代表曲「ディファイング・グラヴィティ」「ポピュラー」撮影の裏側とは?
本作で息を呑むほどの映像美を実現したのは、アンドリュー・ガーフィールド主演のミュージカル映画『tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!』(2021)や、本作の監督であるジョン・M・チュウの代表作のひとつ『イン・ザ・ハイツ』(2021)でも撮影を担当したアリス・ブルックス。
彼女とチュウ監督の仲は、南カリフォルニア大学の映画芸術学部時代にまで遡り、物語を紡ぐことに対する熱い思いと互いへの尊重を共通基盤に、気付けば映像作りで協力し合うようになっていたという。

「ジョンとはお互いのプロジェクトに、スタッフとして関わりながら親密になりました。よく覚えているのが、何もないアパートでミュージック・ビデオを撮った時ですね。ジョンが古新聞とペンキを使って、そこをニューヨークあたりの薄汚れた場所へと変貌させました。そのあとで『When the Kids Are Away』(原題)というミュージカル短編映画を監督したいんだと言われたのですが、その情熱と具体性たるや凄まじくてノーとは言えませんでした。しかもミュージカル映画などほとんどなかった時代だっただけに、子供の頃からミュージカルが大好きだった私は即決しました。以来22年間、ずっと彼と友人です」と学生時代のエピソードを明かしている。
不朽のミュージカルとして20年以上愛され続け、さらにはチュウ監督がずっと映画化を熱望していた本作の撮影監督として選ばれた理由には、まだ互いに若手だった頃から培ってきた長年の信頼関係が一つの要素としてあったようだ。

本作では、夜明けとともに後の“善い魔女”グリンダ(アリアナ・グランデ)、日暮れとともに後の“悪い魔女”エルファバ(シンシア・エリヴォ)が映し出されており、このアイデアは早くにチュウ監督とブルックスの話し合いから浮上していたという。善と悪、光と闇、照らされる部分と陰になる部分、そうしたことに関する意見交換から生まれた案で、太陽が燦々と輝くマンチキン国で登場するグリンダは、朝日に照らされたシャボン玉にきれいに収まっている。また「ポピュラー」でも、長い朝焼けの中でグリンダが見事な歌唱を披露する。
対してエルファバの場合は、大事なシーンはいつも日暮れ頃。フィエロとの出会いを歌う「アイム・ノット・ザット・ガール」は、日没の直後の森の中で歌い、本作の大きな見せ場の一つ「ディファイング・グラヴィティ」の歌唱シーンも夕刻だ。ブルックスはこの表現について「子供の頃、駐車場に立っていた丸いガラス製の街灯を、月と見間違えてから“光”というものに夢中になりました。私にとって光は、すべてを具現化しています。光は欲望を剥き出しにするし、秘密を覆い隠します。今回の作品にこれだけ惹かれるのもそれが理由です。準備段階で早々にジョンと深掘りしたテーマが、善vs悪、光vs闇でした。この映画では光がむしろ闇を象徴し、闇もまた光を象徴します」と幼少期の体験を回顧しながら、光を巧みに操ることで本作の幻想的な世界観を映像に映し出していったと明かしている。

<STORY>
魔法と幻想の国オズにある<シズ大学>で出会ったふたり― 誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバと、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダは、大学の寮で偶然ルームメイトに。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。
『ウィキッド ふたりの魔女』
大ヒット上映中!
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジwithミシェル・ヨーandジェフ・ゴールドブラム
監督:ジョン・M・チュウ
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:ミュージカル劇「ウィキッド」/作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ、脚本:ウィニー・ホルツマン
配給:東宝東和
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