映画製作で罪に問われたモハマド・ラスロフ監督。母国を脱し、命懸けで戦うその姿に世界が喝采!
第77回カンヌ国際映画祭で、【審査員特別賞】を受賞した『聖なるイチジクの種』への12分間に及ぶスタンディングオベーションには、衝撃と感動、熱いリスペクトなど賞賛のすべてが込められていたー。喝采を浴びたのは、これまで手がけてきた自作映画でイラン政府を批判したとして有罪判決を受けていた、イラン人監督モハマド・ラスロフ。『聖なるイチジクの種』も2022 年に “ヒジャブの着用義務”についての訴えを呈した女性活動家の不審死が発端となった市民による『マフサ・アミニ抗議運動』を背景に、イラン国内の家父長制度、女性の人権と自由についての問題に自国イランへの批判も込め鋭く切り込んだ。そんな本作を世界に問うために、まさに命を懸けて自国を脱出、28日間かけてカンヌにたどり着いたのだ。監督は「私は、イスラム共和国政府の検閲による介入を受けない、より現実に近いストーリーを目指しました。表現の自由の制限や抑圧は、たとえそれが創造性を刺激するものであったとしても正当化されるべきではありません」「道がなければ、作らなければなりません」と声明文を発表、今なおイランから出国出来ないキャストやスタッフを案じている。
アカデミー賞の最終的なノミネーション発表は、1月17日(現地時間)。イランや中国などイデオロギー主導の権威主義体制の国に対しての反体制派の人々の叫びでもある本作は、アカデミー賞の重要な前哨戦とされるゴールデングローブ賞<非英語作品賞>やクリティック・チョイス・アワード<外国語映画賞>でのノミネーションをはじめ、世界各国の名だたる映画賞で続々と受賞&ノミネーション!この度の<ショートリスト>へのノミネーションで、更にアカデミー賞レースを一歩リードした。
国家公務に従事する一家の主・イマンは20年間にわたる勤勉さと愛国心を買われ夢にまで見た予審判事に昇進。しかし業務は、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を課すための国家の下働きだった。報復の危険が付きまとうため国から家族を守る護身用の銃が支給される。しかしある日、家庭内から銃が消えた――。最初はイマンの不始末による紛失だと思われたが、次第に疑いの目は、妻・ナジメ、姉のレズワン、妹・サナの3人に向けられる。誰が?何のために? 捜索が進むにつれ互いの疑心暗鬼が家庭を支配する。そして家族さえ知らないそれぞれの疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂いだす―――。
『聖なるイチジクの種』
監督・脚本:モハマド・ラスロフ カンヌ国際映画祭ある視点部門【脚本賞】『ぶれない男』(17)、ベルリン国際映画祭【金熊賞】『悪は存在せず』(20)
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキ
2024年/フランス・ドイツ・イラン/167分 配給:ギャガ ©Films Boutique