カバー画像:『オッペンハイマー』より © 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
作品部門 1位 『オッペンハイマー』
読者が選んだ2024年No.1映画は『オッペンハイマー』!
クリストファー・ノーラン監督が見せた映画の新たな境地

© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
重厚なテーマに正面から向き合った
2024年の映画界を象徴する作品として、本誌読者が選んだのは『オッペンハイマー』。そして、ベスト監督の栄冠に輝いたのは、そのメガホンを握ったクリストファー・ノーランだった。常に革新を追求する“天才”ノーラン監督が手がけ、アカデミー賞作品賞・監督賞を含む7部門を制した『オッペンハイマー』。その圧倒的な映画体験は多くの読者の心を揺さぶった。
『オッペンハイマー』は、第二次世界大戦下で原爆開発に携わったJ・ロバート・オッペンハイマーの半生を描いた歴史ドラマであり、科学と戦争、倫理と責任という重厚なテーマに正面から向き合った作品。モノクロとカラーを駆使した視点の使い分けと映像美、緻密な脚本、そしてキャスト陣の圧巻の演技が観客を引き込んだ。特にオッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィーは“世界を変えてしまった男”の内面の葛藤を見事に表現し、アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
本作の最大の魅力のひとつは、IMAXカメラを駆使したノーラン監督の映像表現。CGに頼らず再現することを目指したトリニティ実験のシーンでは、その場にいるかのようなリアルな臨場感と緊張感が生み出され、映像と音響が圧倒的な没入感をもたらした。また、劇伴を手掛けたルドウィグ・ゴランソンの音楽が、映画全体の緊迫感を高める重要な役割を果たした。
ノーラン監督の演出・構成力はまさに巨匠の域に
『オッペンハイマー』は伝記映画という枠を超え、現代に生きる私たちに多くの問いを投げかけた。科学の進歩における光と影、人間の選択の重さ、戦争と核の脅威が世界にもたらす現実。また、終盤のオッペンハイマーの転落は、歴史のうねりの中で個人が翻弄される宿命をまざまざと見せつける。
ノーラン監督はこれまでも、「ダークナイト」シリーズや『インセプション』『ダンケルク』など、独創的な映像表現と哲学的なストーリーテリングで観客を魅了してきた。本作ではその作風をさらに深化させ、歴史に基づいたストーリーをリアルに、かつ壮大に描き切った。2024年を代表する一本として、幅広い層の心を掴んだのも頷ける。
またノーランが監督部門の1位に選ばれたのも納得の結果。徹底したリサーチに基づくリアリズムの追求、俳優たちの能力を最大限に引き出す演出、そして観客を没入させる映像美と構成力は、まさに巨匠の域に達している。今後の作品への期待もますます高まるばかりだ。
テーマのセンシティブさもあり、公開前から様々な反響を呼び、配給元が慎重に日本公開の判断を進めた『オッペンハイマー』。その衝撃は、単なる映画体験を超えて観る者の思考を揺さぶり、問いや議論を生み出し続けている。観客の心に残るこの余韻こそが、本作が多くの読者の支持を受け、映画史に刻まれる一作となった最大の理由ではないだろうか。
STORY
理論物理学者として才能を開花させたオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は若くして物理学界の第一線へ。第二次大戦が世界を飲み込む中、彼は「マンハッタン計画」において原子爆弾の開発に携わる。1945年、「トリニティ実験」で計画の成功を喜んだのも束の間、広島・長崎への投下により想像を絶する悲劇が現実となる。その罪の意識に苛まれながら、彼は核開発競争の加速に強い懸念を抱くようになる。しかし、時代は冷戦へ突入し、赤狩りの嵐の中、彼の人生は大きく変わっていく。
読者のコメント
40代・男性
クリストファー・ノーラン監督がとうとうアカデミー賞に輝いた。好きだった監督だから、とても誇らしい。
60代・女性
2024年は『オッペンハイマー』の映画につきると思います。ドラマ性はもちろんですが、3時間を飽きさせない見ごたえのある映画でした。主役も助演もすべて素晴らしかったです。クリストファー・ノーラン監督作品は、時間軸の理解に難しいところもありますが、この映画はその点わかりやすかったと思います。次回作にも期待大です。
60代・男性
クリストファー・ノーラン監督はいろんなジャンルの作品で一流のもの(おもしろくて、考えさせられる)をつくれる、今一番注目の監督。
20代・男性
もともとエミリー・ブラントのファンだったので『オッペンハイマー』の公開には期待していました。3時間という大作でしたが、ワンシーンごとに見ごたえがあって、あっという間の時間でした*エミリーの迫真の演技もすばらしかった!!
