初公開から今年40年を迎えた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。熱狂的ヒットとなったその当時、一躍時の人になったマーティ役のマイケル・J・フォックスと、有望若手監督のトップに躍り出たロバート・ゼメキスの本誌インタビュー記事を再録します。この頃の記憶が鮮明に甦る人、名作誕生の秘話を新たに発見する人、どちらも必読です。(デジタル編集・スクリーン編集部)

マイケル・J・フォックス(主人公マーティ役)

見方も考え方も判断力もすっかり大人のスター

「もしボクが背が低いってことを嫌ったり、消極的に考えていたら、たぶん自己否定や欲求不満になっていたと思う。でもボクはそんな生き方はしたくない。だから、背が低いってことを武器にして生きていこうと決めたんだ。その結果、15歳のときに10歳の少年を演じられたし、24歳の今、高校生を演じているよ!」

外国人というと、ノッポで足のなが〜い人を想像してしまう。でもマイケル・J・フォックスみたいなタイプもいるんだよね。そのコンプレックスに負けちゃわない、マイケルの元気発言、絶対支持です。引け目を長所にするのは、すごいエネルギーと勇気のいることだからね。

「ボクが11歳のとき、やっぱり背の低かったパパが、軍隊をやめた。これはうれしかった。なんたって軍人の家族は、引っ越しに次ぐ引っ越しだから。新しい学校に変わるたび、みんながボクを“ちっこいヤツだなァ”って目で見るんだ。これでメゲちゃいられない。グッと我慢で友だちをつくり、演劇クラブなんかつくって積極的に自己アピールしたんだ」

マイケルが好きな俳優はジェームズ・スチュワート、スペンサー・トレイシー、マイケル・J・ポラード、そしてジェームズ・キャグニー。注目は最後のふたりで、彼らはマイケルとほとんど同じくらいの身長で自分の演技スタイルを確立した。偉大な個性派俳優の先輩たちなのだ。

ここらで、マイケルの演技の萌芽時代。

「イギリスのパブリック・スクールとは全く違う、カナダの全寮制パブリックスクールの生徒だった。学校の合間を縫って、ちびっこ俳優を始めた。ある日、学校の人が来て、俳優か学校かどちらかを選べ、というんだ。彼らは“学校を選びます”という答えを期待していたんだよね。でもボクは“OK!じゃバイバイだ。ボクは俳優になるからね”これで学校をドロップアウトしちゃった」

経過報告を受けたご両親様、オロオロ。しかしショックはこれだけじゃなかったのです。18歳になったマイケルは、ロサンゼルスで俳優を目指すと決意。ダブルパンチのご両親さまはさらにオロオロ。

「パパもママも、演技で食べている人がいるなんて、全く理解できなくて、ボクのロサンゼルス行きにも反対だった。でも79年、パパはボクと一緒にロスへきて、やっと演技で生活することを認めてくれた」

「もしかしたらパパは、ボクが背が低くても自分のことは自分でめんどうがみられるってことに気がついたんだよ」

これが俳優マイケル・J・フォックスの本格的スタート。それから6年、カレは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で大成功したのであります。

「スティーヴン・スピルバーグは週末にやってくるおとうさんみたいだった。来ると“みんなすごくがんばってるなぁ”とロバート・ゼメキスと部屋にこもって、いろいろ話し合ってた。この訪問で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のキャプテンはスピルバーグなんだなぁと実感して、ちょっと緊張したりする。快い体験だった」

「この作品はアイディアもビジョンもセンチメンタリズムも、どこからどこまでロバート・ゼメキスの感性で作られてる。たとえばボクらがいきづまったとき、相談に行くのはロバートで、ちゃんとした答えがもらえた。でも大切なことは、スピルバーグがいなかったらこの作品はできなかったし、成功もしなかったろうってことなんだ」

演技キャリア10年選手のマイケル。撮影現場の雰囲気も正しくつかんでおります。

画像: 見方も考え方も判断力もすっかり大人のスター

ところでマイケルは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の前にもう1本『ティーン・ウルフ』でも主演している。

「あの『ティーン・ウルフ』は4週間で撮影し、1年間公開されなかった。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にくらべれば低予算で短時間でつくったけど、たくさんの人が見にきてくれたことはとてもうれしい。出演の依頼をされたときは、どちらもうれしかった。俳優っていうのは仕事をしていなきゃ、自己主張できないからね」

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に続いて公開された『ティーン・ウルフ』も全米大ヒット。映画プロデューサーから見れば、マイケルはスピルバーグの大作でなくてもホームランをかっ飛ばしてくれる貴重な俳優というイメージができあがった。

「あと2年間はテレビシリーズ『ファミリー・タイズ』の契約があって、1年に1本の映画しかやれない。86年は3月から7月まで映画用にスケジュールがあけてある」

この空白をめざして新作用のシナリオがどどっと送られてくる。

「ちょっと前までは、役にありつくって感じだったでしょ。それなのに今は、ボクが名前を知っている一流のライターのシナリオがもらえる。エージェントは“カレがこれを読んでもらいたがってるよ”といいながら、ボクに渡すんだ。するとボクが“エーッ、ボク、この人のシナリオ大好きだ”っていうんだ。これすごい差でしょ。誰とでも仕事をしたいなぁ。いろいろなタイプの、いい監督と組んでみたい。俳優として最もエキサイティングなことは、新しい人々と会うことと、いろいろな映画に出ることなんだ」

24歳でトップに飛び出したマイケル・J・フォックス。外見はハイティーンぽくても、見方も感じ方も判断力もするどく大人。マイペースでトップを走るのに、不安感ゼロ。ますますの大活躍期待しちゃっても大丈夫。

(1986年2月号より。インタビュアー:ヤニ・ベガキス、翻訳:おかむら良 ※一部表現等を修正しています)

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