現在公開中の『ハルビン』はアジアを震撼させた歴史的事件を現代の視点から再解釈したサスペンス・アクション・エンターテイメント。韓国現代史を描くヒットメーカー、ウ・ミンホ監督と2023年韓国NO.1大ヒットを記録した『ソウルの春』制作スタッフがタッグを組み、ラトビア・モンゴルなど大規模な海外ロケーションを敢行して圧巻の映像世界を作り上げた。ジャパンプレミアを機に来日したウ・ミンホ監督のオフィシャルインタビューが届いたので紹介する。

日本での公開はとても大きな意味を持つ

本作は第49回トロント国際映画祭GALAプレゼンテーション部門でワールドプレミア上映され、5月に開催された韓国唯一の総合芸術賞である「第61回百想芸術大賞」(韓国のゴールデングローブ賞ともいわれる韓国映画・ドラマ界の最大級のアワード)では映画部門にて最優秀作品賞、大賞(ホン・ギョンピョ撮影監督)を受賞し2冠を達成した。

ジャパンプレミアイベントで監督は「この映画はみなさんがご覧いただいたとおり、大韓義軍の物語です。日本での公開はとても大きな意味となります。観てくださった皆さんがどのように感じてくださるのかワクワクしています」と挨拶し、本作に取り組んだきっかけを「元々アン・ジュングンに常に関心がありました。韓国では彼についてのコンテンツがたくさんあり、書店でその自叙伝を読んだら、今まで知らなかった人間的な苦悩を抱えていた人物だとわかりました。その中には日本軍の捕虜を助けたなど、知らない部分がたくさんあり、好奇心を持つようになりました。なぜ彼がハルビンへ行って大きなことを果たそうとしたのか、また彼の同志への想いを描きたいと思いこの作品を作りました」と明かした。本作の魅力については「韓国と日本の俳優たちの素晴らしい演技。動画配信サービスの時代だけど、劇場で体験するべき映画です」と語った。

その後、行われたオフィシャルインタビューの内容は以下の通りである。

こういう悲劇が二度と起きてはいけない

——映画『ハルビン』を拝見し、歴史的な出来事を過度にドラマティックに見せないようにというウ・ミンホ監督の意図を感じました。史実とフィクションを織り交ぜながらどのように物語を作っていったのでしょうか。

この映画を作るにあたって一番重要だったのは、ヒョンビンさんが演じた安重根(アン・ジュングン)と大韓義軍の同志たちが心から思っていたことをどのように伝えるかでした。私自身が興奮し、彼らの真実の心を誇張して表現してしまうといけないので、なるべく心を落ち着けて、一定の距離を維持しようと努力しました。ですから、人物を大きくとらえるクローズアップもそれほど使っていません。

 また、アン・ジュングンがなしとげたことの裏には数多くの同志たちの犠牲と献身があったということを語りたかったので、そのために必要な架空の人物を加えました。それ以外でも、歴史的によく知られている事実はそのままにしながら、映画的な面白さを加味するようにしました。歴史的に記録された瞬間以外の知られていない部分については、自分の思い通りに創作することができました。

——ヒョンビンさん、リリー・フランキーさんを始め、名立たるキャストが出演しています。キャスティングする上でどんなところにこだわりましたか。

主人公のアン・ジュングンには固い信念があり、常に同志を信じています。私が見るところヒョンビンさんにも同じようなところがあります。とても信念が強い俳優だと思います。彼の中に、自分が信じるものに向かって休みなく歩いていく姿が見えました。また、周りの人に対する態度にも誠実さが感じられます。初めて会った時から、彼であればアン・ジュングンを表現できると思っていました。また、映画をご覧になるとわかりますが、非常に苦労の多い現場になることがわかっていました。ヒョンビンさんは、どんなに大変な状況になっても、少しも揺らぐことなく耐えられる俳優だと思いました。こうした理由から、絶対に彼でなければならなかったんです。現場で彼はどんなに大変なアクションシーンでもスタントマンを使わずに自分がやると言い張りました。私は俳優が怪我をしたらいけないので、スタントマンを使ってもいいと思ったんですが(笑)。

 私は俳優を見て「これまで見せてきた顔以外にどんな顔があるのだろうか」と考えることに喜びを感じます。一緒に作品を作るときも、まず、その俳優の外見から変えようとします。伊藤博文役のリリー・フランキーさんはもともと大ファンで、すごく尊敬する俳優ですが、彼も『ハルビン』のなかでは今までとは違う顔を見せてくれました。韓国にもリリーさんのファンがたくさんいますが、伊藤博文を演じているのが彼だと気づかない人が多かったです。

