いまや世界を虜にする“北欧の至宝”マッツ・ミケルセン。本国デンマークでは、随分と前からその人気は過熱。マッツのどんなところが愛されてきたのか、北欧映画鑑賞家の米澤麻美さんに教えてもらいました。(文・米澤麻美/デジタル編集・スクリーン編集部)

1996年『プッシャー』で若い映画ファンが認知

北欧の至宝と呼ばれるマッツ・ミケルセンの出身は、多くのファンが知る通りデンマークである。現在、ハリウッドスターとして絶大な人気を誇る国際的な俳優だが、母国デンマークにおいてどのように映画スターの階段を登ってきたのだろうか。

デンマークのスクリーンにマッツが初めて登場したのは1996年。当時、デンマーク第二の都市オーフスで演劇学校に所属していたマッツは、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『プッシャー』で映画デビューした。そこでスキンヘッドの後頭部に入れたタトゥーが強烈な印象を与える麻薬密売人トニーを演じ、裏社会を生きるギャング役として若い映画ファンの間で知られるようになった

ドラマの刑事役で大ブレイク!サインを求めてファンが殺到

デンマークでマッツの人気を飛躍的に伸ばしたのは、2000年に放送が開始されたテレビドラマ「Unit One −特別機動捜査班−」だ。デンマーク国内で高い視聴率を記録したこのドラマで、マッツは捜査チームの無骨な刑事アラン・フィッシャーを演じた。この役によって映画ファンだけでなく、デンマークのお茶の間にマッツ・ミケルセンの存在が知れ渡ったのである。

以降、マッツは刑事フィッシャーを演じた俳優として紹介されるようになり、特に若い女性からの人気を集めるようになった。03年にアナス・トマス・イェンセン監督の『フレッシュ・デリ』が公開される頃には、マッツのサインを求めて大勢の女性たちが試写会場に詰めかけるようになった。当時、デンマークのマッツファンは、サイン会でマッツの注意を引きつけようと努力したそうだ。その様子は今のファンに通じるもので親近感が湧く。そして、マッツはデンマークで最もセクシーな男性と言われるようになっていった。

画像: サイン会にファンが殺到した2003年のマッツ

サイン会にファンが殺到した2003年のマッツ

04年に『キング・アーサー』でハリウッドに進出すると、デンマークのメディアは、マッツが今後ハリウッドでトップクラスの俳優になると予想し始めた。ハリウッドへの進出によって、デンマークの俳優としてだけでなく、国際的な俳優として眼差しを向けられるようになったのだ。特に、06年に『007 カジノ・ロワイヤル』の悪役ル・シッフルを演じたことで、マッツの知名度がデンマークから世界中に広がった。その後もヨーロッパ、ハリウッドなどの映画に出演を続け、デンマークでは国際的な俳優として誰もが知る存在となった。

家族と故郷を思う姿はデンマークでも愛されている

マッツが国際的に有名になればなるほど、デンマークで注目されるポイントがある。それは家族をとても大切にする姿だ。撮影に入ると一年のほとんどを海外で過ごすマッツだが、インタビューでは、家を離れていても常に家族のことを思っていることや、休暇は家族と一緒に過ごすことが語られる。

出演作の試写会には家族連れで参加し、レッドカーペットでは家族揃って写真に収まる。家族といる時のマッツの表情はとてもリラックスしているように見える。デンマークでは、結婚したカップルのうち約半分が離婚すると言われている。その環境においてマッツは、多忙な俳優として国内外で成功し、さらに家族との良好な関係を長年維持している。

その姿からデンマークでは、人気の俳優としてだけでなく、家族思いの一人の人間として受け入れられている。そして、ハリウッド超大作の悪役として次々と作品に参加する中でも、デンマーク映画に出演し続け、ハリウッドスターの一員になった現在でも母国デンマークを軸に俳優活動をしている。そんな家族思いで故郷を大切にする姿も、マッツの人間的魅力の一つだろう。

Photo by J. Vespa/WireImage

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