“実は僕、黒澤明監督や小津安二郎監督などの有名な日本映画が大好きなんです”
真っ赤な大きなハートの模様がついたニットを着て取材部屋に現れたフレッド。キュートな笑顔で「ハーイ!」と挨拶すると、目の前に置かれたピンクのICレコーダーに反応。
「おそろいだね!」と言ってピンクにデコレーションされた自身のスマホケースを見せてくれた。インタビューでは撮影秘話や役について、また初来日となった彼が滞在中にどんなことをしたのかなど語ってくれた。
ーー昨日(取材日の前日)、ポール・メスカルさんがご自身のInstagramでフレッドさんと渋谷のスクランブル交差点にいる動画をアップされていました。楽しい時間は過ごせましたか?
「日本はずっと来たかったので、今回来日の機会をいただけて嬉しかったです。昨日は有名な渋谷のスクランブル交差点にポールと行って楽しかったですし、二人で街中を歩き回っていました。東京って本当に素敵な街ですね。
想像していた通りでした。実は僕、黒澤明監督や小津安二郎監督などの有名な日本映画が大好きなんです。なぜなら、巨匠たちの作品が僕の映画に対する感覚を研ぎ澄ませてくれたように感じるから。東京では今どんな映画が公開されているのかとても興味があります」
“ある意味カラカラってメタ的な存在と言えるというか、現代にも通じるようなキャラクターなんですよね”
ーー『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』ではフレッドさん演じる双子の皇帝カラカラとゲタは実在する人物(ローマ史に残る暴君)です。どのように役作りされましたか?
「カラカラについていろいろと調べたのはもちろんですが、本作にはフィクションの部分もあるので、映画の中のカラカラがどう存在すれば良いかを一番に考えて役作りをしました。
リドリー・スコット監督は歴史スペクタル映画を多く撮っていますが、史実に基づきながらも、さらに物語に奥行きを作ることに長けている監督だと思うんです。
なので今回は史実からインスピレーションを受けて役に反映したところもあれば、僕の中のカラカラ像を大事に演じたところもあって、どちらも楽しんでいただけたらいいなと思っています。
ある意味カラカラってメタ的な存在と言えるというか、現代にも通じるようなキャラクターなんですよね。余談ですが、ジョセフ・クイン演じるゲタと一緒のシーンでは、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスとジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)を意識したんですよ」
ーーあの双子にパンクな精神が宿っていたとは驚きです! 二人がスクリーンに映った瞬間に「この人たちヤバそう…」と思いました(笑)。
「確かに、最初に双子の皇帝がスクリーンに映った瞬間に“おっと…これはなんだかやばいことになっているぞ…”とわかる強烈なビジュアルですよね(笑)。
本作はペドロ・パスカル演じるアカシウス将軍の目線で描かれている部分が多いと個人的には思っていて、彼は前作と十数年後のローマを繋ぐ役割も担っているのですが、双子の初登場シーンにはアカシウス将軍もいますよね。きっと彼の表情からもそれが伝わると思います。“うわ、今のローマってマジでやべえじゃん…”って(笑)」
“カラカラってやりすぎだから笑ってしまう部分もあるのですが、実は派手に着飾っているのには理由があるんです”
ーー実際に目の前にいたら怖くて震えると思います(笑)。カラカラのビジュアルやキャラクターに関してアイデアを出された部分はありましたか?
「コスチュームデザインを手がけているジャンティ・イェーツさんは、リドリー監督と何本もタッグを組んでいて、前作の衣装も担当された素晴らしいデザイナーなのですが、彼女とは衣装について打ち合わせを結構しました。初めてカラカラの金ピカな派手な衣装を見た日のことを覚えています。
最初の衣装合わせで左右の指に3本ずつはめて、それをジャンティさんに見せたのですが、お互いに『足りないね…』と言い合って。気がついたら5本の指全部に指輪をはめていました(笑)。
カラカラはとにかく“やりすぎ”なキャラクターなので、ゲタ以上に派手にしなくてはと思って。それで僕からもアイデアを出させてもらって、指輪を選んでいきました」
ーーどんな指輪なのか、大きなスクリーンで再度確認してみるとおもしろいかもしれませんね。
「シーンごとに全部違う指輪をはめているので、ぜひチェックしてもらいたいです! カラカラってやりすぎだから笑ってしまう部分もあるのですが、実は派手に着飾っているのには理由があるんです。
彼は心だけじゃなく体も病んでいるので、肉体的にも精神的にも崩壊しつつあることを隠すために、豪華な衣装やアクセサリーで着飾っているんですよね。そのキャラクター性はすごく興味深かったです」
“デンゼルの映画や舞台を見て役者になりたいと思ったぐらい影響を受けています”
ーー貴重なお話をしてくださってありがとうございます。最後に、ルシアス役のポール・メスカルさんと、謎の奴隷商人・マクリヌス役のデンゼル・ワシントンさんと共演した感想をお聞かせいただけますか。
「デンゼルは子供の頃から憧れていた俳優で、彼の映画や舞台を見て“役者になりたい”と思ったぐらい影響を受けています。そんな素晴らしい方と共演できたことは自分の人生で一生忘れられないぐらい貴重な体験でしたし、一緒にお芝居をする中でたくさん学びました。
そしてポールに関してですが、彼とジョセフと僕は同世代で、三人とも本作のような巨匠が手掛ける大作映画に出るのが初めてだったんです。だからクランクイン初日から三人ともドキドキしていましたし、仲間意識が強くて結束力も高かったです。
カットがかかるたびにお互い顔を見合わせて、『ありえなくない? 信じられる? 僕らのこの状況!!』みたいなことを言って興奮していました(笑)。現場では三人で励まし合っていましたし、一緒にいてすごく心強かったです。最高の共演者でした」
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
全国公開中
監督:リドリー・スコット
出演:ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントン、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー
配給:東和ピクチャーズ
©2024 PARAMOUNT PICTURES.