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ファンサービスに務めるトム様ご一行
トムたちとセルフィを楽しむクリストファー・マッカリー監督
コロナ後の映画興行救世主トム・クルーズ。今回、トムは『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』でカンヌに帰還、「配信には出ない」「映画は大きなスクリーンで」という彼の主義にカンヌは連帯を示したのだ。ヨーロッパ最大の映画劇場であるリュミエールは今年ドルビーアトモスサラウンドを導入、観客は迫力の音響でトム最新作を楽しんだ。同時刻、シネウムではIMAX上映も敢行され、大画面の大音響でこそ楽しむ映画の魅力をトムは提供したのである。そしてもちろんファン・サービスも欠かさないトムはレカぺにバイクで乗り付ける予定を変更。歩いてファンとの交流をしながらレカぺに向かった。そしてレカぺでは苦楽を共にしてきたMIP仲間たちとセルフィ大会。一応セルフィ禁止なのだが、誰がトム様ご一行を止められよう。
デンゼル・ワシントン、パパラッチに詰め寄る
お騒がせなカメラマンに激怒するデンゼル・ワシントン
リュミエール劇場の向かい側クロワゼット通りには、スターとの接近遭遇を試みるファンのためのスペースが設けてある。ここにファンに混ざってパパラッチもいる。この日、スパイク・リーと18年ぶりのコンビ作『Highest 2 Lowest』のソワレのために現れたデンゼル・ワシントンがそんなパパラッチと一悶着。どうもこのパパラッチ、デンゼルの気を引こうと彼を引っ張ったらしい。怒ったデンゼルが彼を指さし詰め寄る姿をニヤニヤしながら撮影したものだからデンゼル激昂、あわや?!という雰囲気を感じた周囲のスタッフが止めに入って事なきを得たそうな。この後、サプライズでリーから名誉賞トロフィーを授与されたデンゼルは超ご機嫌になって周りをほっとさせたとか。
なんと危険なクロワゼット大通り
突然倒れて来たパルム・ツリーの周囲は立ち入り禁止に
カンヌを象徴するパルム・ツリー(椰子の木)が並ぶ遊歩道。映画祭の参加者や時々ゲストそして観光客もこの通りを闊歩するのがカンヌ映画祭おなじみの風景。ところがこの日、このパルム・ツリーが倒れたのである。運悪く通りかかった日本人がその下敷きになってしまった。監督週間で上映された『見はらし世代』のアシスタント・プロデューサーで、キャストのインタビューのために移動中の出来事。一時意識不明の大けがだったそうだが、意識は回復、数週間治療を受けて帰国できる模様と伝わっている。木は強風で倒れたとか、シロアリで幹の内部はグズグズになっていたとか言われたが、原因は不明。ただパルム並木の管理不行き届きであったことは間違いなさそうだ。
番狂わせだったリビエラ大停電

リビエラ一帯が一時停電となり、シネコンもレストランも休業状態に
映画祭の最終日は全コンペティション作品再上映が行われる。最近はバスで20分ほど離れたシネコン「シネウム」も使われている。ところが。よりによって最終日朝の10時過ぎ、リビエラ一帯が大停電に見舞われてしまった。全会場、上映が止まり、町全体が電力ダウン。映写だけでなく、照明もネットもスーパーのレジも信号機もすべて使用不可能になってしまった。しばらくしてパレは自家発電装置が稼働して電力が回復し、リュミエールとドビュッシーも含めたメイン会場での再上映は再開され、授賞式を始めイベントもすべて行われることに。が、シネウムでの上映はすべて中止。ここでの上映を当てにしていた人たちはがっかり。やっと電力が順次回復したのは15時30分くらいで5時間ほどの停電だった。やはりコンペは期間中に見ておくべし、だね。
ドレスコード、何するものぞ?!

ハイディ・クルムのように計画通りのドレスで登場するゲストが多かった
53年に発表された「ソワレにはブラックタイとロングドレス、もしくはそれに準ずるものを」という規定が慣習として守られてきたカンヌのドレスコード。近年、ジェンダーやダイバーシティ的に時代に合わせスタイルが変わっていくのをカンヌは許容してきた。が、この10年、ほぼ裸スタイルが流行し、一方で舞台装置かというようなドレスもあり、踏んづけられたり座席に収まらず入場の進行に支障をきたしていた。そのため、カンヌは今年ヌードと入場および着席に邪魔になるドレスを禁止すると明文化したわけだ。もちろん反発は大きく、準備が間に合わないからと計画通りのドレスで登場するセレブも少なからず登場したのはいうまでもない。この規定がカンヌに根付くのか、問題は来年なのである。
カンヌ映画祭でサメ映画、失神者を救助せよ!

失神者も出た?という『デンジャラス・アニマルズ』
©Animal Holdings Pty Ltd.
監督週間は“サメ映画”だって上映しちゃう。『デンジャラス・アニマルズ』というオーストラリアの作品。サーファー女子がサメ・フェチのシリアルキラーのボートに捕らわれるという作品なのだが描写がかなりエグい。あまりのエグさに失神者が出現。すぐさま劇場で待機していた救急係が速やかに失神者を搬送していったという。監督週間には医療班が待機しているのか、と感心したのだが、よく考えてみるとそれはないだろう…。もしかして今回の失神者も救急隊も仕込みだったかもしれない。でも、面白くていいじゃん、と筆者は思った。宣伝やギミックまで含めて映画を劇場で楽しませることが、映画館で映画を見ることこそが映画という行為であるというカンヌの主張に則していると思ったからなのである。
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