今年は「9ボーダー」「海のはじまり」などの話題作に出演し、今最も注目を集めている俳優・木戸大聖。最新出演作となる映画『ゆきてかへらぬ』では天才詩人と呼ばれた中原中也を演じている。実在した女優・長谷川泰子、中原中也、文芸評論家の小林秀雄の三角関係を描いた本作の撮影秘話や、主演の広瀬すず、共演の岡田将生について、さらに最近おすすめの映画などを語ってくれた。(文・奥村百恵/写真・久保田司/デジタル編集・スクリーン編集部)
画像: 在りし日の君に想いを馳せて
『ゆきてかへらぬ』木戸大聖インタビュー

木戸大聖 プロフィール

1996年12月10日、福岡県出身。17年、「僕たちがやりました」(KTV)で俳優デビュー。18年より「おとうさんといっしょ」(NHK BSプレミアム)で3年間レギュラーを務める。22年、「First Love 初恋」で佐藤健が扮する並木晴道の若き日を好演し一躍注目を集め、23年の「僕たちの校内放送」(CX)でドラマ初主演、同年、『先生! 口裂け女です!』で映画初主演も果たした。24年は「9ボーダー」(TBS)「海のはじまり」(フジTV)などの注目作に出演し、2025年は夜ドラ「バニラな毎日」(NHK)が1月に放送を控えている。

自分の中に中也を落とし込めるように、共感できるポイントを探りながら役作りしていきました

──本作への出演が決まった時の心境をお聞かせいただけますか。

「中原中也は教科書で読んで知っていましたし、これまでに数々の俳優が演じてこられた人物だという認識はありました。そんな中也を自分が演じることが決まった時は、素直にうれしかったです」

──どのように役作りされましたか。

「実在した人物を演じるのは今回が初めてだったので、役作りのためにまずは山口県にある中原中也記念館へ行きました。彼が生まれ、最期を迎えた山口県がどんなところなのか感じたくて、街をふらふら歩いたりもしましたね。天才詩人と呼ばれた方なので、どんなに資料を読んでも自分との共通点は見つからないし、中也が“おもしろい”と感じたことを同じようにおもしろがれない自分がいて、なかなか理解ができない部分もたくさんありました。それでも自分の中に中也を落とし込めるように、共感できるポイントを探りながら役作りしていきました」

──中也のどういったところに共感できましたか。

「中也は広瀬すずさんが演じた泰子や、岡田将生さんが演じた小林よりも年下なのですが、この二人に無謀にも噛みついていくような人で、他の文学者や詩人にも突っかかっていく怖いもの知らずの性格の持ち主ですよね(笑)。それで、僕自身も広瀬さんや将生さんと中也として対峙しなければいけなかったので、負けないように演じなければと、そんな風に思いながら現場に立っていました。そういったところに中也と自分との共通点を見出せたのは大きかったです」

画像1: 自分の中に中也を落とし込めるように、共感できるポイントを探りながら役作りしていきました

──しゃべり方や動きなどで意識したところを教えていただけますか。

「普通にしゃべるとどうしても現代の若者っぽくなってしまうので、根岸吉太郎監督がおっしゃった『当時の人は一音一音をはっきりと発音していたそうなので、そこを意識してセリフを言ってください』という言葉を意識しながら演じていました」

──衣装やセットも見応えがありましたが、丁寧に作り込まれた世界観は中也を演じる上でどんな影響を与えましたか?

「今回、一番感動したセットがスタジオに作られた当時の京都の街並みでした。クランクイン前に、瓦屋根の家がずらっと並んだセットを見学させてもらったのですが、想像を超える完成度でとてつもなく感動したのを覚えています。冒頭に登場する中也の部屋も、机の木の素材や置かれているペンなど細部にまでこだわって作り込まれていたので、プレッシャーを感じてしまうほどでした。衣装に関して監督が一番こだわっていたのが、中也の被っていたつば広ハット。何回もフィッティングして、ハットについているベルトの幅やつばの長さ、質感にこだわりながら決めたので、ぜひ大きなスクリーンで確認していただきたいです(話している途中、劇中で使用した中也のノートを取り出す木戸さん)」

画像2: 自分の中に中也を落とし込めるように、共感できるポイントを探りながら役作りしていきました

──これは劇中で中也が持っていたノートですか?

「そうです。中也の字を真似て書いてみました」

──貴重なものを見せていただきありがとうございます。ところで、広瀬さんや岡田さんとのお芝居はいかがでしたか。

「将生さんに関しては、普段もお兄さんのように接してくださって、そこが小林と重なりました。批評家らしい佇まいがとても素敵ですし、中也と泰子のやり取りを見ている小林の表情から“自分は二人の間に入れない…”と思っているのが伝わるのもすごいなぁと。将生さんからも小林からも器のでかさみたいなものを感じました。広瀬さんに関しては、実際は僕の方が年上なんですけど、泰子を演じている時は全く年下に思えなかったです。話しかたや立ち振る舞いなども含め、泰子がどんどん大人の女性になっていく過程を見事に体現されていました」

──泰子と中也が激しい取っ組み合いをするシーンが印象的でしたが、撮影はいかがでしたか。

「そのシーンの撮影時に、“広瀬さんってこんなにもパワーがあるのか!”と驚いたのを覚えています(笑)」

画像3: 自分の中に中也を落とし込めるように、共感できるポイントを探りながら役作りしていきました

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※全文はSCREEN2025年2月号に掲載

『ゆきてかへらぬ』

画像1: 『ゆきてかへらぬ』

まだ芽の出ない女優・長谷川泰子は、学生の中原中也と京都で出逢う。20歳の泰子と17歳の中也は惹かれ合い、一緒に暮らしはじめる。価値観は違うが、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。その後二人は東京に引っ越すと、ある日、中也の詩人としての才能を誰よりも知る小林秀雄が二人のもとを訪れる。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにした泰子は複雑な気持ちになるが、小林はそんな泰子に惹かれ、男女三人の複雑な関係が始まるのだった…。

中原中也(木戸大聖)

画像2: 『ゆきてかへらぬ』

のちに不世出の天才詩人と呼ばれることになる17歳の青年。芽の出ない女優・長谷川泰子に惹かれ、一緒に暮らしはじめる。

『ゆきてかへらぬ』
2025年2月21日(金)公開
日本/2025/2時間8分/配給:キノフィルムズ
監督:根岸吉太郎 脚本:田中陽造
出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生
田中俊介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、カトウシンスケ、藤間爽子、柄本佑

©︎2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

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