アメリカ映画史上の最重要作にして、もっとも待ち望まれた劇場未公開作
1950年代末、ネブラスカ州とワイオミング州で約2ヶ月の間に11人が殺された連続殺人事件。罪を重ねながら逃避行を続けた犯人のチャールズ・スタークウェザーとその恋人キャリル・アン・フューゲートはまだ十代だった──。全米を騒然とさせたこの事件を基に、クレジットなしで参加した『ダーティハリー』(71)ほか数本の脚本を書いただけで、当時無名だったテレンス・マリックが脚本・製作・監督を手掛けた作品、それが『バッドランズ』(73)だ。
続く『天国の日々』(78)と『シン・レッド・ライン』(98)によって巨匠の地位を確立し、『ツリー・オブ・ライフ』(11)でカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞したマリックの監督デビュー作であり、アメリカ国立フィルム登録簿に記載されるなど、今やアメリカ映画史上の最重要作の一本と見なされている。70年代当時、日本では劇場公開が見送られ、1980年5月にTVの深夜映画枠で『地獄の逃避行』という邦題で初放映された。本国公開からすでに半世紀以上を経た現在、もっとも劇場公開が待たれていた傑作が遂に日本初公開となる。
殺人犯キットと恋人のホリーは指名手配され、警察に追われるが、ホリーの目を通して語られるエピソードの数々は、どこか夢の中の出来事のように描かれる。アメリカ中西部の広大な荒地、永遠に続くかに思われる夕焼け、青空へ舞いあがる赤い風船といった美しい映像の数々―童話やおとぎ話を思わせる不思議な世界で繰り広げられるふたりの逃避行は、まばゆい陽光と雄大な自然の中で鮮烈かつ詩情豊かに描かれ、ロードムービーとしても傑出した魅力に溢れている。
キットを演じるのは後に『地獄の黙示録』(79)に主演するマーティン・シーン。ホリー役に『キャリー』(76)のシシー・スペイセク。そして、ホリーの父親役を『デリンジャー』(73)の名優ウォーレン・オーツが演じている。また本作は、『スリー・ビルボード』(17)のマーティン・マクドナー、『ムーンライズ・キングダム』(12)のウェス・アンダーソン、『リバー・オブ・グラス』(94)のケリー・ライカートら、気鋭の監督たちにも大きな影響を与えている。
この度解禁された第一弾ビジュアルでは「彼と一緒なら、地の果てまでも行けると思った」のキャッチコピーとともに見つめ合うキットとホリーの姿をデザイン。また、ふたりが出会い恋に落ち、逃避行へと出発する姿をリズミカルにとらえた特報も解禁。
本作の大ファンだったトニー・スコット監督が『トゥルー・ロマンス』(93)で引用し、最近ではソフィア・コッポラも『プリシラ』(23)で引用した作曲家カール・オルフによるテーマ曲「ムジカ・ポエティカ」のやさしいマリンバの音色も印象的だ。
【あらすじ】
1959年、サウスダコタ州の小さな町。15才のホリー(シシー・スペイセク)は、学校ではあまり目立たないが、バトントワリングが得意な女の子。ある日、ゴミ収集作業員の青年キット(マーティン・シーン)と出会い恋に落ちるが、交際を許さないホリーの父(ウォーレン・オーツ)をキットが射殺した日から、ふたりの逃避行が始まった。ある時はツリーハウスで気ままに暮らし、またある時は大邸宅に押し入り、魔法の杖のように銃を振るっては次々と人を殺していくキットの姿を、ホリーはただ見つめていた──。
★1974年度サン・セバスチャン国際映画祭・金の貝殻賞受賞(テレンス・マリック)、同・最優秀男優賞受賞(マーティン・シーン)
出演:マーティン・シーン シシー・スペイセク ウォーレン・オーツ ラモン・ビエリ 脚本・製作・監督:テレンス・マリック 製作総指揮:エドワード・R・プレスマン 撮影:ブライアン・プロビン、タク・フジモト、ステヴァン・ラーナー 美術監督:ジャック・フィスク 音楽作曲・指揮:ジョージ・ティプトン
1973年|アメリカ|カラー| 1.85:1ヴィスタサイズ|5.1ch|DCP|94分|原題:BADLANDS
キングレコード提供 コピアポア・フィルム配給
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