東京・京橋の国立映画アーカイブでは、2023年度の「第一次・劇映画篇」、2024年度の「第一次/二次・劇映画篇」に続き、2025年7月15日(火)より上映企画「返還映画コレクション(3)――第二次・劇映画篇」を開催する。

1937年から太平洋戦争末期の44年までの諸作を中心に29プログラム(31作品)

アメリカ議会図書館が所蔵していた約1,400 本にも及ぶ戦前・戦中期の日本映画の可燃性フィルム群が、1967 年の第一次から1984 年の第四次にかけて日本に返還された。同館の基盤となるコレクションを形成した「返還映画」の中には、戦時期に米国内の各地で日系人から接収されたものや、戦後に民間情報教育局(CIE)の覚書「非民主的映画の排除」によって上映を禁止された劇映画の一部等が含まれていた。同館では、長年にわたり整理作業に取り組んできた返還映画コレクションの収蔵時の経緯等について再調査を実施し、収蔵時期の明確になった劇映画から順次(再)公開している。

画像: 『愛國の花』

『愛國の花』

本企画では、1967 年にアメリカ議会図書館から最優先で受け入れた第一次返還映画に続き、1968 年に「第二希望」として返還を受けた劇映画を採りあげる。

映画界が臨戦体制に入った1937 年から太平洋戦争末期の1944 年までの諸作を中心として、29 プログラム(31作品)に編成。上映機会の限られてきた稀少な第二次返還映画が、同館においてコレクションという形でまとめて紹介されるのは今回が初という。

見どころ1 戦時体制下における映画の光と影

戦前・戦中期に心理・情報戦の資料として米国内外で接収され、その後当館に返還されたコレクションには、映画検閲や映画国策という特殊な政治状況下で製作・公開された作品が多く含まれている。本企画は、映画界が臨戦体制に入った1937年から太平洋戦争末期の1944年にいたる過程で生み出された映画の光と影を再検討する機会を提供する。

見どころ2 1930年代~40年代の日本映画黄金期における埋もれた作品の再発見

無声映画『紅蝙蝠 第一篇』(1931)や、日本初のゾンビ映画とも形容される異色作『怪奇 江戸川乱山』(1937)など、日本映画黄金期における埋もれた作品を約50年ぶりに上映。また、太平洋戦争末期に製作されたミュージカル仕立ての喜劇『愉しき哉人生』(1944、成瀨巳喜男)をはじめ、清水宏、伊藤大輔、五所平之助、マキノ正博ら巨匠監督たちによる名作群に改めて注目したい。1939年の映画法施行から1945年の敗戦までに、日本の映画人が様々な国家統制の中でどのような作品を発表したのかを確認できる絶好の機会となっている。

画像: 『怪奇 江戸川乱山』

『怪奇 江戸川乱山』

画像: 『愉しき哉人生』

『愉しき哉人生』

見どころ3 サイレント映画の弁士・伴奏付上映、講演等のイベントも実施

8月9日(土)13:00の回『紅蝙蝠 第一篇』は、片岡一郎氏(活動写真弁士)の説明と宮澤やすみ氏(無声映画楽士)の三味線演奏とともに堪能できる。 8月23日(土)13:00の回の『海の母』(浪曲映画)の上映後には、『浪花節 流動する語り芸―演者と聴衆の近代』 (せりか書房、2017年)の著者・真鍋昌賢氏(北九州市立大学文学部教授)による講演を行う。

画像: 『紅蝙蝠 第一篇』

『紅蝙蝠 第一篇』

画像: 『海の母』

『海の母』

  1. 『紅蝙蝠 第一篇』
    (1931、田中都留彦)
  2. 『召集令』(1935、渡邊邦男)
    『進軍の歌』(1937、佐々木康)
  3. 『怪奇 江戸川乱山』
    (1937、下村健二)
  4. 『相馬の金さん』(1938、稲葉蚊兒)
  5. 『心の太陽』(1939、深田修造)
  6. 『エノケンの頑張り戰術』
    (1939、中川信夫)
  7. 『無明有明[後篇]』
    (1939、松田定次)
  8. 『征戦愛馬譜 暁に祈る』
    (1940、佐々木康)
画像: 『相馬の金さん』

『相馬の金さん』

9. 『美女桜[暴風篇・黎明篇]』
(1940、大曽根辰夫)
10. 『舞台姿』(1940、野村浩将)
11. 『權三と助十』
(1940、古野栄作、堀内眞那夫)
12. 『二本松少年隊』
(1940、秋山耕作)
13. 『都会の奔流』(1940、佐々木啓祐)
14. 『美しき隣人』(1940、大庭秀雄)
15. 『姉の出征』(1940、近藤勝彦)
16. 『嵐に咲く花』(1940、萩原遼)
17. 『落花の舞』(1940、西原孝)
『まごころの歌』(1941、蛭川伊勢夫)
18. 『女の宿』(1941、犬塚稔)

画像: 『君こそ次の荒鷲だ』

『君こそ次の荒鷲だ』

19. 『愛國の花』(1942、佐々木啓祐)
20. 『海の母』(1942、伊賀山正徳)
21. 『家に三男二女あり』(1943、瑞穂春海)
22. 『秘話ノルマントン號事件 假面の舞踏』
(1943、佐々木啓祐)
23. 『サヨンの鐘』(1943、清水宏)
24. 『愛機南へ飛ぶ』(1943、佐々木康)
25. 『宮本武藏 決鬪般若坂』(1943、伊藤大輔)
26. 『君こそ次の荒鷲だ』(1944、穂積利昌)
27. 『愉しき哉人生』(1944、成瀨巳喜男)
28. 『五重塔』(1944、五所平之助)
29. 『野戰軍樂隊』(1944、マキノ正博)

画像: 『宮本武藏 決鬪般若坂』

『宮本武藏 決鬪般若坂』

企画名:返還映画コレクション(3)――第二次・劇映画篇 (英題:Repatriated Film Collection [Part 3]: Fiction Films, 1931-1944)
会期:2025年7月15日(火)-8月24日(日) ※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]

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