全米で『ジョーズ』が全米興行成績新記録となった1975年、20年近く続いたベトナム戦争がサイゴン陥落により終結したニュースが世界をめぐり、日本ではエリザベス女王が来日し、沖縄海洋博が開催されるなどの出来事があった年でしたが、年末公開の『ジョーズ』が日本で一世を風靡する直前の50年前の映画界はどんな状態だったのでしょうか。気になるその頃のヒット作や人気スターをまとめてみました。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
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パニック映画やソフト・ポルノがブームを牽引

画像: 『タワーリング・インフェルノ』 Photo by Silver Screen Collection/Getty Images

『タワーリング・インフェルノ』
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画像: 『大地震』 Photo by FilmPublicityArchive/United Archives via Getty Images

『大地震』
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画像: 『エアポート’75』 Photo by FilmPublicityArchive/United Archives via Getty Images

『エアポート’75』
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前年はオカルト映画、カンフー映画の大ブームが起きた日本の映画界。75年のヒット作リストを見ると1位の『タワーリング・インフェルノ』はじめ、74年12月公開の『大地震』『エアポート'75』などがトップ10入りの大ヒットしていることからもわかるように、パニック映画が多くの観客を集めていた。この他に同様のジャンル作品として『ジャガーノート』『サブウェイ・パニック』なども公開され、邦画でも『東京湾炎上』『新幹線大爆破』が上映されたほどで、特にハリウッド超大作『タワーリング…』は配給収入の歴代記録を更新(『ジョーズ』公開まで)。そうしたブームとは全く異なるヒットを生んだのが『エマニエル夫人』(74年12月公開)で、通常の成人映画と違い、一般の劇場で上映される女性も入りやすい“ソフト・ポルノ”として公開。ファッション性も手伝って異例の大ヒットとなり、入場できない子供達でさえその題名や主題歌は知っているほどの注目を集め、邦画でも便乗作品『東京エマニエル夫人』が即座に製作された。「007」シリーズの第9弾『黄金銃を持つ男』や大ヒットした前作の続編『ゴッドファーザーPARTⅡ』も堅実に観客を集め、『燃えよドラゴン』熱が続いていたブルース・リーの『ドラゴンへの道』も相変わらずの人気ぶり。カーアクションの『バニシングin 60’’』も好評だった。ちなみに75年当時の封切館大人料金は1000円程度だった。

画像: 『エマニエル夫人』 Photo by Getty Images

『エマニエル夫人』
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画像: 『007/黄金銃を持つ男』 Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『007/黄金銃を持つ男』
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画像: 『ドラゴンへの道』 Photo by Warner Brothers/Getty Images

『ドラゴンへの道』
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[日本公開洋画配給収入トップ10]

1. 『タワーリング・インフェルノ』
2. 『大地震』(74年12月公開)
3. 『エマニエル夫人』(74年12月公開)
4. 『007/黄金銃を持つ男』(74年12月公開)
5. 『ゴッドファーザーPARTⅡ』
6. 『ドラゴンへの道』
7. 『エアポート'75』(74年12月公開)
8. 『個人生活』(74年12月公開)
9. 『アラン・ドロンのゾロ』
10. 『バニシングin 60’’』

ファンが選んだ人気映画は?

画像: 『ゴッドファーザーPARTⅡ』 Photo by Paramount/Getty Images

『ゴッドファーザーPARTⅡ』
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この年のSCREEN読者が選んだベスト作品を見てみると、年末公開ながら『ジョーズ』が3位に入る健闘を見せたものの、1位にはやはり夏に大ヒットを記録し、ポール・ニューマン、スティーヴ・マックィーンの2大スターを揃えた『タワーリング・インフェルノ』が選ばれている。この2作の間に往年の名作ミュージカル・アンソロジー『ザッツ・エンタテインメント』が入っているところが何とも通の映画ファンらしい。また単にヒットした作品、人気者が出ている作品を選ぶわけではない傾向もこの時代の特徴と言えるかもしれない。前作に続く名編『ゴッドファーザーPARTⅡ』はじめ、評論家選出1位の『ハリーとトント』や、映画を見慣れた人向けといえそうな『レニー・ブルース』『愛の嵐』のような玄人好みの作品もきちんと選ばれている。その一方で『ロンゲスト・ヤード』のような痛快作、『チャイナタウン』『オリエント急行殺人事件』のような見応えあるミステリーがランクインしているのは、純粋に映画が好きな読者の慧眼が働いたという感じもする。全体としてこの時代の洋画には子供向け、ファミリー向けの作品があまりなかったと言えるのかもしれない。ちなみにこの年から洋高邦低(洋画が邦画より入場者数、興行収入で上回る現象)の傾向に入った(2006年に再逆転)。

[SCREEN読者選出ベスト作品]

1. 『タワーリング・インフェルノ』
2. 『ザッツ・エンタテインメント』
3. 『ジョーズ』
4. 『ゴッドファーザーPARTⅡ』
5. 『レニー・ブルース』
6. 『ハリーとトント』
7. 『ロンゲスト・ヤード』
8. 『愛の嵐』
9. 『チャイナタウン』
10. 『オリエント急行殺人事件』

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