あのアクションはどうやって実現した? あのセリフや小道具にはどんな意味が? 世界中が熱狂する『ミッション:インポッシブル:ファイナル・レコニング』には、知れば思わずニヤリとしてしまう仕掛けや秘話が盛りだくさん。超過酷な撮影裏話からファン必見のイースターエッグまで、8つの秘話&トリビアを徹底解説!(デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』より ©2025 PARAMOUNT PICTURES.
【 ネタバレ全開!】多くのネタバレが含まれますので未鑑賞の方はご注意ください。
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専門家も“不可能”と断言した空中アクション
飛行機の翼の上でのアクションは12分間がリミットだった
本作で最大級の見せ場のひとつとなるのが、トム・クルーズ自らノースタントで挑んだ、複葉機の翼の上で繰り広げられるアクションシーン。時速約225キロ(新幹線なみ!)の風を受けながら、空中で体ひとつで踏ん張るこの危険な撮影は、当初、“実現不可能”との声も上がっていた。
監督が米「GQ」誌の取材で語ったところによれば、撮影前に“ウィングウォーカー”と呼ばれる専門のパフォーマーたちに相談した際、「そんなシーンの撮影は不可能」と断言されたという。だが、“不可能”という言葉にこそ燃えるのがトム。彼は別の専門チームとともに挑戦を続け、ついにその“不可能”を可能にしてしまったのだ。
とはいえ、撮影現場はまさに命がけ。強風のため翼の上では呼吸さえも困難で、1回の撮影は12分が限界だったという。ヘリコプターから見守るスタッフがタイマーで時間を計測しながら、ギリギリのタイミングを見極めて撮影が進められた。極限の状況下でも不可能に挑み続けるトムの姿は、まさに“イーサン・ハントそのもの”だ。
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ルーサーが最期の台詞に込めた思いとは?

ルーサーのラストシーンはイーサンとの長きにわたる絆が感じられるものに
イーサン・ハントと並び、一作目からシリーズ皆勤賞の盟友ルーサー。その最期の台詞は「No one is safe from Phineas Phreak(フィニアス・フリークからは誰も逃れられない)」だった。この一言には、シリーズ初期からのファンなら胸を突かれずにはいられない、深い意味が込められている。
“Phineas Phreak”とは、1作目の『ミッション:インポッシブル』(1996)にも登場したルーサーのハッカー時代の別名。イーサンがIMFに彼をスカウトする際に、このコードネームで彼を呼ぶ場面があった。
そんな過去の名を、最期に口にしたルーサー。それは単にイースターエッグというだけではなく、自身の歩んできた道のり、そしてIMFという居場所で築いてきた人生を振り返るような言葉だった。約30年にわたる物語の中で、ひとつの輪が静かに閉じるような、シリーズへの深いオマージュとなっている。
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トム・クルーズ、炎上パラシュートでギネス世界記録達成
物語のクライマックスを飾るのが、複葉機から脱出したイーサンが絶体絶命の危機に陥る“炎のパラシュート”スタント。監督さえ撮影中に「恐怖を感じた」と語るほどの衝撃的なシーンだ。トムはこのシーンをノースタントでなんと16回も繰り返し、これが先日「個人として最多の炎上パラシュートジャンプ回数」としてギネス世界記録に認定された。
このシーンは南アフリカのドラケンスバーグで撮影され、トムは約7,500フィート(約2,300メートル)の高さのヘリコプターから落下を繰り返した。炎上したパラシュートは約3秒間燃え、その後すぐに切り離して予備のパラシュートを展開。時には重さ約23kgのカメラ装備を付けたまま挑戦したというから、その危険度たるや史上屈指。ギネス世界記録本部も「真のアクションヒーロー」と大絶賛した。
ちなみにトムは本作でもう一つギネス記録を達成。『アウトロー』(2012)から『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(2025)までの11本連続で世界興収1億ドル以上を達成した俳優としてもギネス認定されている。
▼炎上パラシュートスタントを16回も行った
「ミッション:インポッシブル」公式インスタグラム(@missionimpossible)より
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手紙に書かれた日付の意味

大統領が手紙に書いた日付は「ミッション」シリーズにとっても大事な日
イーサンがスローン大統領(アンジェラ・バセット)から受け取った手紙に書かれた「1996年5月22日」という日付に注目。これは、若き日のニーリー海軍少将(ハンナ・ワディンガム)とスローン大統領にとっての“運命の一日”を意味しており、この手紙を受け取ったニーリーがイーサンを信じて決断を下す大事なシーンへとつながった。
実はこの日付、『ミッション:インポッシブル』第1作が全米で劇場公開された日でもある。本作には様々な過去作へのオマージュが随所に散りばめられているが、これも長年のファンへ向けたイースターエッグのひとつだった。この日付自体が物語に直接影響するわけではないが、約30年にわたるシリーズの“集大成”を感じさせる描写であるとともに、物語と現実とを結びつける粋な演出となっている。
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ラストシーンにイルサが登場?

