カバー画像:Photo by James Devaney/GC Images
“ときめいていい”という希望をくれて 完璧“ではない”から親近感が沸く
寒い冬の季節になると、心をほっこり温めてくれるロマンチックなラブストーリーを求めたくなります。ど定番のタイトルなら『ラブ・アクチュアリー』や『ホリデイ』『セレンディピティ』、比較的新しいものなら『キャロル』『ラスト・クリスマス』など、“冬のラブストーリー”が年代ごとに加わっていくのはラブストーリー好きには嬉しい。そして今季は『リトル・シークレット・イン・クリスマス』が仲間入り。『フォーリング・フォー・クリスマス』に続くリンジー・ローハン主演のロマコメです。
『リトル〜』と『フォーリング〜』は、どちらも思いきりクリスマスシーズンが舞台の映画ですが、実はリンジー、この2本の間に『アイリッシュ・ウィッシュ』にも主演。3本連続ロマコメということで、ロマコメの新女王と呼ばれつつあります。ちなみに初代ロマコメの女王はご存知メグ・ライアン、その後ジュリア・ロバーツ、ドリュー・バリモア、キャメロン・ディアス、キャサリン・ハイグル……と続きます。
ロマコメ作品において主人公の年齢は20代〜30代前半の設定が多く、現在のリンジーはアラフォーですが、3本のロマコメで主演をつとめています。ロマコメ黄金期(1980年代後半から2000年代前半)に、どっぷりロマコメにハマった世代にとってアラフォーのリンジーが主演であることは意味がある。いくつになっても「ときめいていい!」と思わせてくれるような希望を感じるのです。
また、リンジーにとってこの3本のロマコメはキャリアの再開でもあります。というのは、彼女は過去に薬物・アルコール・買い物の依存症、借金、ひき逃げで逮捕など何かと世間を騒がせてきた。さらに恋愛においても華麗な遍歴の持ち主。
その影響もあるのか女優としてのキャリアは低迷ぎみでした。そんな彼女が2022年に結婚。その直後に『フォーリング・フォー・クリスマス』に主演し、仕事が好転し始めます。そもそもリンジーは、ティーン時代の代表作『フォーチュン・クッキー』や『ミーン・ガールズ』でコメディをこなしていましたし、『今宵、フィッツジェラルド劇場で』や『ボビー』では大御所相手に堂々たる演技を見せていた。
実力はあるわけですから、難しいと言われるコメディというジャンルで復帰というのは大正解なのではないかと。新作の『リトル・シークレット・イン・クリスマス』では、大麻入りのグミを食べて教会でハイになるシーンがあって自虐ネタのようにも映りますが、それもまたリンジーだからこそのご愛嬌。完璧“ではない”からこそ親近感を抱きますし、何よりドタバタの末にハッピーエンドというロマコメの展開がリンジーはとても似合う!
もうひとつ、『フォーリング〜』と『アイリッシュ〜』には「魔法」「ファンタジー」という要素があります。『フォーリング〜』は、この人はきっとサンタクロースだよね?という老人が出てきたり、『アイリッシュ〜』はアイルランドの願いが叶う石が出てきたり、日常生活のなかに突如現れる魔法というエッセンスを違和感なく観客が受け止められるのは、脚本の力ももちろんありますが、リンジー・ローハン主演という彼女がつくり出す世界観もきっとある。
何はともあれリンジーにはこの先もコンスタントにロマコメに出てもらい、寒い冬の季節を温めてほしいと願いたくなるのです。