40代・女性
クリストファー・ノーラン監督は鬼才というか天才!2026年の豪華キャストの映画楽しみです!
30代・男性
『オッペンハイマー』は、科学の光と影を描き出したクリストファー・ノーラン監督の力作だとおもった。ロバート・ダウニーJr.は繊細かつ野心的なルイス・ストローズを見事に演じ、圧倒的な存在感があった。
20代・男性
『オッペンハイマー』は、ひとりの男の生涯につきまとう栄光と没落を客観的に描き、感情移入できない作品に仕立てられていた。にも関わらず、完成に向かう行程と時代に取り残されていく男に思わず共感してしまいそうになる。そんな自分の精神的な不安定さにハッとさせられます。
40代・男性
『オッペンハイマー』、上映されるか心配でしたが劇場で観ることができて良かったです。
40代・女性
クリストファー・ノーランの作品は一度ではなく、何度も見ないと理解できないくらい複雑な点もあり、そこがいい!
10代・男性
クリストファー・ノーラン監督の次元や時間、重力、など人智を超えた壮大な設定やアクションに始めは惹かれましたが、その物語には家族愛や死別したパートナーへの愛や想い、友情、復讐など人間味あふれたものが土台として支えていてそのギャップにより惹かれるようになりました。
50代・男性
今の最大の関心事は『オッペンハイマー』のアンサー映画を山崎貴監督がどう作るのか、それだけです!
※山崎貴監督はクリストファー・ノーラン監督と対談した際に「日本側から返答の映画を作らなくてはいけない、という気がすごくしました。いつか実現させたいと思っています」と発言。
監督部門 1位 クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーラン監督
Photo by Manuel Lagos Cid/Paris Match/Contour by Getty Images
WHAT'S NEXT?
クリストファー・ノーラン監督の次回作は?
『オッペンハイマー』で映画史に新たな1ページを刻んだクリストファー・ノーラン監督。次回作への期待が高まる中、2024年末、待望の新プロジェクトに取り組むことが発表された。それが、古代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」の映画化だ。
詩人ホメロスの作とされる「オデュッセイア」は、トロイア戦争に勝利した英雄オデュッセウスが故郷への帰還を目指し、10年にわたる壮絶な旅を繰り広げる物語。神々の思惑や怪物との戦いが描かれるこの叙事詩は、西洋文学の礎であり、あらゆる冒険物語の原点ともいわれる。そんな伝説的な物語をノーラン監督がどのように映画化するのか、すでに映画ファンの間で大きな話題を呼んでいる。
さらに注目すべきは、その豪華キャストたち。『オッペンハイマー』にも出演したマット・デイモンをはじめ、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ゼンデイヤ、ルピタ・ニョンゴ、ロバート・パティンソン、シャーリーズ・セロンといったオールスターキャストが集結すると報じられている。それぞれの役柄はまだ不明だが、この顔ぶれを見るだけでも期待が高まるばかりだ。
ノーラン監督のキャリアの中で、最大規模の製作費が投入されると見込まれている本作は、2026年夏に全米公開予定。ユニバーサル・ピクチャーズによれば「IMAXの新技術を駆使し、世界中で撮影される神話的アクション大作」になるという。撮影は2025年初頭からスタートし、ノーラン監督の新たな挑戦がいよいよ幕を開ける。

次回作では『オッペンハイマー』のマット・デイモンと再タッグ
Photo by Noam Galai/Getty Images for Universal Pictures
『オッペンハイマー』
4K Ultra HD+ブルーレイ:7,260 円 (税込)
ブルーレイ+DVD(ボーナスブルーレイ付):5,280 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
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