作品紹介
アメリカの写真家ダニー・ライオンの体験取材を基にした写真集「The Bikeriders」にインスパイアされたドラマ。1960年代に米シカゴに実在した伝説のモーターサイクルクラブ“アウトローズ・モーターサイクルクラブ”を架空の集団“ヴァンダルズ”に置き換え、バイクを愛するライダーたちの理想の生き方が、時代の状況変化などによって思わぬ方向へ変貌していく様を描く。
物語のストーリーテラーとなるキャシーを演じるジョディ・カマー(『フリー・ガイ』)を中心に、彼女のパートナーであるベニーにオースティン・バトラー(『エルヴィス』)、“ヴァンダルズ”のリーダー、ジョニーにトム・ハーディ(『ヴェノム』)、ライダーたちを取材する写真家ダニーにマイク・フェイスト(『チャレンジャーズ』)、LAからやってくる放浪のライダー、ソニーにノーマン・リーダス(『処刑人』)が扮し、他に『シェイプ・オブ・ウォーター』のマイケル・シャノンらが出演。監督・脚本は『ラビング 愛という名前のふたり』のジェフ・ニコルズ。
あらすじ
1965年の米シカゴ。不良と呼ばれる集団とは無縁の生活をしていたキャシー(カマー)だが、無口でけんかっ早いバイク乗りのベニー(バトラー)と出会って5週間後に結婚。地元の荒っぽい連中をまとめるジョニー(ハーディ)の側近でもあるベニーとの結婚で、キャシーは彼の仲間たちとも交流していく。ベニーは群れることを嫌い、普段はおとなしいが狂気を見せる一面もあり、グループの中で異彩を放つ存在だった。キャシーはそんな彼らとの出会いの時代を写真家のダニー(フェイスト)に語って聞かせる。
やがてジョニーが率いるバイカーたちの集まりは“ヴァンダルズ”というモーターサイクルクラブへと発展。クラブの噂は全米に広がり、各地に支部ができるほどに。だがその結果、平和的だったクラブ内では次第に治安が悪化し、敵対クラブとの抗争も勃発する。ジョニーは制御不能になっていくクラブに苦悩し、ベニーにリーダーの座を譲ろうとするが、キャシーは時に発揮されるベニーの危険な素行に心を痛めていた。そしてベニーも自分を束縛しようとするキャシーとの将来に葛藤を覚えていた…。そんな時、暴走が止まらなくなったヴァンダルズで、悲劇的な出来事が起きてしまう。
プロダクションノート
監督とインスパイアを受けた本の出会い
ジェフ・ニコルズ監督とダニー・ライオンの「The Bikeriders」(1968年初版)の出会いは20年ほど前。ダニーがバイク集団“シカゴ・アウトローズ・モーターサイクル・クラブ”で4年間メンバーを取材し撮影した記録であるこの写真集に魅了された監督は、さらに何年もの間、ダニーのウェブサイトで実際のメンバーたちのインタビュー音声も聞いたことから作者にじかに会うことを決め、脚本を書くことになったという。そこではベニーをめぐるキャシーとジョニーの二つの関係を軸に物語を構成。それだけでなく「アウトサイダー集団の心理について」深く語っていることを明かしている。また監督はスタッフに対して「我々の目標はダニーの撮影した写真のように説得力のあるものを再現し、本にあった感覚を蘇らせることだ」と何度も繰り返していたと言われる。
オースティン・バトラーは語る
いま注目の男優オースティン・バトラーはベニーという人物についてこう語っている。「人には誰でもコミュニティを必要とする何かがある。一匹狼のベニーはジョニーという父親のような存在と仲間たちとの友情をヴァンダルズに見つけた。キャシーとはすぐ結婚したが、片足は常にドアから外に出している。キャシーはそんな暮らしから抜け出してほしいと思っているし、ジョニーは仲間たちをまとめるのにベニーを必要としてる」ダニー・ライオンが録った音声にベニーのものはなかったが「他のメンバーの音声はとても役に立ったよ。自分がベニーに似ているかどうかはわからないけど、その方がむしろ幸運だったと思う」と語っている。そんなバトラーは父も祖父もバイク乗りで、彼自身も10代の時に父から乗り方を習っていたとか。「撮影前にみんなでトレーニングすることで絆が深まったんだ。それに僕も撮影で乗った当時の素晴らしいバイクは、コーディネーターのジェフ・ミルバーンの私物で、彼と撮影前にバイクを乗り回し、本当に多くのことを学んだよ」
もう一人の主人公、ヴィンテージ・バイク
オースティン・バトラーも称賛するビークル・スタント・コーディネーターのジェフ・ミルバーンは豊富な知識だけでなく、自らのバイク・コレクションも持ち込んだ。当時の本物のバイクを使うというジェフ・ニコルズ監督のこだわりは困難を伴ったという。「オートバイは暑いと走りたがらないし、寒すぎても走るのを嫌がるし、雨が降ったり乾燥していると走らないんだ」と嘆く。ヴィンテージは操作方法も難しいので出演者は経験がある人も一から乗り方を学んだという。「みんなが一斉に道路を走る時は神経がすり減ったよ」というミルバーンだが「ノーマン・リーダスは本物のライダーだね」と証言している。
『ザ・バイクライダーズ』
2024年11月29日(金)公開
アメリカ/2023/1時間56分/配給:パルコ ユニバーサル映画
監督・脚本:ジェフ・ニコルズ
出演:オースティン・バトラー、ジョディ・カマー、トム・ハーディ、マイケル・シャノン、マイク・フェイスト、ノーマン・リーダス
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