人生の終わりと生きる喜びを描いた珠玉のドラマに世界が絶賛!
『ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち』(80)で映画監督デビューを果たしたペドロ・アルモドバル監督。色鮮やかな映像とユーモアにあふれた作品で観客を魅了し、『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)でアカデミー賞外国語映画賞、『トーク・トゥ・ハー』(02)でアカデミー賞脚本賞を受賞。地元スペインに根付いた映画を制作しながらも、映画界に偉大な足跡を残し続けてきた。
75歳を越え、さらに円熟味を増したアルモドバル監督が贈る最新作は初の全編英語作品である。独自の感性溢れるカラフルな世界観で、病に侵され安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の人生最期のかけがえのない数日間を描いた。
出演は、ウェス・アンダーソン監督作品やジム・ジャームッシュ監督作品の常連として知られ、『フィクサー』07)でアカデミー助演女優賞®に輝いたティルダ・スウィントンと、『アリスのままで』(14)でのアカデミー主演女優賞®に加え、世界三大映画祭すべてで女優賞を受賞したジュリアン・ムーア。ふたりのオスカー女優が親友同士を演じ、繊細で美しい友情を体現する。
第81回ベネチア国際映画祭で、最高賞である金獅子賞の栄冠に輝き、およそ20分間の拍手喝采を浴び、史上最高の絶賛を受けた。さらに、第82回ゴールデングローブ賞では主演女優賞(ドラマ部門)にてティルダがノミネート。監督の地元スペインの第39回ゴヤ賞では監督賞を含む10部門でのノミネートを果たし、アカデミー賞へ向けて、賞レースの受賞ラッシュに期待がかかる。
満を持しての英語長編デビュー!作品に込めたメッセージとは?
初めて英語で映画を作ることになった過程について、アルモドバル監督は、「実は80年代から英語での仕事のオファーがあったのですが、自信がありませんでした。というのも、ハリウッドからオファーされる題材に興味が持てなかったのです。でも、いつかは英語で映画を撮るつもりでいました。原作であるシーグリッド・ヌーネスの物語を読んで映画化を決めたとき、マーサとイングリッドはふたりともアメリカ人でニューヨークに住んでいると思いました。つまり、このストーリーは英語で映画を作ることを私に要求しているのだと感じたのです。私が待ち望んでいたのは、“英語で映画を作るのに適した題材を見つけること”だったことに気付きました。さらに本作を撮影する前に試しにやってみた2本の短編『ヒューマン・ボイス』と『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』の結果がとてもポジティブだったので、この小説に出会って私は覚悟を決めたのです」 と制作の経緯を明かしている。
生まれ育ったスペインの地を離れての撮影について「いつもの映画作りとの違いはただ一つ、“ニューヨークで撮影すること”でした。ニューヨークで撮影する場合は、労働組合や制作チームと多くのことを話し合わなければなりません。より複雑で、より多くの書類、より多くの手続き、そしてより多くの人々が関わっていた。有名な書店であるリゾーリ書店から撮影がスタートしたのですが、気がついたらクルーが100人くらいになっていました。いつもより多くの人がいたことにも戸惑いましたが、でも他は同じでした」と振り返る。
『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』で描かれるテーマは“死”。重い病に侵された主人公のマーサは尊厳死を望み、その願いをくみ取った親友のイングリッドはそっと彼女に寄り添う。安楽死/尊厳死については、近年の高齢化社会が進む中で全世界的に関心の高まっているトピックであり、合法化する国も増加傾向にある。アメリカや日本ではまだ認められていないが、スペインでは2021年から安楽死を認める法が成立されたこともあり、その点でも舞台はスペインでは成り立たなかった。
映画のテーマについて監督は、「死というテーマを大きく扱っていますが、陰気でむごい作品にはしたくありませんでした。『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』では、唯一望む未来が死であるというストーリー展開ゆえに、抑えたアプローチを取りました。心の機微を捉え、思慮深さをもって死という普遍のテーマに臨んでいます」と語る。
続けて「このテーマについて私がどのように感じているかを言っておきたいのですが、私は私たちが自分の人生の所有者であると考えています。私たちは人生において自由に行動しなければなりませんが、同時に自分が自分の人生の所有者でもあります。たとえ自分が深刻な病気を患っていたとしても。つまり私たちは死さえも自分で所有しているのです」と持論を展開する。
【STORY】
その日、あなたが隣にいてくれたならー
重い病に侵されたマーサ(ティルダ・スウィントン)は、かつての親友イングリッド(ジュリアン・ムーア)と再会し、会っていない時間を埋めるように病室で語らう日々を過ごしていた。治療を拒み自らの意志で安楽死を望むマーサは、人の気配を感じながら最期を迎えたいと願い、“その日”が来る時に隣の部屋にいてほしいとイングリッドに頼む。悩んだ末に彼女の最期に寄り添うことを決めたイングリッドは、マーサが借りた森の中の小さな家で暮らし始める。そして、マーサは「ドアを開けて寝るけれど もしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいないー」と告げ、最期の時を迎える彼女との短い数日間が始まるのだった。
『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
1月31日(金)公開
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
原作:シーグリッド・ヌーネス「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」(早川書房刊行)
出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニボラ
原題:The Room Next Door|2024 年|スペイン|G
配給:ワーナー・ブラザース映画
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©El Deseo.Photo by Iglesias Más.