インタビュー
カルラ・ソフィア・ガスコン

カルラ・ソフィア・ガスコン
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カルラ・ソフィア・ガスコン プロフィール
1972年3月31日、スペイン、マドリード生まれ。マドリードにある映画学校ECAMで演技を学ぶ。1995年頃から本格的に俳優としてTV番組に出演するようになり、2009年にメキシコへ移住。主な出演作には、メキシコで大ヒットした『Nosotros los Nobles(原題)』(13)やTVシリーズ「レベルデ 青春の反逆者たち」(22)がある。『エミリア・ぺレス』(24)ではカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。
“トランスやLGBTQI+コミュニティの闘士である以前に、私は自分自身を夢のために闘う者だと思っています”
──マニタスはかなり低い声、エミリアはそれよりずっと高い声で演じ分けられていますね?
「私の地声はマニタスとエミリアの中間くらいですが、声をつくるのが大好きなんです。普段から声まねをして遊んでいます。マニタスの声は、小さい頃に兄弟とテレビで見ていたジョン・ランボーを意識してみました。エミリアは高い声で優しさを表現していて、イギリスのシンガー、サマンサ・フォックスからインスピレーションを受けました」
──歌にはどのように取り組まれましたか?
「監督やスタッフには最初に、『私はシンガーでもダンサーでもない』と伝えました。でも幸いにも、撮影前に1年以上の準備期間があったので、猛特訓しました。振付師のダミアン・ジャレと一緒に、マニタスとエミリアの手の動きに特に注目しました」
──ゾーイ・サルダナやセレーナ・ゴメスとの共演はいかがでしたか?
「20年前に、ジャック・オーディアールの映画でゾーイ・サルダナやセレーナ・ゴメスと共演するなんて言われても、絶対に信じなかったでしょう!そういう状況で臆さないためには、彼女たちを姉妹のように、そして役柄として捉えることが大事でした。映画の世界に没入しすぎて、私は少しおかしかったかもしれません。現実とフィクションの境界がぼやける時がありました」
──この映画の公開によって、トランスジェンダーの権利のための代弁者となるわけですが、どのように感じていますか?
「まず、トランスやLGBTQI+コミュニティの闘士である以前に、私は自分自身を夢のために闘う者だと思っています。世界中で何千もの役者が、ほとんど空っぽの劇場のステージで必死に演じています。私もたった一人の観客を前に演じた経験があります。それはとても大変な仕事です。だから、何よりも夢を掴むための勇気と熱意、そして強さを伝えたいと思っています。トランスジェンダーについては、否定されたり、一緒くたに決めつけられたり、笑いものにされたり、侮辱や憎悪を向けられることがなくなってほしいと願っています。私はある意味ラッキーでした。妻や家族のおかげで、自分の生活を続けながら性別移行ができたからです。しかし、職を失って生きるすべが売春しかないトランス女性もいます。誰もが陽の当たる場所で、そして何より普通に暮らせるようになることを願っています」
ゾーイ・サルダナ

ゾーイ・サルダナ
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ゾーイ・サルダナ プロフィール
1978年6月19日、アメリカ、ニュージャージー州生まれ。バレエ・カンパニーを舞台にした『センターステージ』(00)で映画デビュー。その後もハリウッドなどでキャリアを積み『アバター』(09)で世界的に注目を浴びる。他にも「スター・トレック」シリーズ(09~16)や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ(14~23)、など、超大作に次々と出演。待機作は「アバター」シリーズ最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』。
“母国語で演じることができるのは、とても特別なことです。こんな機会は滅多にあるものではありませんから”
──脚本を読んだ時の感想を教えてください。
「まさに並外れていました。筋書きや登場人物も普通ではなく、登場人物たちはみんな、従来の枠にとらわれない生き方をしていました。歌を聞いたときには、さらにワクワクしました。そして、私にもできると、勇気を振り絞るしかありませんでした」
──スペイン語での演技はいかがでしたか?
「カリブ諸島にルーツを持つラテン系の私にとって、最初に耳にした言語はスペイン語でした。母国語で演じることができるのは、とても特別なことです。こんな機会は滅多にあるものではありませんから」
──本作の出演は、ハリウッドで活躍するラテン系の女優としての演技に深みを与えましたか?
「私は演技と社会的立場は切り離して考えるようにしています。キャリアの初期には、社会正義や肩にのしかかる社会的な責任についてよく考えていました。しかし、最近では演技や、演じる作品、そして自身の望む方向性を第一に考えるようになっています」
──ダンサーとしてのトレーニングから得た教えを、演技に応用してきたのでしょうか?
「演じるキャラクターの身体的な側面には活かしてきました。ただ、私は失読症なので、普段はセリフを覚えることにほとんど時間を費やしません。それよりも、リサーチやバックストーリーの構築、監督との会話やメールのやり取りに集中したいと考えています。私は座ってセリフを暗記するのが苦手ですが、この映画ではそれを行いました。セリフの読み合わせをしてくれる人を雇い、メキシコ訛りの練習もしました」
──ダンサー、歌手、俳優としてのパフォーマンスが非常に素晴らしい、あの特別なシーンの撮影にはどれくらいの時間をかけましたか?
「何か月もかけました!1月に『El Mal』とあのシーンの準備を始め、6月に撮影した最後のシーンのひとつになりました。撮影の3日前にセットを確認したので、振付師のダミアンにとってはかなりのストレスだったと思います。でもありがたいことに、ステディカムオペレーターのサーシャ・ナセリと何度もリハーサルをすることができました。このシーンの撮影は、まさに彼とのダンスのようでした。楽しさや驚き、恐怖、そして痛みもありました!撮影後は何日間も背中や肘、首をアイシングしていましたが、やり遂げました。あのシーンはすべて気に入っています」
『エミリア・ぺレス』
2025年3月28日(金)公開
フランス/2024/2時間13分/配給:ギャガ
監督・脚本:ジャック・オーディアール
出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス
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