画像1: こういう悲劇が二度と起きてはいけない

——映画の背景にぴったりな場所を探すため「地球を2周半するくらい」世界各地を回ったそうですね。撮影はモンゴル、ラトビア、韓国で行われたということですが、一番撮影が過酷だったのはどのシーンでしたか。

映画の序盤に登場したシナ山での戦闘シーンです。実際に雪が60センチくらい積もっていた場所で、1日に1シーンしか撮れないこともありました。濡れた服を着替えられないまま、次のシーンまで震えながら待っていた俳優もいました。悲劇的な歴史の一瞬をとらえなければならなかったので、メインキャストもエキストラもスタッフも、寒さの中、壮絶な思いで撮影しました。

画像2: こういう悲劇が二度と起きてはいけない

——これから映画『ハルビン』を見る日本の観客にどのようなことを感じてほしいですか。

歴史的な事件を扱っていますが、そのことだけにこだわらず、映画的な面白さを楽しんでいただければと思います。最近は映像作品を配信で見ることが主流となっていますが、映画館で他の人たちの感情を感じながら、一緒に見るのが映画ではないでしょうか。今、そんな映画の力が、ちょっと弱くなっている気がしています。この映画では、俳優たちや撮影監督のホン・ギョンピョさんをはじめとするスタッフたち皆が「劇場でしか体験できない映画を撮ろう」という同じ思いを持ち、サウンドやビジュアル面のクオリティを上げるために力を注ぎました。テーマの面では、こういう悲劇が二度と起きてはいけないということを伝えたいです。

<プロフィール>
監督:ウ・ミンホ WOO MIN-HO 
1971年7月31日生まれ。中央大学校映画科を卒業後、『破壊された男』(10)で長編映画デビュー。大企業、政治家、マスコミの癒着の実態を生々しく描き出した第3作『インサイダーズ/内部者たち』が大ヒットし、青龍映画賞、大鐘賞などの作品賞を受賞。18年には70年を舞台にした『麻薬王』を発表した。続く『KCIA 南山の部長たち』(20)は、東亜日報の記者キム・チュンシクが記した『実録KCIA―「南山と呼ばれた男たち」』の映画化。朴正煕大統領暗殺に至る40日間の人間ドラマを緻密に見せて青龍映画賞作品賞に選ばれた。現代的な視線で過去を再構築し、スケールの大きな作品として観客に届ける手腕は『ハルビン』でも存分に発揮されている。

画像2: ヒョンビン主演『ハルビン』からウ・ミンホ監督オフィシャルインタビュー到着!

<あらすじ> 
1909年10月、アン・ジュングン(安重根)と同志たちは伊藤博文を追ってある使命を果たすため中国・ハルビンへ向かった。そしてハルビン駅に銃声が鳴り響いた…。 1908年、咸鏡北道(ハムギョンブクト)シナ山で、安重根(アン・ジュングン)(ヒョンビン)率いる大韓義軍は劣勢にもかかわらず勇敢に戦い、日本軍に勝利を収める。万国公法に従って戦争捕虜たちを解放すると主張するアン・ジュングンに対し、イ・チャンソプ(イ・ドンウク)は激しく反論。結局、自らの兵を率いてその場を去ってしまう。その後、逃した捕虜たちから情報を得た日本軍の急襲を受け、部下たちを失ってしまったアン・ジュングンは、なんとかロシア・クラスキノの隠れ家に帰り着く。しかし、彼を迎えた同志たちの視線は厳しかった。1909年10月、日本の政治家である伊藤博文(リリー・フランキー)が大連からハルビンに向かうとの情報を得たアン・ジュングン。祖国の独立を踏みにじる「年老いた狼」を抹殺することこそが、亡くなった同志たちのために自分ができることだと確信した彼は、ウ・ドクスン(パク・ジョンミン)、キム・サンヒョン(チョ・ウジン)とともに大連行きの列車に乗るが、日本軍に察知されてしまう―

『ハルビン』
新宿ピカデリーほか全国公開中 
監督:ウ・ミンホ 
脚本:キム・キョンチャン、ウ・ミンホ 
撮影:ホン・ギョンピョ 
出演:ヒョンビン、パク・ジョンミン、チョ・ウジン、チョン・ヨビン、パク・フン、ユ・ジェミョン、リリー・フランキー 
2024年/韓国/114分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/映倫G/字幕翻訳:根本理恵/原題:하얼빈 HARBIN 
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス 
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