停滞気味だったハリウッド映画に突破口を開いたようなヒットを生み出した『ジョーズ』に続いた作品にはどんなものがあったのでしょうか。ジャンル面と興行形態面から「ポスト・ジョーズ」を探ってみましょう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

サメ映画が流行するのはずっと後のことだった

画像: ブロックバスター映画時代を生んだと言われる『ジョーズ』

ブロックバスター映画時代を生んだと言われる『ジョーズ』

ハリウッド史上初のブロックバスター作品と呼ばれる『ジョーズ』は様々な影響を後発映画に残したが、その一つにそれまであまり重要視されていなかったサメ映画(動物パニックもの)というジャンルに勝機があることを映画製作者たちに気づかせた点が挙げられる。

画像: 『ジョーズ』公開直前に上映された『シャーク・トレジャー』 Photo by FilmPublicityArchive/United Archives via Getty Images

『ジョーズ』公開直前に上映された『シャーク・トレジャー』
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『ジョーズ』以前のサメ映画、と呼べるものでは、目ぼしいところで『虎鮫作戦』(56)『ザ・シャーク!』(69日本TV公開)くらいで、少年と鮫の友情を描くメルヘン調の仏=伊合作『チコと鮫』(62)が日本ではヒットし、人気作品だった。また『ジョーズ』の日本上陸直前に海洋冒険映画『シャーク・トレジャー』(75)が緊急公開されている。

画像: 『ディープ・ブルー』が公開されたのは『ジョーズ』の24年後 Photo by Getty Images

『ディープ・ブルー』が公開されたのは『ジョーズ』の24年後
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とはいえ、『ジョーズ』の大ヒット後もすぐに「サメ映画」が大量生産されたわけではなかった。やはり本物のサメを使用してパニック映画を撮影することは難しく、『ジョーズ』におけるブルースのようなメカニックサメを製作した上で海上撮影するとなると巨費が生じることはスピルバーグ自身が証明している。そのためか70〜80年代の主なサメ映画といえば『ジョーズ2』(78)『ジョーズ3』(83、3Dで製作)『ジョーズ’87/復讐篇』(87)とオリジナルシリーズの続編くらいで、次のサメ映画大作はなんと99年の『ディープ・ブルー』まであまり目ぼしいものがない。21世紀になると『オープン・ウォーター』(03)のような新たな作品も徐々に登場し、2010年代になるとCG技術が発達して、アサイラム社などによる低予算のサメ映画が量産できるようになる。その間を縫って『海底47m』(17)『MEG ザ・モンスター』(18)などのヒット作も登場。今や毎年世界各国でサメ映画が製作される事態になったが殆んどはローバジェット映画だ。

画像: ハイイログマが人間を襲う『グリズリー』 Photo by FilmPublicityArchive/United Archives via Getty Images

ハイイログマが人間を襲う『グリズリー』
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画像: 巨大なシャチの復讐を描く『オルカ』 Photo by Getty Images

巨大なシャチの復讐を描く『オルカ』
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では『ジョーズ』の後、何が起きたのか? それは鮫に限らない動物や昆虫が人間を襲うパニック映画が作られ始めたのだ。まず『ジョーズ』の翌年に公開されたのは巨大ハイイログマが登場する『グリズリー』(76)だった。これは日本で夏休み映画として予想以上にヒット。この年、他にも『ジャイアント・スパイダー大襲来』(75)『怪奇!吸血人間スネーク』(73)といった小品も日本公開され、さらに77年にはミミズが大量発生する『スクワーム』(76)、巨大なタコが出現するオールスター映画『テンタクルズ』(77)、サメ以上にでかいシャチが人間に復讐する『オルカ』(77)などが話題に。78年には殺人蜂の大群が来襲する『スウォーム』(78)が鳴り物入りで公開されたり、ジョー・ダンテ監督による『ピラニア』(78)、オゾン層の変異で山の動物たちが凶暴になる『アニマル大戦争』(77)などが次々製作・上映されたがいずれも評価が低く、やがて下火になってしまった。

画像: 殺人蜂の群れが来襲する『スウォーム』 Photo by Getty Images

殺人蜂の群れが来襲する『スウォーム』
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ハリウッドはブロックバスター作品で甦る

画像: 『ジョーズ』以上のヒットを狙った大作『キングコング』 Photo by John Bryson/Getty Images

『ジョーズ』以上のヒットを狙った大作『キングコング』
Photo by John Bryson/Getty Images

一方、『ジョーズ』の成功例に倣ったブロックバスター作品(主にマーケティングや金をかけた宣伝などを行って商業的に大きな成功を収めた作品)としては、翌76年まずジョン・ギラーミン監督の『キングコング』が“ポスト『ジョーズ』”を謳って大ヒット。続く77年、全米で『スター・ウォーズ』(新たなる希望)がサマーシーズン公開され、『ジョーズ』を上回る興行記録となった。その後も『スーパーマン』(78)『エイリアン』(79)『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(80)『レイダース/失われたアーク〈聖櫃〉』(81)『E.T.』(82)『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』(83)『ゴーストバスターズ』(84)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)……と伝統が半世紀にわたって引き継がれていく。

このようにして『ジョーズ』は不況に陥っていた映画の都を蘇らせ、ハリウッドメジャー作品による新たな時代を確立した重要な作品となった。そうした意味でも再評価されていい名作といえるだろう。

画像: 【『ジョーズ』製作50周年記念特集】史上初のブロックバスター作品『ジョーズ』が映画界に与えた影響とは?

『ジョーズ』

4K Ultra HD+ブルーレイ:6,589 円
Blu-ray:2,075 円
DVD:1,572 円 (税込み)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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