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「SHOGUN」旋風はここでも! 多国籍化を感じる結果に
例年どおり、ロサンゼルスのビバリー・ヒルトン・ホテルで開催された第82回ゴールデングローブ賞授賞式。今年のMCは人気女性コメディアンのニッキー・グレイザー(女性単独は初)で、何かと話題だった大統領選に、ノミネート作品の『ウィキッド ふたりの魔女』をうまく絡めるなど、テンポよく軽妙な滑り出しで会場を盛り上げる。
今年の映画部門で最多の8部門10ノミネートを果たしていた『エミリア・ペレス』は、授賞式のトップで発表の助演女優賞でいきなり受賞。ゾーイ・サルダナが涙ながらの大感激のスピーチで場内を湧かせた。『エミリア・ペレス』は作品賞(ミュージカル/コメディ部門)、非英語作品賞、主題歌賞と映画部門では最高の4冠を達成。この結果は予想どおりだったが、今年はいくつかの部門でサプライズも見受けられた。そのサプライズが感動のスピーチとなったのが、主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)のデミ・ムーア。「30年前にプロデューサーから“ポップコーン女優”と呼ばれ、数年前にすべてやりきったと思っていたら『サブスタンス』の脚本が届き、“あなたはまだ終わってない”と宇宙から告げられた」と、キャリアの復活を心から喜ぶ言葉に多くの人が胸を打たれた。主演女優賞はドラマ部門も、『I'm Still Here(原題)』でブラジルのフェルナンダ・トーレスが受賞という番狂わせ。彼女は『セントラル・ステーション』に主演したフェルナンダ・モンテネグロの娘である。
昨年の『オッペンハイマー』のような本命作品が不在とされた今年の賞レース。作品賞(ドラマ部門)を受賞したのは『ブルータリスト』と、こちらもやや驚きの結果。エイドリアン・ブロディの主演男優賞、監督賞の3冠に輝いた。監督のブラディ・コーベットは子役から俳優として活躍し、作り手に転身。家族への感謝で「ドレス姿が美しい」と言われた彼の娘が、会場で嬉し泣きする光景はネットでも熱くシェアされた。
例年、映画部門が注目されるゴールデングローブが、今年はテレビ部門が大きな話題に。「SHOGUN 将軍」がドラマシリーズの作品賞、主演男・女優賞、助演男優賞の4冠という快挙をなしとげたからだ。すでにエミー賞も受賞している真田広之は、世界中の若い俳優やクリエイターに向けて「自分らしくいて、自分を信じて決して諦めないで」とエールを送る余裕のスピーチ。一方で浅野忠信は受賞の瞬間にテンションが急上昇。「皆さん、僕のことを知らないでしょうが、日本から来た俳優です。名前は浅野忠信!」と、あまりに純粋に喜ぶ姿に会場内も素直に拍手喝采で溢れた。通訳も壇上に控えていたが、浅野はすべて自身の英語でスピーチを終えた。
投票者がアメリカ在住以外にも広がって3年目。多国籍化がいくつかの賞の結果を左右した感もある、第82回ゴールデングローブ賞。映画部門は今後のアカデミー賞に向けてさらに混戦となる予感をもたらし、テレビ部門は「SHOGUN」の受賞で、かつてないほど日本でビッグニュースとして報じられたことが“記憶”となるだろう。