ラストシーンについてのサイモン・ペッグの解釈とは?
ファンの間で大きな話題を呼んだのがラストシーンに登場する“ある人影”。本作は、すべての戦いを終えたイーサンたちがトラファルガー広場に集結し、最後に群衆の中へと消えていくシーンで幕を閉じるが、そのときイーサンの隣で寄り添うように歩いているのがイルサ(レベッカ・ファーガソン)ではないかと憶測を呼んでいるのだ。
イルサは前作でガブリエルに殺されるという衝撃的な展開を迎えたが、「実は生きているのでないか」という声も多く、今回の復帰を望むファンは少なくなかった。ラストシーンではその人物は後ろ姿しか映らず、この一場面だけのためにレベッカ・ファーガソンが出演したとは考えにくいものの、イーサンと一瞬横並びになるという描写は、多くの解釈の余地を残すものでもある。果たして真相はいかに?
一方、このラストシーンの撮影中に「少し感傷的になった」と語るのはベンジー役のサイモン・ペッグ。シリーズ完結とも、まだ続編の可能性が残されているとも受け取れる、絶妙な締めくくりとなっている本シーンについて、ペッグは米メディア『Collider』の取材で次のように語っている。「もしこれがシリーズ最後の作品になったとしても、トムは観客に希望を持たせたいと思っているんです。トムが“終わった”という印象を観客に与えたくないと思っているところが、僕は本当に大好きなんです。だから、あのラストシーンは本当に最高の瞬間でしたね」。
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ヘイリー・アトウェル、妊娠8ヶ月でアクションを撮影

アクション撮影も自ら行ったヘイリー・アトウェル
本作の撮影中に実は妊娠していたことを明かしたのは、前作で初登場し、今回IMFに加入するグレースを演じたヘイリー・アトウェル。アメリカの深夜番組「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン」に出演した際、彼女は「あとからいくつかの要素を追加するために格闘シーンを何度か撮り直しました。そのとき実は妊娠8か月半だったんです」と告白し、視聴者を驚かせた。
アトウェルの言う“格闘シーン”とは、映画序盤で、彼女がイーサンとともに敵と戦う場面。拷問を試みる敵を相手に、アトウェルも武術を駆使して激しい戦いを繰り広げる。そのタフでスピーディな動きは撮影当時の状況をまったく感じさせない。アトウェルは「(撮影チームは)みんな協力的で『座ってていいよ。スタントダブルに任せるから』と言ってくれたんです。でも私は『ここまで頑張ってきたんだから自分でやらせて!』って言ったんです」と自ら撮影を志願したことも明かしている。
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イーサンの過去が描かれなかった理由
イーサンと敵役ガブリエルの過去の因縁は謎のまま
前作で提示された数々の謎や伏線が本作では次々と回収されていくが、一つ大きな謎のまま残されたのがイーサンと敵役ガブリエル(イーサイ・モラレス)、そして謎の女性マリーをめぐる過去の物語。前作ではガブリエルがマリーを殺害し、それがIMFにイーサンが入るきっかけになったことがほのめかされていたが、その背景が本作で語られることはなかった。
これについて監督はポッドキャスト「Happy Sad Confused」で言及している。実は、イーサンたちの過去を描いたシーンは撮影されていたものの、最終的にはそのシーンを本編から除外する決断を下したという。理由の一つは、映画がこれ以上長い上映時間になるのを避けるため(本作はシリーズ最長の上映時間となっている)。もう一つは「イーサンの過去にはある程度の謎が残っているべき」という監督の判断だった。あえて完全に説明しないことで余白を残すという、シリーズならではの選択といえるだろう。
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ポストクレジットシーン(おまけシーン)が存在?

ポストクレジットシーンの撮影は直前で見送られた
マーベル映画などでおなじみのポストクレジットシーン(エンドロール後に流れる追加映像)。じつは本作にもそれにあたるシーンが用意されていたことを監督が「USA トゥデイ」紙の取材で明かしている。ところが、そのシーンの撮影を前に、トムが「今回の映画には必要ない」と判断し、最終的に撮影は見送られたという。
その内容について問われた監督は、「それは言えません。別の映画で登場するかもしれませんから」とコメント。ポストクレジットシーンは、しばしば“次回作への布石”として使われることもあり、どんなシーンを撮影するつもりだったのかファンとしては気になるところ。何より「別の映画に登場するかも」という一言は、物語がまだ終わっていない可能性を示唆しているとも受け取れる。
FUN FACT
プチ・トリビア
トム・クルーズと並ぶほどに自らスタントを積極的に行ったのがパリス役のポム・クレメンティエフ。そのため現場では彼女に「ポム・クルーズ」というあだ名が付けられた。
映画1作目から29年ぶりにシリーズに復帰したダンロー役のロルフ・サクソン。当初は出演オファーをいたずらだと思っていたそうで、監督が彼に連絡を取れるまでに一週間もかかった。
ダンローの家には大量の映画のVHSテープが並んでいるが、そのひとつがトム主演の『マイノリティ・リポート』。劇中ではまず気づけないが、メイキング写真にちらりと映り込んだ棚から発見された、スタッフのちょっとした遊び心だ。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』 公開中
配給:東和ピクチャーズ
©2025 PARAMOUNT PICTURES.