人生を揺るがす映画がここにある—
『動くな、死ね、甦れ!』から始まる映画史に輝く伝説のトリロジーがついに甦る
1990年、映画の表舞台に彗星の如く現れた54歳の新人監督、ヴィターリー・カネフスキー。『大人は判ってくれない』と並び称される少年映画の金字塔『動くな、死ね、甦れ!』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人賞)に輝き驚愕のデビューを果たした彼は、その続編『ひとりで生きる』でカンヌ国際映画祭審査員賞受賞。そして3作目となる初のドキュメンタリー『ぼくら、20世紀の子どもたち』では、ソ連解体後の混沌としたロシアで社会から弾き出されたストリート・チルドレンたちの生きる姿や心の内をありのままに映し出し、世界に衝撃を与えた。この3部作は、自身もストリート・チルドレンで不良少年だった監督の経験をもとに撮られたものであり、フランソワ・トリュフォー作品におけるアントワーヌ・ドワネルのように、主人公を演じるパーヴェル・ナザーロフと彼の守護天使的な役割を与えられたディナーラ・ドルカーロワを追った3部作でもある。映画と出会った悪童が起こした奇跡は、人生を揺るがす作品として人々の中で生き続けるーー。
この度解禁したポスターに映るのは、『ぼくら、20世紀の子供たち』に登場する成長したパーヴェル・ナザーロフのリアルな姿。本作は、ソ連解体後のストリート・チルドレンを水平の目線で捉えたドキュメンタリーであり、ワレルカと守護天使の物語の最終章となる作品である。

カネフスキー監督
「ヴィターリー・カネフスキー トリロジー」上映作品
『動くな、死ね、甦れ!』★1990年カンヌ国際映画祭カメラ・ドール受賞

舞台は第二次大戦直後、収容所地帯と化したソ連の炭鉱町。貧困、暴力、脅し、殺人…大人でさえ自分を守ることで精一杯な世の中を、危うげながらも逞しく生きる12才の少年ワレルカ。スケート靴の盗難騒動や、学校のトイレにイースト菌を入れたり、機関車を転覆させたりなど、彼の引き起こす無垢な、しかし、やってはならない悪さは、母親への反発と相まって次第にエスカレートしていく。そんな彼の前に、守護天使のように現れては、危機を救ってくれる幼馴染の少女ガリーヤ。二人に芽生えた淡い想いは次第に呼応していくが、やがて運命はとんでもない方向へ転じていくのだった…。
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ
【1989年/ソビエト/モノクロ/105分 】
『ひとりで生きる』★1992年カンヌ国際映画祭審査員賞受賞

15才になったワレルカは、少年期に別れを告げようとしていたが、大人たちの世界はますます悲劇的な様相を呈し、ワレルカにとって唯一、ガリーヤの妹ワーリャと一緒にいる時だけが心落ち着く時だった。そんな中、ある事件をきっかけに学校を退学になったワレルカは、ワーリャの思いをよそに、ひとりで町を出る。故郷や家族と離れ、ひとりで生きるワレルカ。一方、残されたワーリャは、返事の来ないワレルカへの手紙を送り続け・・・。随所に幼さを見せながら、大人へと成長していく少年の微妙な心の風景を見事にスクリーン上で開花させた抒情溢れる傑作。
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ
【1991年/フランス・ロシア/カラー/97分 】
『ぼくら、20世紀の子供たち』(デジタルリマスター版)

国際的な評価を得たカネフスキーが次にカメラを向けたのは、社会体制が崩壊したロシアの都市に巣くうストリート・チルドレンたち。彼は、取材の最後に「何か歌を歌ってくれないか」と子供たちに要望する。窃盗、強奪、売春、そして殺人…残忍性をエスカレートさせていく彼らの裏側に傷つきやすい感受性を見るカネフスキー。やがてカメラは、思わぬ場所でワレルカの面影を残したパーヴェル・ナザーロフの姿を捉える。そして、2本の映画で共演したのち、全く異なる人生を歩み成長していったパーヴェルとディナーラが再会を果たす。
監督:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ
【1993年/フランス/カラー/84分 】