を恐れ、政府が奇病の患者(通称:新生物)を強制的に隔離していた。妻のラナを新生物と認定された料理人フランソワ(デュリス)は、高校生の息子エミール(キルシェ)と共に、ラナの新たな収容先のある南仏に移住する。しかし、ラナは移送中の事故で姿を消し、フランソワは自力で探し始める。一方、現地の高校に編入したエミールは、自身にも動物化が起きていることに気づく。脱走した新生物たちが街にも現れ緊張感が増す中、ある事件が起きてしまう。
登場人物
フランソワ(ロマン・デュリス・左)
料理人。動物化した妻ラナをいまだ愛しており、息子のエミールと3人で暮らせる日を夢見ている。息子を守りたい気持ちが先行してしまうことも。
エミール(ポール・キルシェ・右)
フランソワとラナの子。高校生。獣のように変わり果てた母への違和感を拭えずにいる。自身にも動物化の症状が出始めるが、なかなか父に言えない。
CHECK “新生物”とは
近未来で蔓延する奇病で動物化した人々。病にかかると、鳥、タコ、カメレオン、セイウチなど、人それぞれ異なる動物の特徴が発露し、人間と動物のハイブリッドな姿になる。徐々に理性や人間の言葉も失っていく。エミールは立入禁止の森で鳥人間フィクスと出会い親交を深めるが。
インタビュー 監督トマ・カイエ ー“新生物”についてー
“できるだけ有機的な映像を追求したんだ”
「作品中の動物は、あらゆる種の分類に取り組んだ。哺乳類と同数くらいの鳥類や爬虫類に節足動物まで、とにかく全部やってみた。毎回キャスティングもしたよ。身体そのものや体の動きに特徴のある人たちがいる。そこから構築した。
例えばスーパーにいるタコ女もそうだよ。脚本に登場していたが、偶然ダンサーの動画を見てね。爪を見せない動きを何年間も訓練した人で、しなやかで滑らかな動きはまるで軟体動物のようだった。それで実際に会って、一緒に作業しながらタコ女ができた。衣装を作って、メイクを施してね。初めのうちは人工関節を使って動きを作ったよ。それからデジタルの触手にした。彼女は腕を使って物を投げたり飛ばしたりする。実は冷蔵庫の後ろで、ハンドボールのチームが物を投げてたんだ。そういう幅広い手法が面白い。
映画創成期のジョルジュ・メリエス並みに、手作りのものから高度なテクノロジーまで総動員したよ。常に混合させようと、毎回試してた。わくわくしたけど、気が遠くなるような作業だった。できるだけ有機的な映像を追求したんだ」
『動物界』
2024年11月8日(金)公開
フランス/2023/2時間8分/配給:キノフィルムズ
監督:トマ・カイエ
出演:ロマン・デュリス、ポール・キルシェ、アデル・エグザルコプロス、トム・メルシエ、ビリー・ブラン
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