映画『ノスフェラトゥ』はロバート・エガース監督が幼少期に夢中になった1922の映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』に独自の視点を入れ創り上げた作品。
物語は不動産業者のトーマス・ハッター(ニコラス・ホルト)が仕事のためトランシルヴァニアに住むクライアント、オルロック伯爵(ビル・スカルスガルド)へ会いに行くところから始まる。トーマスの不在中、彼の新妻エレン(リリー=ローズ・デップ)は夫の友人宅で過ごすが、ある時から夜になると夢の中に現れる得体のしれない<彼>の幻覚と恐怖感に悩まされるようになる。エレンは夫の帰りを待ちながら、日を追うごとに自身の意識を越え迫る<彼>への恐怖につのらせていく。
ウィレム・デフォーはエレンの治療にあたるフォン・フランツ医師を演じており、『ライトハウス』『ノースマン 導かれし復讐者』に続き、ロバート・エガース監督とは3度目のタッグ。今回到着したインタビューでは監督との協業などについてのほか、これまで何度も出演してきた吸血鬼映画自体についても語っている。
「求めているものは“冒険”だよ。そしてこの脚本には“冒険”が詰まっていた」
—―本作に出演されることになったきっかけを教えてください。本作でエガース監督とは3作目のタッグとなります。彼の作品の魅力とは何でしょう?
「彼の作品も映画づくりの姿勢も好きだし、一緒の部屋にいると刺激を受ける。彼との仕事は楽しいんだ。彼の創り出す世界は、俳優の私にとっては、とても美しい世界に思える。詳細にまで気を配り、何かするときには明確な目的がある。自分なりの基盤に基づき映画を制作している。その意味で映画づくりの伝統主義者と言えるかな。リサーチも入念で、彼のセットのすべてに歴史的な意味があるんだ。彼のような人は珍しい。加えて一緒に仕事する人たちも良く知っている人たちがチームを構成しているので、映画を意図した結果に持っていける可能性も高いんだ」
(左から)ウィレム・デフォー、ロバート・エガース監督
Photo Credit:Christian Tierney/Universal Pictures
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—―『ノスフェラトゥ』は監督の念願かなって制作が実現した情熱の1本ですが、初めて脚本を読んだときの感想はいかがでしたか?
「とにかくロバートと仕事できれば満足という気持ちだったし、この作品を彼が長い間作りたがっていることも知っていた。完成した脚本を読んだとき、とても楽しめたしね。僕自身は脚本を読むとき出来についてよりも、好きかどうか、やりたいかどうかという観点から読む。求めているものは“冒険”だよ。そしてこの脚本には“冒険”が詰まっていた。また、僕のために書き下ろしてくれたキャラクターには、ロバート自身が関心を持っているテーマがたっぷりと詰め込まれていた。役づくりには、様々な素晴らしいリサーチを提供してくれるだろうという事も分かった。彼自身以前は俳優をやっていたこともあり、もしロバートが演じたとしたら、きっとこの役だろうと思ったね。それを考えても、この役には特に気を配ってくるだろうということも分かったんだ」
—―そのフォン・フランツ教授を演じてみて、このキャラクターの一番の魅力は何だと感じますか?役柄を作り上げていく上で参考にした人物などいたら教えてください。
「私自身かなり前に『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』という映画でマックス・シュレックを演じた(*マックス・シュレックは『吸血鬼ノスフェラトゥ』でオルロック伯爵を演じた俳優)。その映画はコメディだったが、あの時に1922年のオリジナル版に出逢った。とても気に入ったね。だから今回はそこと同じところを再訪する必要はないと感じたんだ。ロバートは1922年のドイツ映画を源の素材として使用したが、僕は今更1922年版を意識したり参考にしたりする必要はないと思った。本作はリメイクではなく、同じ源をもとに彼の9歳から続けてきた映画つくりの技を磨く作品として完成させたんだ」

――吸血鬼は映画ばかりでなく、様々な媒体のテーマとして愛され続けてきました。なぜだと思いますか?吸血鬼の魅力とは何だと思いますか?
「確かに吸血鬼をテーマにした様々な伝説的な作品が作られてきた。私自身、3、4本関わったよ。なぜこれまで吸血鬼というテーマが愛され続けてきたのかという本もあるよね。死にきれない人が生きている人を尋ねてくる、というテーマにまず興味を惹かれるのだと思うよ。人間生まれた瞬間から、誰もが死ぬという事を知っている。その点から一生僕らは死という意識と、どこかで向き合いながら生きている。だからこそ、死への考え方にひねりを入れることで、好奇心をかきたてることになる。同時にセックスやロマンスのような側面も描くことで、それも一層強まる。それでフレキシブルなフォーク・レジェンドのように、多くの人が共鳴できるテーマになっているのだと思うよ」
『ノスフェラトゥ』
5月16日(金) TOHOシネマズ シャンテほかにて公開
配給:パルコ ユニバーサル映画
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