【『Mr.ノボカイン』】肉体無痛男を追い詰める“感情無痛男”を演じたレイ・ニコルソンとは？

父はあの名優！「彼がスクリーンに登場すると目が離せない」と監督も太鼓判

生まれつきどんな痛みも感じない“無痛の男”ノボカインが、強盗に連れ去られてしまった愛する彼女を救うために“痛みゼロ”という唯一の武器を駆使して人生初の本気スイッチが入る。

そんなノボカインを取り巻く共演者には、ノボカインの彼女役にアンバー・ミッドサンダー（『プレデター：ザ・プレイ』）、ノボカインの親友役にジェイコブ・バタロン（『スパイダーマン』シリーズ）、強盗役にレイ・ニコルソン（『プロミシング・ヤング・ウーマン』）といった若手注目俳優たちが集結。監督は、二人での初監督作品『Body』（原題/2015）でいきなりベネツィア映画祭にノミネートという鮮烈デビューを果たした、ダン・バーク＆ロバート・オルセンが務めている。

本作でノボカインの前に立ちはだかる、最悪最大の敵――それが、レイ・ニコルソン演じる強盗犯のサイモンだ。だがこの男、ただの金目当ての悪党ではない。怒りと攻撃性に満ちた支配欲のかたまりで、どこで何をしでかすかわからない“予測不能型バクハツ野郎”。冷酷かつ計算高く、周到に銀行強盗を仕掛ける一方で、ノボカインが痛みを感じないことを逆手に取り、“心のスキマ”をエグってくる厄介さ。物理攻撃だけじゃない、メンタルでもガンガン責めてくるその圧が、ノボカインを“ぬるま湯無痛ライフ”から引きずり出し、ムチャぶりヒーローへと進化させる引き金になる。

そんなサイモンを演じたのが、名優ジャック・ニコルソンを父に持つレイ・ニコルソン。父ジャックといえば、あの狂気に満ちた顔でおなじみ、ホラー映画の金字塔『シャイニング』(80)をはじめ、ジョーカーとして鮮烈な悪役を演じた『バットマン』(89)、そして精神異常を装いながらも“人間らしさ”を見せつけ、アカデミー賞主演男優賞を獲得した『カッコーの巣の上で』(75)など、映画史に名を刻む“表現力のモンスター”。そんな“クレイジー・レジェンド”のDNAを見事に受け継ぎ、息子レイ・ニコルソンも、圧倒的なカリスマとキレ味鋭い存在感で、ハリウッドの次世代を担う逸材として注目を集めている。

監督のダン・バークは、そんな彼のキャスティングについて「彼は並外れたカリスマ性を備えており、健全で誠実で好感の持てるカリスマ性を持つジャックとの対比にぴったりでした。レイは少し予測不可能ですが、人を惹きつける魅力があります。彼がスクリーンに登場すると目が離せなくなりますが、同時に少し怖さを感じさせます」と、その独自の魅力についてアツく語っている。

また、脚本家のラース・ジェイコブソンも、サイモンというキャラクターの“単なる悪役ではない”一面を強調し、「レイは怒りと攻撃性、支配欲に突き動かされている非常に危険な男です。でも、そんな極端な性質の中にも、どこか人間的な部分をレイは見事に表現してくれました」と大絶賛。その演技によって、サイモンというキャラクターは一気に深みを増し、物語にリアルなドラマと重みが加わっている。

ニコルソン自身も、本作で描かれる“2人の無痛男”の対比に強く惹かれたという。「たとえサイモンがサイコパスであっても、心は別の場所にあるのかもしれない。『Mr.ノボカイン』は、肉体的な痛みをまったく感じない男と、それが彼の人生に与えた制限について描いています。そこに、感情的な痛みを感じない強烈なキャラクターであるサイモンが登場します。これは興味深い視点だと思いました。また、それらのアイデアを駆使してアクション映画をアレンジするのは楽しかったです」と、“痛くないけど刺さる”男・サイモンの深掘りを楽しみながら、キャラクターを組み上げていったことを明かしている。

そんな“肉体の痛みを感じない男”と“感情の痛みを感じない男”の真っ向勝負こそ、本作最大の見どころの一つ。ふたりのぶつかり合いから生まれる、笑いと衝撃と、ほんの少しの切なさをぜひ、劇場のスクリーンで体感してほしい。

【STORY】
生まれつきどんな痛みも感じない体を持つ男、Mr.ノボカイン。マジメな銀行員としてごく普通の人生を歩んできた彼だったが、ある日大切な彼女が銀行強盗の人質にとられてしまう。“戦闘力ゼロ”のノボカインが彼女を助け出すために使える武器は、“痛みゼロ”の体だけ。生まれて初めて無痛の体が役立つ時がきたが、不死身というわけではない。