プロデューサー土屋敏男のメッセージと称賛のコメント
「街の繊維産業に光を当てる映画を作ってほしい」と市の依頼を受け、三河・蒲郡市を訪れた岩間玄監督は途方に暮れた。1200年前、日本に初めて綿花がもたらされた街。戦後、衣類が不足する中、織れば飛ぶように売れた空前の好景気で朝から晩まで街のあちこちで「ガチャン、ガチャン」と音が鳴り響いていた。しかし、かつての活気は失われ、織機の音も聞こえてこない。そこにあるのは、街の構造的な問題と人々の諦めムードだった。ここに描くべき希望があるのか?
そんな中、わたを種から育て紡ぐ80歳の職人と出会い、映画作りがその職人の背中を押し、街を揺さぶり、人々の眠っていた情熱が燃え上がっていく。そして、舞台は蒲郡からロンドンへ怒涛の如く展開し、日本のモノ作りの本気が、海を越えて人々の心を掴み、「繊維の街」に奇跡をもたらす。
2020年、「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道」でデビュー、世界にインパクトを与えた映画監督・岩間玄が、「進め!電波少年」などのテレビ界の伝説的プロデューサー・土屋敏男とがっぷり四つに組んで送るド迫力と感動のエンタメドキュメンタリー。語りは『ケイコ 目を澄ませて』(22)で第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞ほか数々の賞を受賞した岸井ゆきの。
これは決してこぢんまりした産業映画ではない。それどころか、作り手も被写体も予想だにしなかった方向に転がり出し、予定調和を次々と破壊する再生と復活への狼煙の物語である。

- YouTube
youtu.be各界から寄せられた称賛のコメント
「斜陽になった地域産業」を描くために、いったい何を撮影すればいいのか。土屋と同じく日テレ出身の監督・岩間玄は、自転車を入手して舞台である蒲郡の街を走り回る。なぜかたいてい雨が降っている。「三河木綿って何ですか?」「どうして斜陽になったんですか」と多くの人に声をかけ続け、時に激しくネガティブな反応を受けて悄気かえりながらも、精力的に撮影を続けていく。その姿勢が、「応答セヨ」という本作のタイトルに反映されている。
「応答セヨ」に応えてくれる人たちが、やがて出現してくる。そこからは一気呵成で、まるでロケットのような見事な展開だ。蒲郡市博物館に所蔵されている江戸時代のデザインサンプル帳をもとに、三河木綿の伝統的なストライプ柄「三河縞」を再現するこころみが進められる。携わる人たちの顔が、表情が、物語が進むごとにどんどん変わっていくのがすごい。
やがて物語は、ロンドンの街へと向かう。西欧の街で披露される三河木綿は、「日本の古い伝統」という表情を脱却し、まったく新しく斬新な風情へと進化しているようにさえ見える。そして最後には、驚くべき奇跡的な瞬間が訪れる。このラストを観るためだけにも、本作を観る価値はあるとさえ感じた。
日本の古いドキュメンタリー映画では、制作者は一歩引いて客観的な第三者として対象を見つめようとする作品が多い。しかし本作は「応答セヨ」と対象に迫り、コミットし、監督ら制作者の当事者性を前面に出して出演者らとともに物語を紡ぎだしている。そこには土屋敏男の「電波少年」以来の一貫した制作姿勢も感じられ、さらにそこから一歩踏み込んで、これこそが二十一世紀ドキュメンタリーの面白さであると強烈に印象づけられるのだ。
佐々木俊尚(ジャーナリスト・評論家)
『わたのまち、応答セヨ、めっちゃ良かった!! これはとても力強く、そして志が高い仕事だ。
映画が現実に踏み込み、現実と共に悩み、そして現実を明らかに変革する一つの手段として、活き活きと鼓動する。確信犯としてのその伴走は、効果的な伝統文化支援、ある種の新しい地域支援や歴史の掘り起こしにも繋がっていく。
三河縞の美しさと、それに関わる人々の時代を超えたピュアな思いと。支え、寄り添い、心震わせ、心を通じながら。
作り手のその姿勢を映画の神様は見逃さない。
本気と覚悟が試される、そんな環境にある方に是非見ていただきたい。奇跡は他人事ではない。私にも、そしてあなたにもきっと訪れるのだ』
素晴らしい作品をありがとうございます!
大友啓史(映画監督)
「わたのまち、応答セヨ」、昨日の初日舞台挨拶は仕事で行けなかったので、本日遅ればせながら視聴。地域メディアの役割とか、地域の誇りの空洞化とか、自分がこれまで10年以上、色々と語ってきたことや認識が全て崩壊するくらい、いい意味で打ちのめされる映画だった。地域で本気で本物を作る人たちを、メディアで本気で本物を作る人たちが企画し撮影し編集するとこういう作品になるのか。
企画のはじまりは、よくある自治体依頼の地域活性化の映画制作案件だったそうだが、映画作りを契機に、わたのまち蒲郡市が本気で変わっていくかもしれない、そんな可能性を感じた。そして、監督の岩間さんとプロデューサーの土屋さんの本気に、日本の地域やモノ作りの未来を感じた。
久しぶりに、胸が震え、心が躍り、勇気を握りしめる映画に出会えた。あと3回は見てこの世界観をかみしめたい。本当に超おすすめです。
村上圭子(メディア研究者)
(C)ゴンテンツ