噛み合わない両親と娘の“ピリピリとした食卓”
名門校に赴任してきた栄養学の教師、ノヴァク。彼女は“意識的な食事/conscious eating”という、「少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができる」という食事法を生徒たちに教える。無垢な生徒たちは彼女の教えにのめり込んでいき、事態は次第にエスカレート。両親たちが異変に気づきはじめた頃には時すでに遅く、遂に生徒たちはノヴァクとともに【クラブゼロ】と呼ばれる謎のクラブに参加することになる――。生徒たちが最後に選択する、究極の健康法とは?そしてノヴァクの目的とは?
メガホンを取るのは、物議を醸すテーマ設定と鮮烈なビジュアルで強いインパクトを放つ作品を次々と発表し話題を集める気鋭監督、ジェシカ・ハウスナー。本作は『リトル・ジョー』(19)に続き、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。「全盛期のキューブリックを彷彿とさせる冷静な眼差し」(THE FILM VERDICT)、「毒々しいユーモアを放つ作品」(FRANCE INTER)などと評価され、各国の観客を魅了している。過去に手掛けた4作の長編映画もカンヌ映画祭に選出され、各国の映画祭から熱視線を集めている。
この度、公開されたのは、栄養学を履修する生徒の一人、ラグナの自宅での食卓シーン。トランポリンが得意なラグナの家では、父親特製の健康的なヴィーガン料理が振る舞われるが、「ヴィーガンは古い」と毛嫌いするラグナは思わず顔をしかめる。健康への意識が高く、ノヴァクがプロデュースした断食茶も購入したという父親は彼女の授業に興味津々だが、問いかけにも答えず気だるい表情を浮かべるラグナ。母親も「とても健康的なプログラムらしいわね、体重も管理できそう」と続くが、その何気ない母親の言葉にラグナのイライラが爆発し、一家団欒の時間にも関わらず心地の悪いピリピリとした空気が張り詰める。
そんな空気を変えようと父親がラグナに“「意識的な食事」を見せてくれ”とリクエスト。両親に見つめられる中【意識的な食事】を披露するラグナの姿が映し出され、映像は締めくくられている。
生きる上で誰もが切り離すことができない「食」と「親はいかにして子供を守れるのか」という疑問を、ジェシカ監督ならではの視点で提示する本作。「食事はとても個人的かつ社交的なことで、特に責任感と帰属欲求の高い若者が拒食に陥れば、究極の抵抗の形が完成してしまうのです」と警鐘を鳴らす。
今回公開された本編映像に登場するラグナもまた、スポーツをすることから脂肪を落として健康な体づくりを目標に栄養学を選択。自制心を鍛えたいと願う者、環境保護に関心のある者…、強い信念を持って栄養学に向き合う同級生たちに感化され、次第にノヴァクが説く健康法にのめり込んでいく様子が劇中でも描かれる。果たして、純粋無垢な若者たちがノヴァクに導かれる先は、幸福か、破滅か――。
『クラブゼロ』
12月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
出演:ミア・ワシコウスカ
脚本・監督:ジェシカ・ハウスナー
撮影:マルティン・ゲシュラハト
2023年|オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール|5.1ch|アメリカンビスタ|英語|110分|原題:CLUB ZERO|字幕翻訳:髙橋彩
配給:クロックワークス
ⒸCOOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION,
PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023